接ぎ木(クローン苗生産)
種まきで増やすのが基本のコーヒーだが、F1ハイブリッド品種だけは種から育てると形質が安定しない。そこで使われるのが「接ぎ木」——親株の枝(穂木)を、線虫や乾燥に強いロブスタの根(台木)に接合し、クローンとして増やす無性繁殖の手法。苗木の生育で扱った種子由来の苗とは別の生産ルートにあたる。
なぜ接ぎ木が必要なのか
SOURCE: WCR「Good Practice Guide: Coffee Nursery Management」Module 3, Section Aアラビカ種は本来、自家受粉する自殖性植物で、種から増やすのが基本。しかしF1ハイブリッド品種はヘテロ接合(両親由来の遺伝子が均一でない)な遺伝構造を持つため、種を蒔いて育てても親と同じ形質にならない。WCRの資料は、F1ハイブリッドを遺伝的に均一なまま増やす無性繁殖の方法として次の4つを挙げ、このうち「接ぎ木」が投資コストが最も低く、最も一般的な手法だとしている。
台木(ロブスタ)の準備
SOURCE: WCR「Good Practice Guide: Coffee Nursery Management」Module 3, Section B台木にはネマトーダ(線虫)耐性と強い根系を持つCoffea canephora(ロブスタ種)が使われる。種由来の台木の場合、ロブスタの茎は穂木品種より生育が遅いため、接ぎ木の時点で両者の茎の直径を揃えるために、穂木品種より2週間早く植える。台木は収穫時と定植前の2回、二股根・短根・病原体による損傷根などの不良個体を選別・除外する。
穂木(バド)の採取と衛生管理
SOURCE: WCR「Good Practice Guide: Coffee Nursery Management」Module 3, Section C穂木は温室で育てる母樹から採取する。作業者にはシャワー・清潔な衣服・使い捨て手袋・作業着の着用など、厳格な衛生プロトコルが定められている。穂木は最低3cmの組織を残して切り取り、そこから2〜2.5cmの接ぎ穂を作る(接触面が長いほど活着率が高い)。刃物は一回切るごとに消毒(例:ヨウ素4cc/L溶液)する。
接ぎ木の工程
SOURCE: WCR「Good Practice Guide: Coffee Nursery Management」Module 3, Section D順化(アクリマタイゼーション)
SOURCE: WCR「Good Practice Guide: Coffee Nursery Management」Module 3, Section F接ぎ木苗の定植方法(3段階)
SOURCE: WCR「Good Practice Guide: Coffee Nursery Management」Module 3, Section E接合が終わった苗をどこに定植するかは、ナーサリー経営者の資金力に応じて3段階に分かれる。いずれの方式でも共通する手順として、作業者はまず第四級アンモニウム塩で手指を消毒し、苗の根を発根促進剤(IBA溶液)に10秒間浸してから、深さ5.5〜6cmの穴に植え付ける。根がまっすぐ伸びるよう穴の側面から基質を寄せ、上から押し固めて根を曲げないよう注意する。
短所:機械導入コストが高い・中南米では入手性が低く輸入が必要。
今後追加すべき項目
- 体細胞胚発生・組織培養(in vitro)の詳細手順 — 本ガイド自体が「投資コストが高いため、本ガイドでは接ぎ木のみを扱う」と明記しており、この2手法の作業手順は同ガイドにも記載がない(資料そのものに存在しない情報と確認済み)。手順を書くにはWCR以外の一次資料を新たに探す必要がある。
- World Coffee Research「Good Practice Guide: Coffee Nursery Management」(2022年6月15日更新)Module 3 - Asexual Reproduction, Section A「Asexual Reproduction (Vegetative Propagation)」(無性繁殖4手法の比較)
- 同上 Section B「Preparing Rootstocks」(台木の準備・選別基準)
- 同上 Section C「Handling Mother Plants to Obtain Buds, Guides, Scions」(穂木の採取・衛生プロトコル・保管条件)
- 同上 Section D「Grafting」(接ぎ木の工程・作業者の習熟度)
- 同上 Section F「Acclimatization」(順化トンネルの温湿度管理)
- 同上 Section E「Planting Grafts」(基質ブロック/トレー/苗床の3方式の手順・長所短所)