種まき
苗床(発芽床)に種を蒔き、発芽させる工程。コーヒーの木を育てる最初の一歩であり、苗床の作り方・浸水(imbibition)・覆土の厚さといった細かい管理の積み重ねが、その後の発芽率と苗の健全さを左右する。「コーヒーができるまで」の全体像では、栽培フェーズの最初のステップにあたる。
そもそも「まく種」はどこから来るのか
SOURCE: World Coffee Research「Good Practice Guide: Coffee Seed Production」種まきの話に入る前に、その種自体がどう作られるかに触れておく。コーヒーの種は、選抜された「母樹」(種を採るためだけに植えられた木)から採取される。WCRの資料は、この母樹の遺伝的純度を「均一(バラつきが最小限)で、かつ安定(世代を超えて特性が受け継がれる)な、同一品種の集団」と定義している。
苗床(発芽床)を作る
SOURCE: WCR「Good Practice Guide: Coffee Nursery Management」Module 2種を蒔く前に、苗床そのものを正しく作ることが前提になる。WCRの資料は、苗床の寸法・構造・土壌(培地)の3点について具体的な基準を示している。
種まきの手順
SOURCE: WCR「Good Practice Guide: Coffee Nursery Management」Module 2, Section DWCRの資料は、種まき前日の準備から、種まき当日の作業までを具体的な手順として示している。
発芽までの日数と密度
SOURCE: WCR「Good Practice Guide: Coffee Nursery Management」Module 2, Section E播種密度は1平方メートルあたり種1〜1.5kgが目安とされ、これによりおおよそ3,500本の生育可能な苗が得られるという。種まき後の灌水はミスト状の散水が理想(ゴールドレベル)、なければ弱めのスプリンクラーやホースでの散水(シルバーレベル)で代替する。培地の水分値はおよそ18%を保つことが推奨されている。
病害虫リスクと消毒
SOURCE: WCR「Good Practice Guide: Coffee Nursery Management」Module 2, Section E苗床における主な病害はRhizoctonia solani・Fusarium spp・Pythium sppの3種で、いずれも「damping off(苗の立ち枯れ)」の原因になるとされる。WCRは、発芽段階から苗の収穫までの間、7日おきに接触性殺菌剤(ストロビルリン系・カーバメート系・銅系)を予防的に散布することを推奨する一方、トリアゾール系は苗に薬害を起こしやすいため避けるべきとしている。生物的防除としてTrichoderma sppの週次散布も併用可能。人の手・靴・道具が主な感染経路になるため、苗床に入る際の手洗い・靴の消毒も欠かせない管理項目として挙げられている。
今後追加すべき項目
- 苗木の生育ページ — 発芽した苗をバッグ・チューブに移植してから畑に定植するまでの工程(同じくWCR「Good Practice Guide: Coffee Nursery Management」に記載)は苗木の生育ページで解説済み。
- 母樹の選抜・種子生産のより詳しい手順 — 「Good Practice Guide: Coffee Seed Production」には、母樹の選抜基準や種子の収穫・乾燥・保管まで、より詳細な手順が記載されている。今回は種まき工程の前提として遺伝的純度の要点のみを紹介したが、必要に応じて独立した内容として拡充予定。
- World Coffee Research「Good Practice Guide: Coffee Nursery Management」(2022年6月15日更新)Module 2 - Sexual Reproduction, Section B「Characteristics of Propagation by Seed」(苗床の構造・寸法)
- 同上 Section D「Planting Seeds」(種まきの手順・浸水・覆土・密度)
- 同上 Section E「Handling Germinators」(発芽日数・灌水・病害虫対策)
- World Coffee Research「Good Practice Guide: Coffee Seed Production」(2019年11月11日発行)Module 1, Section A「Purchase and Genetic Conformity」(遺伝的純度・母樹の隔離基準)