HACHIMARU COFFEE ROASTERY
焙煎 / Fluid Bed Roaster

熱風式(フルイドベッド)
焙煎機の構造Fluid Bed Roaster

豆を焙煎機の底からの熱風で吹き上げ、空中に浮かせたまま焙煎する——それがフルイドベッド式(流動床式)である。当サイト焙煎機の方式のページで紹介したとおり、伝熱は対流のみ。グエルフ大学の博士論文(2014年)と、オックスフォード大学の伝熱モデル論文から、その構造と、近縁のスパウテッドベッド式・パックドベッド式との違いを整理する。

主な伝熱
対流のみ
エア・トゥ・ビーン比
最大150
運転方式
バッチ式
近縁の方式
スパウテッドベッド式
01

熱風が豆を浮かせ、同時に加熱する

SOURCE: Wang(2014)University of Guelph 博士論文

グエルフ大学の博士論文は、フルイドベッド式焙煎機をこう説明している。

Primary source quote
フルイドベッド式焙煎機での焙煎は、もっぱら対流熱伝達に基づいており、高速の熱風が焙煎機の底部から豆に向けて送られ、豆の流動化を実現する。熱風が豆を同時に浮遊させ、加熱するため、非常に効率的で均一な焙煎が可能になる。
Wang(2014)博士論文より(当サイトによる訳)。

オックスフォード大学の伝熱モデル論文も、同じ構造を別の言葉で説明している。

Primary source quote
フルイドベッド式焙煎機では、豆はチャンバー内に置かれ、高温の空気が豆の層を通して垂直に吹き込まれる。これにより豆は空気中に浮遊した状態になり、この焙煎機での主な熱伝達機構は対流である。
Fadai ほか(2016)より(当サイトによる訳)。
⭐ 「浮かせる」と「加熱する」が同じ空気で同時に起きる。 ドラム式(→ドラム式のページ)では豆どうし・豆とドラム壁の接触による伝導が伝熱の一角を占めるのに対し、フルイドベッド式では豆が他の豆にも壁にも触れず空中に浮いているため、対流以外の伝熱経路がほぼ存在しない——これが「対流のみ」と言い切れる理由になる。
02

大量の熱風を使う——だからこそ効率的で、だからこそ電力を食う

SOURCE: Wang(2014)博士論文

当サイト焙煎機の方式のページで紹介した「エア・トゥ・ビーン比」(生豆1kgあたりに使う熱風の重量)は、フルイドベッド式の性格を最もよく表す数値である。

方式エア・トゥ・ビーン比
典型的な従来型工程1
完全なフルイドベッド式最大150
⭐ 「均一に速く焙煎できる」ことの裏側にあるコスト。 米国特許(当サイト焙煎機の方式のページ04章で紹介)は、熱風式について「大量の空気を加熱する必要があるため消費電力が大きい」と述べていた。150倍という比率の大きさが、その消費電力の理由を数値で裏づけている。均一で速い焙煎と引き換えに、より多くのエネルギーを必要とする、というトレードオフである。
03

近縁の方式:スパウテッドベッド式・パックドベッド式

SOURCE: Wang(2014)博士論文 Table 1.4・1.5

同論文は、フルイドベッド式に似た構造を持つ、あまり知られていない2つの方式も紹介している。

方式フルイドベッド式との違い
スパウテッドベッド式熱風が豆を一定の流動パターンで動かすが、フルイドベッド式と違い、すべての豆を均等に浮遊させるわけではない。設計上、フルイドベッド式より少ない熱風量で済む。バッチ式
パックドベッド式円錐形のチャンバーに熱風を接線方向から入れ、複数のルーバー(羽根板)を通すことで気流の渦を作り、厚さ30〜50mmの「詰まった床(パックドベッド)」状態の豆を回転させる。非常に高い伝熱速度が得られ、ロースト・サイクルの短縮と、揮発性香気成分の損失が少ない「高収量」の豆が得られるとされる
⭐ 「全部浮かせる」か「一部だけ浮かせる」かの違い。 フルイドベッド式が豆の層全体を均等に浮遊させるのに対し、スパウテッドベッド式は浮遊のさせ方が不均一——この違いが、必要な熱風量(ひいては消費電力)の差につながっている、という関係になる。パックドベッド式は、浮遊させるというより渦を巻かせて高密度のまま加熱するという、さらに別の発想の設計である。
04

今後追加すべき項目

  1. Wang, X.「Understanding the Formation of CO2 and Its Degassing Behaviours in Coffee」University of Guelph 博士論文(2014年)Section 1.2.3「Roasters」(Table 1.4・1.5) — フルイドベッド式・スパウテッドベッド式・パックドベッド式の構造、エア・トゥ・ビーン比。University of Guelph Atrium でオープンアクセス版の本文を確認(2026年8月25日取得)
  2. Fadai, N.T. ほか「A heat and mass transfer study of coffee bean roasting」International Journal of Heat and Mass Transfer 掲載用プレプリント(2016年) — フルイドベッド式の対流中心の伝熱。当サイト焙煎機の方式のページで既出
  3. 米国特許 US10,172,382 B2「Bean roasting device」— 熱風式の消費電力に関する記述。当サイト焙煎機の方式のページで既出