"It was long thought that the coffee tree could not stand full sunlight exposure without damage, that is why early cultivation provided shade to the coffee tree resembling its natural habitat, forest."
FAO「Post Harvest Handling and Processing of Coffee in African Countries」1.5 Shading Protection より。「コーヒーノキは直射日光にさらされると傷んでしまう、と長らく考えられてきた。初期の栽培が、コーヒーノキ本来の生息地である森に似せて日陰を与えていたのはそのためである。」
「長らく考えられてきた」という書き方に注意。 原文は It was long thought(=長らくそう考えられてきた)という過去の認識として書いており、「直射日光では育たない」と断定していない。実際この節の最後では、後述するように日陰を減らす方向の傾向が紹介される。当サイトはこの温度差を残したまま訳している。
FAOは「Shade helps to protect the coffee trees from extreme winds and dryness(日陰は、極端な風と乾燥からコーヒーノキを守るのに役立つ)」と記す。日陰樹は光を遮る前に、まず防風林として働く。
出典:FAO 1.5
Temperature
気温の均一化
「The ambient air temperature is uniform within the coffee trees making it cooler in the early parts of the day and warmer in the evening(コーヒーノキの内側の外気温が均一になり、日中の早い時間帯はより涼しく、夕方はより暖かくなる)」。下げるのではなく、一日の振れ幅を小さくする働きである点が重要。
出典:FAO 1.5
Transpiration
蒸散の抑制
「The coolness, due to shading in the day reduces transpiration both from the leaves and the roots(日中の日陰による涼しさが、葉と根の両方からの蒸散を減らす)」。水分を失いにくくなるということであり、灌水の必要量に直結する。この点は後述の「日陰を減らす代わりに水を与える」という傾向と表裏になっている。
出典:FAO 1.5
Erosion control
斜面の土壌流出防止
「Shade trees may also be used for erosion control on steep slopes(日陰樹は、急斜面での土壌侵食の抑制にも使われうる)」。コーヒーは丘陵地・高地で栽培されることが多く(栽培条件参照)、斜面の土が流れないようにすることは栽培そのものの前提になる。
一次資料からの引用。 「Direct sunlight on the base of the plant can dry out and inhibit root growth, hence mulching and elimination of weeds is important(株元への直射日光は、乾燥を招いて根の成長を阻害しうる。したがってマルチング〔敷き草・敷き藁などで地表を覆うこと〕と除草が重要である)」。
"The trend today is to use less and less shade but to supply the tree with increased amounts of both fertiliser and water. Under these conditions, they bear more heavily and still keep healthy."
この記述の限界を開示する。 引用文は収量(bear more heavily)と樹の健康(keep healthy)にしか触れておらず、カップの品質への影響には言及していない。「シェード栽培のコーヒーは味が良い」という説明は業界で広く見られるが、当サイトが軸とする7団体(WCR・SCA・CQI・ACE/COE・ICO・AJCA・SCAJ)およびFAOの資料の中で、その裏付けはまだ確認できていない。同様に、日陰を減らすことの環境面での影響(生物多様性・炭素固定など)についてもこの資料は触れていない。また、この資料は2000年発行であり「今日の傾向」が指す時点は2000年前後である点にも注意が必要。
World Coffee Researchはインドの栽培方式について、ほぼ全量が日陰樹の下でのシェード栽培であると記している。インドは南部カルナータカ州を中心にアラビカ種・ロブスタ種の両方を生産する国で、2026/27年度の生産見込みはアラビカ12.0万トン・ロブスタ28.4万トン。詳細はインド産地ページを参照。