抽出 / Ibrik / Turkish Coffee
イブリックIbrik / Turkish Coffee
トルコ式コーヒー(ターキッシュコーヒー)を淹れるための、柄の付いた小鍋型の器具。これまでのページと違い、フィルターを使わない。 微粉状に挽いたコーヒーを水・砂糖とともに直接鍋に入れ、火にかけて煮出し、こさずに上澄みだけを飲む。 2013年、「トルコのコーヒー文化と伝統」としてUNESCO無形文化遺産に登録されている。
挽き目 微粉状
抽出方式 煮出し(フィルターなし)
飲み方 こさずに上澄みのみ
登録 UNESCO無形文化遺産(2013年)
01
イブリックとは
SOURCE: 全日本コーヒー協会「いろいろな器具」
AJCA(全日本コーヒー協会)は、イブリックを次のように紹介している。
Primary source quote
トルコ式コーヒー(ターキッシュコーヒー)を淹れるための器具。微粉状のコーヒーを入れ、火にかけ煮出しながら抽出し、煮出し終わったコーヒーは、こさずに上澄みだけを飲みます。
全日本コーヒー協会「いろいろな器具」より。当サイトが扱ってきたペーパードリップ・ネルドリップ・サイフォン・フレンチプレスは、いずれも粉と液体を分ける仕組み(フィルター・網)を持つ。イブリックにはそれがない。
⭐ 「微粉状」の意味。 当サイトの
器具×挽き方の対応表 で扱った日本の公正競争規約 別表1の5区分(極細挽き〜粗挽き)の中で、イブリックが使うのはその中でも
もっとも細かい部類 にあたる。粉が沈殿しやすいよう、限界まで細かく挽くのが特徴である。
02
UNESCO無形文化遺産としての「トルコのコーヒー文化と伝統」
SOURCE: UNESCO Intangible Cultural Heritage, Nomination file No. 00645(2013年登録)
2013年、UNESCOの政府間委員会(8.COM)は「トルコのコーヒー文化と伝統(Turkish coffee culture and tradition)」を人類の無形文化遺産の代表一覧表に登録した(登録番号00645、決定8.COM 8.28)。登録文書は、淹れ方そのものを次のように説明している。
Primary source quote
The freshly roasted beans are ground to a fine powder; then the ground coffee, cold water and sugar are added to a coffee pot and brewed slowly on a stove to produce the desired foam.
UNESCO登録文書より。日本語訳:「焙煎したての豆を微粉状に挽き、その粉・冷水・砂糖を鍋(コーヒーポット)に入れて、コンロの上でゆっくりと煮て、望みの泡を作り出す」
⭐ 3つの点がAJCAの説明と重なり、1つ新しい情報がある。 ①微粉状に挽くこと、②鍋(イブリック)で煮出すこと、③フィルターを使わないこと はAJCAの説明と一致する。UNESCO文書はさらに、④水は「冷水(cold water)」を使うこと、⑤砂糖を最初から粉・水と一緒に鍋に入れること、⑥目的は「望みの泡(desired foam)」を作ることだと明記している ——お湯ではなく水から沸かして、表面に泡の層を作るのが目的の一つ だという点は、当サイトの他の抽出ページには出てこない情報である。
登録は「淹れ方」だけでなく「文化」に対するもの。 UNESCO登録文書は、イブリック自体の構造よりもコーヒーを飲む場での会話・もてなし・婚約の儀礼・占い(カップに残った粉で運勢を見る)といった社会的な役割 に多くの記述を割いている。器具や抽出手順は、この文化的な営みの一部として説明されている という点は、当サイトの他の抽出ページ(器具の仕様・数値が中心)とは性格が異なることを断っておく。
03
なぜ「こさずに上澄みだけ」で成り立つのか——他の抽出法との違い
当サイトの整理
当サイトの抽出ページ で扱ってきた抽出法は、ペーパー・ネル・金属フィルターのいずれかで粉と液体を物理的に分離する 。イブリックにはその工程がなく、代わりに次の2つで粉と分離している。
沈殿 :微粉状に挽いた粉は、火から下ろして数十秒置くと鍋の底に沈む。
注ぎ分け :カップに注ぐ際、鍋の底の沈殿物を残し、上澄みだけを注ぐ。
⚠️ カップの底には必ず粉が残る。 「上澄みだけを飲む」とはいえ、微粉状の粉を完全に分離することはできない。カップの底に細かい粉(トルコ式では「テルス/telve」と呼ばれる)が沈んでいるのが前提 で、これを飲み切らずに残す・あるいはそのまま占いに使う、という点は他の抽出法にはない特徴である。この語自体の一次資料(UNESCO登録文書や協会資料での明記)は本セッションでは確認できていない。
04
今後追加すべき項目
具体的な分量・温度・煮出し時間の数値 — AJCA・UNESCO文書ともに手順の骨格は示すが、粉量・水量・煮出し時間の目安の数値は明記していない。
「テルス(telve)」の一次資料 — カップ底に残る粉・占いに使う粉の呼称。業界共通認識として扱われているが、7団体の一次資料では確認できていない。
砂糖の量による呼び分け (サデ/オルタ/シェケルリ等、砂糖の量でトルコ語の呼称が変わるとされる)——本セッションでは一次資料を確認できていない。
抽出 いろいろな抽出器具
抽出 抽出(TDS・抽出率・湯温)
抽出 フレンチプレス(浸漬式)
抽出 パーコレーター
銘柄・表示ルール 挽き方5段階の公的基準
全体像 コーヒーができるまで
全日本コーヒー協会(AJCA)「いろいろな器具」(coffee.ajca.or.jp/column/4460/知る・楽しむ、2026年8月27日取得)— イブリックの定義・微粉状・煮出し・上澄み
UNESCO「Turkish coffee culture and tradition」Intangible Cultural Heritage, Nomination file No. 00645(2013年、決定8.COM 8.28、人類の無形文化遺産の代表一覧表)— 淹れ方の記述(微粉・冷水・砂糖・泡)、文化的背景