01
袋の裏に書くべき10項目
SOURCE: 公正競争規約 第3条 / 施行規則 第2条
規約第3条は、コーヒーの容器・包装に「見やすい場所に邦文をもって一般消費者に分かりやすい用語により明瞭に一括して枠内に表示しなければならない」事項として、次の10項目を挙げている。これが、袋の裏でよく見る四角い枠(一括表示欄)の中身である。
| 項目 | 施行規則が定める書き方 |
| (1) 品名又は名称 | 「レギュラーコーヒー」または「インスタントコーヒー」と表示する。挽いてあるかどうかは外見で判別できないことがあるため、粉なら「レギュラーコーヒー(粉)」と書き分ける(AJCA解説)。 |
(2) 原材料名 (生豆生産国名を含む) | 原材料は100%コーヒー豆に限る。他の原材料を使えば「レギュラーコーヒー」とは表示できない。ブレンドの場合は生豆生産国名を、原則としてブレンド比率の多い順に表示する(AJCA解説)。 |
| (3) 内容量 | グラム(g)またはキログラム(kg)の単位を明記して表示する。 |
| (4) 賞味期限 | 「開封前の状態で定められた方法により保存した場合」に品質が保てると事業者が認める期限。→ 詳しくは保存方法のページ |
| (5) 保存方法 | 「次の例に準じ、具体的に表示する。ア 直射日光を避ける。イ 高温多湿を避ける。」→ 保存方法のページ |
| (6) 使用上の注意 | 例に準じて具体的に表示する。文字でも絵表示でもよい。一括して書けない場合は近接した箇所に書いてもよい。 |
| (7) 挽き方 | 粉製品のみ。別表1の基準に基づき「粗(荒)挽き」「細挽き」等と表示する。豆のままの製品とインスタントコーヒーには挽き方を表示しない。→02 |
| (8) 原産国名 | 輸入品に表示する。国産品であっても、容器・包装のデザインから輸入品と誤認されるおそれがある場合についても規定がある。 |
| (9) 食品関連事業者 | 食品表示法第2条第3項第1号にいう食品関連事業者の氏名または名称と、住所または所在地。 |
| (10) 製造所・加工所 | 所在地と製造者・加工者の氏名または名称(輸入品なら輸入業者の営業所所在地と氏名・名称)。 |
文字の大きさまで決まっている。 施行規則は「日本工業規格 Z8305(1962)に規定する8ポイント以上の活字の大きさの統一の取れた文字とすること」と定め、表示可能面積がおおむね150平方センチメートル以下のものについては5.5ポイント以上としている。枠と文字の色も「背景の色と対照的な色とすること」と決められている。読めない大きさで書くこと自体がルール違反になるということである。
02
「粗挽き」「中挽き」には公的な基準がある
SOURCE: 公正競争規約施行規則 別表1
挽き方の表示は感覚的な言葉に見えるが、別表1が5段階を定義しており、しかも身近な砂糖を基準にしている。器具を持っていない人にも判断できる書き方になっている点が面白い。
| 表示 | 別表1の定義(原文) | 英語表記 |
| 粗(荒)挽き | 挽いた粉粒はザラメ状又はそれ以上の粗さ | ドリップグラインド/コースグラインド |
| 中挽き | グラニュー糖程度の粗さ | ミディアムグラインド/レギュラーファイングラインド |
| 中細挽き | 中挽き、細挽きの中間の粗さ | ミディアムファイングラインド |
| 細挽き | グラニュー糖と白砂糖の中間の粗さ | ファイングラインド |
| 極細挽き | 細挽き以下の粗さ | エキストラファイングラインド |
別表1は挽き方の心得も書いている。 表の前に
「挽き方で最も注意しなければならないことは、一定の粒度分布を守ること、熱の発生を極力抑えることが重要とされている」という一文が置かれている。
粒の大きさを揃えることと、摩擦熱を抑えること——AJCAが挙げる挽き方のポイントとも一致する(→
保存方法 03/
抽出ページ)。
03
使ってはいけない言葉がある
SOURCE: 公正競争規約 第6条 / 施行規則 第4条
規約第6条は「不当表示の禁止」として12項目を挙げ、施行規則第4条がその具体例を示している。コーヒーの広告や袋でよく見かける言葉が、そのまま例示に並んでいる。
「特上」「特選」「最高級」
規約第6条(7)は、客観的な根拠に基づかないでこれらの文言を用いて特に優良であるかのように誤認させる表示を禁じている。使えないのではなく、根拠なしには使えないという書き方である。
規約 第6条(7)
「超」「究極」
施行規則第4条(3)は、規約第6条(7)に当たる例として最上級を意味する文言を挙げ、この2語を名指ししている。
施行規則 第4条(3)
「天然」「自然」「純」
「純正」「ピュアー」
施行規則第4条(2)イ。品質が優れているかのように誤認されるおそれがある表示(規約第6条(5))の例として挙げられている。
施行規則 第4条(2)イ
「生」「フレッシュ」
同じく施行規則第4条(2)ウが、新鮮を意味する文言の表示を例に挙げている。鮮度そのものを否定しているのではなく、それを優良性の訴求に使うことを問題にしている。
施行規則 第4条(2)ウ
特定の成分が「多い/少ない」
という強調
施行規則第4条(2)ア。成分や原材料の多寡を強調して品質が優れているかのように誤認させる表示。
施行規則 第4条(2)ア
産地・品種・銘柄・配合割合
についての誤認
規約第6条(3)(4)(6)。生産国・産地・品種・銘柄等、コーヒー豆の配合割合、原産国・原産地について誤認されるおそれがある表示。→
銘柄名のページ
規約 第6条(3)(4)(6)
⭐ 「フレッシュ」が禁止例に入っているのは、鮮度が重要でないからではない。 SCAは
「フレッシュとは何か」を炭酸ガスの放出量から定義しようとしている(→
保存方法 04)。一方この規約は、
その語を優良性の訴求に使うことを規制している。
同じ言葉に対して、片方は測ろうとし、片方は乱用を止めようとしている——立場が違うだけで、どちらも「フレッシュ」が曖昧なまま使われてきたことへの対応だと読める(この対比は当サイトによる整理)。
コーヒーでないものをコーヒーと呼ぶことも禁じられている。 規約第6条(1)を受けて、施行規則第4条(1)は「タンポポ、大豆、玄米等を原材料としているものについてのコーヒー等の表示」を例に挙げている。規約第2条がコーヒーを「コーヒーノキの種実を精製したコーヒー生豆を焙煎したもの」と定義しているためである。
04
「受賞」の書き方にもルールがある
SOURCE: 公正競争規約 第6条(9)(10) / 施行規則 第4条(4)
当サイトは13の品評会の受賞ロットやカップ・オブ・エクセレンスを扱っているが、受賞をパッケージに書くときにも規約の定めがある。
| 条項 | 禁じられている表示 |
| 規約 第6条(9) | 賞でないものが賞であるかのように誤認されるおそれがある表示 |
| 規約 第6条(10) | 自己の取り扱う他の商品や他の事業について受けた賞・推奨等が、当該商品について受けたものであるかのように誤認されるおそれがある表示 |
| 施行規則 第4条(4)ア | ある特定の商品について受けた賞・推奨等であるにもかかわらず、その事業者の他の商品についても受けたかのように誤認されるおそれがある表示 |
| 施行規則 第4条(4)イ | 賞・推奨等の表示にかかわる商品または事業が、実際に賞を受けた商品・事業であることが明瞭に認知できない場合の賞・推奨等の表示 |
コーヒーの品評会は「その年・その農園・そのロット」に対する評価である。 当サイトが
受賞ロット一覧で扱っている大会は、いずれも
個別のロットを審査するもので、農園や銘柄そのものに与えられた称号ではない。規約第6条(10)と施行規則第4条(4)アが問題にしているのは、まさにその取り違えである。→
銘柄名は品質の順位ではない(モカのページ)
05
「カフェインレス」はカフェイン90%以上を除去したもの
SOURCE: 公正競争規約施行規則 / AJCA
「デカフェ」「カフェインレス」は雰囲気で使われる言葉ではなく、名乗れる条件が数値で決まっている。どうやってカフェインを抜くのか、実際にどれくらい入っているのかはカフェインレスコーヒーのページで扱っている。
Primary source quote
カフェインを90パーセント以上除去したコーヒーにあっては、「カフェインレスコーヒー」、「デカフェネィテッドコーヒー」等と表示する。
レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約 施行規則(製法上の特性表示に関する規定)より。同じ規定群には「スプレードライ」「アグロメレーション」「フリーズドライ」といったインスタントコーヒーの製法表示も並んでいる。
「カフェインゼロ」ではない。 定義は90パーセント以上の除去であり、まったく含まれないという意味ではない。妊娠中・授乳中などでカフェインを控える目的で選ぶ場合、この点は押さえておく必要がある。AJCA自身も、カフェインレスコーヒーがあるのは「健康上の理由や、妊娠・授乳中などでカフェイン量を控えなければいけないという方のために」であると説明している。
AJCAは製法についても解説しており、ほとんどは焙煎前の「生豆」の段階でカフェインを除去するとしたうえで、2つの方法を挙げている。
| 製法 | AJCAの説明 |
| 水抽出法 | 一般的な製法で、コーヒーの生豆を水に浸し、溶け出たカフェインを特殊フィルターなどで除去する方法。ただし、香りや味成分も抜けがちになる。 |
| 超臨界二酸化炭素抽出法 | 二酸化炭素を使用してカフェインを除去する。豆に負担をかけずにカフェインだけを狙って取り除くため、香りや味の成分を逃しにくい方法。 |
カフェインの量そのものについては、このページでは扱っていない。 1杯あたりの含有量や、1日の摂取量の目安は、当サイトが基準とする
7団体の公開資料でまだ確認できていない(AJCAは健康に関する解説を別に公開しているが、今回は表示ルールの範囲に絞った)。→
06のtodo
06
このルールを運営しているのは誰か
SOURCE: 公正競争規約 第1条・第7条・第8条
規約第1条は、この規約が「不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)第31条第1項の規定に基づき」定められたものであり、目的は「不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択及び事業者間の公正な競争を確保すること」だと述べている。運営主体は規約第7条が設置を定める全日本コーヒー公正取引協議会で、その事業には次が含まれる(第8条)。
- 規約の周知徹底/相談・指導/遵守状況の調査
- 違反の疑いがある事実の調査と、違反した事業者に対する措置
- 一般消費者からの苦情処理
7団体との関係。 全日本コーヒー公正取引協議会は、当サイトが基準とする
7団体のひとつである
全日本コーヒー協会(AJCA)とは別の団体である。ただし今回参照した規約は
公正取引委員会・消費者庁の認定を受けた公的な表示ルールであるため、当サイトは一次資料として扱っている。
07
今後追加すべき項目
- カフェインの含有量と摂取量の目安 — 1杯あたりの量や1日の目安は、今回参照した資料の範囲外。AJCAの健康関連の公開資料や、公的機関の見解を確認したうえで別途扱いたい。
- デカフェの製法をめぐる詳細 — AJCAは2製法を挙げるが、有機溶媒を使う方法など他の方式の有無、日本国内での使用状況は未確認。カフェイン除去率の測定方法も規約には書かれていない。
- コーヒー飲料(缶コーヒー等)の表示 — 2026年8月21日、原文PDFを入手して独立したページを新設した。→缶コーヒーの表示ルール(「コーヒー」「コーヒー飲料」「コーヒー入り清涼飲料」の生豆換算による区分、「ブラック」「プレミアム」の条件など)
- 規約の改訂履歴 — 参照したのは平成30年(2018年)5月21日認定の版。それ以前の変更点は未確認。
- 実際の違反事例 — 公正取引協議会が措置を行った事例が公表されているかどうかは未確認。
- 全日本コーヒー公正取引協議会「レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約 及び 同施行規則」(平成30年5月21日 公正取引委員会・消費者庁認定、告示第6号)— 規約 第1条・第2条・第3条・第6条・第7条・第8条、施行規則 第2条・第4条、別表1(挽き方の基準)、別表3(製法上の特性表示)
- 全日本コーヒー協会(AJCA)「情報ラベル(一括表示)の見方」— 品名・原材料名の書き分け、ブレンド比率順の表示
- 全日本コーヒー協会(AJCA)「カフェインレスコーヒーを知る」— 生豆段階での除去、水抽出法と超臨界二酸化炭素抽出法
- 出典の位置づけについて:公正競争規約は景品表示法第31条第1項に基づく業界の自主ルールで、公正取引委員会・消費者庁の認定を受けたもの。当サイトが基準とする7団体そのものではないが、日本国内の表示について公的に認定されたルールであるため一次資料として扱った。