HACHIMARU COFFEE ROASTERY
焙煎 / Roast Profile & ROR

焙煎プロファイルと
ROR(昇温速度)Roast Profile

「深煎り」「浅煎り」という焙煎の分類は、当サイト焙煎とはのページで扱った。しかし同じ焙煎度にたどり着く道筋(プロファイル)は、1通りではない。急に温度を上げるのか、じっくり上げるのか——その違いを表す考え方がROR(rate of rise、昇温速度)である。2024年に発表された査読付き研究が定義した7種類の標準プロファイルを中心に整理する。

標準プロファイル数
7種類
発熱反応の開始
摂氏約150度
実験規模
39回・663サンプル
焙煎の3段階
乾燥・発達・冷却
01

RORとは何か

SOURCE: Anokye-Bempah et al. 2024(Scientific Reports)

当サイト酸味の正体のページで紹介したUC Davis Coffee Centerの研究チームは、焙煎中の酸の変化を調べる過程で7種類の異なる焙煎プロファイルを用いて実験している。ROR(rate of rise)は、その名のとおり豆の温度が単位時間あたりどれだけ上昇しているかを表す指標である。

略称プロファイル名(原語)意味
FSfast start序盤の昇温が速い
SSslow start序盤の昇温が遅い
MDmedium標準的な昇温
PRproduction実際の生産現場を想定した昇温
EFexaggerated flick昇温速度を意図的に大きく変化させる
NRoRnegative rate of rise昇温速度がマイナスになる局面を含む
EMextended Maillardメイラード反応の段階を意図的に引き延ばす
すべて同じ「1回16分」で統一。 当サイト酸味の正体のページで既に紹介したとおり、この7プロファイルはいずれも1回の焙煎時間を16分に揃えて実施されている。到達する焙煎度や所要時間を変えず、途中の温度の上げ方だけを変えるという実験設計になっている。
02

「ネガティブROR」とは何か

SOURCE: 当サイトによる整理

7プロファイルの中でも名前が分かりにくいNRoR(negative rate of rise)について補足する。生豆を焙煎機に投入した直後、豆の温度は一時的に下がる——常温の豆が高温の焙煎機内に入るためである。この「下がっている」局面のROR(昇温速度)は、定義上マイナスの値になる。NRoRプロファイルは、この下降局面をあえて長く保つ、あるいは焙煎の途中で再度昇温速度を落とし込む操作を指すものと考えられる。

⚠️ この節は当サイトの補足説明である。 Anokye-Bempah ほか(2024・2025)の原論文は、7プロファイルそれぞれの温度カーブの詳細図までは、当サイトが確認した範囲では読み取れなかった。NRoRという名称から読み取れる一般的な意味を説明したもので、この研究における具体的な運用(何分から何分まで、何度下げたか)は未確認である。
03

プロファイルが違っても、色の到達点は近い数値に収束する

SOURCE: Anokye-Bempah et al. 2025(Scientific Reports)

当サイト焙煎とはのページで紹介したとおり、同じ研究チームによる後続の論文は、7種類のプロファイル・3つの異なる産地の生豆を使っても、色づき・1ハゼ・2ハゼのL*値が近い数値に収束することを示した。

⭐ プロファイルは「経路」を変えるが、「目印」は変わらない。 RORの上げ方(プロファイル)を変えても、1ハゼ・2ハゼが起きるタイミングの色(L*値)はほぼ同じ範囲に収まる——これは1ハゼ・2ハゼが、豆の中で一定の化学的・物理的条件(水分の蒸発、CO2圧力など。→1ハゼ・2ハゼのページ)が満たされたときに起きる現象であることの、間接的な裏づけになっている。ただし、そこに至るまでの時間や、できあがる風味は、プロファイルによって変わりうる——この点を明示的に検証した資料は今回確認できていない(→05章)。
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発熱反応は摂氏150度から始まる

SOURCE: Bustos-Vanegas et al. 2025(Frontiers in Food Science and Technology)

2025年に発表された、直火式ドラム焙煎機(Rod Bel、4バーナー、回転数45rpm)を使った実験・数値解析の論文は、焙煎中の豆内部の温度変化を発熱反応の観点からモデル化している。

Primary source quote
豆が摂氏150度を超える温度に達すると、豆の内部で発熱反応が生じる。これらの反応の速度は、反応物の濃度に比例する。
Bustos-Vanegas ほか(2025)Frontiers in Food Science and Technology より(当サイトによる訳)。
⭐ この数値は、他の資料とも整合する。 当サイト焙煎の化学ページで紹介した「摂氏195〜245度・250度」という数値、当サイト1ハゼ・2ハゼのページで紹介した「摂氏約200度でメイラード反応のような発熱反応が始まる」という記述と、おおむね同じ温度帯(摂氏150〜200度台)で発熱反応が語られている点は一致している。ただし各資料の測定点(豆の芯温か、表面温度か、排気温度か)が明記されていない場合が多く、単純に数値だけを並べて「正確に一致する」とまでは言えない点に注意したい。
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今後追加すべき項目

  1. Anokye-Bempah, L. ほか「The effect of roast profiles on the dynamics of titratable acidity during coffee roasting」Scientific Reports(2024年、PMC11002029) — 7種類の標準焙煎プロファイル(FS/SS/MD/PR/EF/NRoR/EM)の定義。当サイト酸味の正体のページで既出。PMCオープンアクセス版で本文確認
  2. Anokye-Bempah, L. ほか「A universal color curve for roasted arabica coffee」Scientific Reports 15, 24192(2025年) — プロファイル・産地が異なっても収束するL*値。当サイト焙煎とはのページで既出
  3. Bustos-Vanegas, J.D., Martins, M.A., Corrêa, P.C., Baptestini, F.M., Horta de Oliveira, G.H.「Modeling and simulation of coffee bean heating during roasting: effect of heat generation」Frontiers in Food Science and Technology(2025年、DOI: 10.3389/frfst.2025.1603783) — 摂氏150度からの発熱反応。オープンアクセス誌。WebFetch経由で本文内容を確認(2026年8月25日取得)