HACHIMARU COFFEE ROASTERY
産地ページ / Origin

ベトナムViet Nam

世界第2位のコーヒー輸出国(ICO統計)。他の多くの産地ページで扱ってきたアラビカ種(Coffea arabica)とは異なり、ベトナムは生産量の97%をロブスタ種(Coffea canephora、通称「ロブスタ」)が占める国。中部高原(Tay Nguyen/Central Highlands)を中心に、1857年のフランス人宣教師による伝来以来、独自の品種改良の歴史を歩んできた。

インド インドネシア 中国 ミャンマー タイ ラオス マレーシア カンボジア ベトナム
ベトナムの位置。小さな世界地図の枠は、この地図が世界のどこを切り取っているかを示す。地図データ:Natural Earth(パブリックドメイン)
世界輸出ランキング
2位(ICO, 2022〜2024年平均)
輸出量(2023年3月〜2024年2月)
2,860万俵(ICO集計、60kg換算)
ロブスタの割合
生産量の97%・栽培面積の92.9%
主要産地
中部高原(ダクラク省など)
01

基本情報

SOURCE: ICO「Country Coffee Profile: Vietnam」(ICC-124-9, 2018年)/World Coffee Research国別ページ
国名
ベトナム社会主義共和国
コーヒー伝来の経緯
1857年、フランス人宣教師によってアラビカ種が最初に持ち込まれ、北部のカトリック教会周辺で試験栽培。その後中部高原に到達し、ここが栽培適地と判明した。1908年、フランスによりロブスタ種(Coffea canephora)とエクセルサ種(Coffea excelsa)がコンゴ経由で追加導入された
生産拡大の経緯
1986年時点の栽培面積は約5万ha・生産量18,400トン(約30万俵)に過ぎなかったが、同年以降の政府主導の投資拡大により急成長し、1990年代末までにブラジルに次ぐ世界第2位の生産・輸出国となった
種の構成
ロブスタ種が栽培面積の92.9%・生産量の97%を占める(アラビカ種は残り数%)
主要産地
中部高原(Tay Nguyen/Central Highlands)のダクラク省(Dak Lak、ブオンマトート=Buon Ma Thuotが中心地)、ラムドン省(Lam Dong、Cau Dat–Da Lat)、ザライ省など。地理的表示(GI)として「ブオンマトート」「カウダット–ダラット」「ソンラ」が知られる
農家構成
推定64万戸の農家が生産に関わり、うち97%が小規模農家(Enveritas Global Farmer Study, 2018、WCR経由)
輸出
生産量の90〜95%が毎年輸出される(ICO Country Profile)。2023/24年度の輸出額は50億ドル超(WCR)
「ロブスタ」はカネフォラ種の通称。 植物学上の正式名はCoffea canephora(カネフォラ種)で、「ロブスタ」はその代表的な栽培品種群に由来する通称。当サイトのアラビカ種・産地ページ群(ブラジル、コロンビア等)とは植物種そのものが異なる点に注意。
本ページの輸出量の一次資料について。 ICOは国別の輸出内訳データを、無料公開分については2024年3月発行分(2024年2月までの実績)を最後に更新を止めており、それ以降は有料会員向けデータベースでのみ提供している(2026年8月確認)。上記の輸出量は現時点で自由に確認できる最新のICO一次資料の数値であり、直近1〜2年分の実績を反映していない可能性がある。WCRが引用するICOの世界輸出ランキング(2022〜2024年平均で2位)で、大まかな現在地は補強できる。
02

ロブスタ品種の改良:WASIのクローン育種

SOURCE: Phan, V.H.「Research results on robusta coffee breeding in Vietnam」Vietnam Journal of Science, Technology and Engineering, Vol.59 No.4(2017年)/ICO Country Profile

ベトナムで栽培されるロブスタの多くは、もともとインドネシア・ジャワ島由来の系統とされる。1990年代以降、西部高原農林科学研究所(WASI:Western Highlands Agriculture and Forestry Science Institute、旧Coffee Research Institute)が中心となり、収量・耐病性・豆質を向上させたクローン品種を選抜・育成してきた。1976年からの40年間で、ベトナム農業農村開発省(MARD)に公式登録されたロブスタ品種は合計11種に上る(TR4・TR9・TR11・TR12・TR14・TR15・TRS1など)。

クローン3〜4回収穫平均収量(トン/ha)豆100粒重量(g)サビ病(葉さび病)指数MARD公式登録年
TR47.3(ダクラク省の試験地)18.40.0%2006年
TR96.7(同上)22.5(果実大)0.0%2011年
TR116.6(同上)18.30.0%2011年
TR14(晩熟)5.24(3県平均)19.1〜24.90.0%未公表
TR15(晩熟)5.13(3県平均)同上0.1%(ダクラクのみ)未公表
TRS1(交配種子)4.31(実生・4県平均)19.17.2%2015年

TR4・TR9・TR11は通常熟期クローンでダクラク省での栽培比率が高く、TR14・TR15は気候変動への適応性が高い晩熟クローン、TRS1はクローン苗の増産が追いつかない中で開発された実生(種子)品種で、TR4・TR9・TR11・TR12を交配母樹とする。すべて対照区と比べ高収量・大粒・耐サビ病性の向上が確認されている(論文内の複数県での比較試験結果より)。

アラビカ種はカティモラ(Catimor)が主流。 ICO Country Profileによれば、ベトナムで栽培されるアラビカ種の99%近くがカティモラ品種——ICOの記述では「Timor(ロブスタ)とカトゥーラ(アラビカ)の交配種」とされる(正確には、カティモラはカトゥーラとハイブリッド・デ・ティモール(アラビカ×ロブスタの自然交雑種)の交配であり、ICO文書の表現はこれを簡略化したもの)。近年はTHA・TN名を冠した新品種への切り替えも進んでいるという。
03

品質評価:カップ・オブ・エクセレンスではなくSCAスコアで測る

SOURCE: ICO Country Profile(Figure 2・3、出典:WASI, 2018)

これまでのブラジル・コロンビア等の産地ページで紹介してきたカップ・オブ・エクセレンス(COE)は、ベトナムでは開催されていない(ACE公式サイトに開催実績なし、2026年8月確認)。代わりにICO Country Profileでは、WASIが新品種をSCA(Specialty Coffee Association)のカッピング基準でスコアリングした結果が紹介されている——新ロブスタ品種は「総合スコア70点以上」で高品質と分類され、新アラビカ品種(THA・TN系統)の一部は80点を超え、スペシャルティコーヒーの水準に達したと報告されている。

ロブスタの品質評価基準について。 SCAは2010年代以降、アラビカ用のカッピングプロトコルとは別に「Q Robusta」を含むロブスタ専用の評価基準を整備している。当サイトではロブスタ専用の評価基準そのものはまだ一次資料で調査できていない(今後追加予定)。ここで紹介した70点・80点という数値は、ICOのCountry Profile内でWASIの評価結果として引用されたものであり、当サイト独自の裏付け調査はまだ行っていない。
04

今後追加すべき項目

  1. International Coffee Organization「Country Coffee Profile: Vietnam」ICC-124-9(2018年、2026年8月5日取得)
  2. International Coffee Organization「Table 1: Exports of All Forms of Coffee by Exporting Countries」MTS-0324(2024年3月発行、2024年2月実績、2026年8月5日取得)
  3. World Coffee Research「Vietnam」国別ページ(worldcoffeeresearch.org/countries/vietnam、2026年8月5日取得)
  4. Phan, Viet Ha「Research results on robusta coffee breeding in Vietnam」Vietnam Journal of Science, Technology and Engineering, Vol.59 No.4(2017年12月)