生豆の格付け・
グレーディングとは
カップ・オブ・エクセレンス(COE)は生産国ごとに開催される品質コンペティションであり、カッピングスコアによる「その年の優秀ロット」を選ぶ制度。それとは別に、輸出されるコーヒー生豆のほぼすべてが日常的に受けている「格付け(グレーディング)」がある——豆の大きさ(スクリーンサイズ)や欠点豆の数に基づく、貿易・商業上の等級分けの仕組みだ。ICO(国際コーヒー機関)・FAOの一次資料に基づき、汎用的な分類基準と、主要生産国ごとの公的基準を解説する。
スクリーンサイズとは:豆の大きさの単位
SOURCE: ICO「National Quality Standards」(ICC 122-12, 2018)生豆は、穴の空いた板(スクリーン)に通して大きさごとにふるい分けられる。ICOの公式資料によれば、スクリーンサイズは「1/64インチ」を単位として表され、たとえば「スクリーン10」は10/64インチを意味する。金属の穴径(ISO規格のmm換算)との対応は以下の通り。
| スクリーン番号 | 10 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ISO寸法(mm) | 4.00 | 4.75 | 5.00 | 5.60 | 6.00 | 6.30 | 6.70 | 7.10 | 7.50 | 8.00 |
出典:ICO資料内では、この換算表自体の原典として International Trade Centre「The Coffee Exporter's Guide」が示されている。
SCAA(現SCA)グリーンコーヒー分類
SOURCE: FAO「Annex 7: Green Coffee Classification and Grading」/ICO「National Quality Standards」スペシャルティコーヒー業界で最も広く参照される分類が、SCAA(Specialty Coffee Association of America、2017年にSCAへ統合)が定めたグリーンコーヒー分類。300gのサンプル中の欠点数と、スクリーン14〜18でのふるい分け結果によって5段階に分ける。
| グレード | 基準 |
|---|---|
| ①Specialty Grade | 300g中の欠点5個以内。プライマリー欠点は不可。水分値9〜13%。ボディ・フレーバー・アロマ・酸味のいずれかで際立った特徴が必須 |
| ②Premium Grade | 300g中の欠点8個以内。プライマリー欠点も一定数許容。クオーカー豆3個まで |
| ③Exchange Grade | 300g中の欠点9〜23個。スクリーン15以上が重量の50%以上必須 |
| ④Below Standard Grade | 300g中の欠点24〜86個 |
| ⑤Off Grade | 300g中の欠点87個以上 |
欠点は「フルブラック」「大きな石」等のプライマリー欠点と、「パーチメント混入」「虫食い」等のセカンダリー欠点に分類され、欠点の種類ごとに「何個で1フルディフェクトと数えるか」の換算表が定められている(例:フルブラック1個=1フルディフェクト、大きな石2個=1フルディフェクト)。
ニューヨーク先物(ICE Coffee C)による格付け基準
SOURCE: ICE(Intercontinental Exchange)Futures U.S. Rulebook, Chapter 8「Coffee "C" Futures and Options」「ニューヨーク方式」の呼称は、かつてのニューヨーク商品取引所(NYBOT、2007年にICEへ統合)の伝統に由来する。現在この先物契約(Coffee "C" Futures)を運営するのはICE(インターコンチネンタル取引所)で、その公式ルールブックが受渡し可能な生豆の格付け基準を定めている。基準は300gではなく375gサンプルが単位で、豆の大きさと欠点数の2軸からなる。
- 豆の大きさ
- サンプルの50%以上がスクリーン15以上、かつスクリーン14未満が5%以内であること
- 欠点(フルインパーフェクション)の例
- フルブラック1個/フルサワー1個/シェル5個/欠け豆・割れ豆5個=各1フルインパーフェクション。1インチ以下の棒切れ3本、スクリーン12以下の小石3個も同様に1個。より大きな棒切れ・石は2〜3フルインパーフェクションに加重
- ベーシス(基準欠点数)
- グアテマラ・エルサルバドル・メキシコ・コスタリカ・ニカラグア・ホンジュラス・ケニア・ブラジル・パナマ等の大半の生産国=8個。コロンビアのみ13個(コロンビアは元々欠点が少ないため基準も別)
- 受渡し上限
- ベーシスを超える欠点は15個まで許容(コロンビア産は10個まで)。ベーシスを1個超えるごとに10ポイントの価格差引き
格付けはExchange認定の鑑定人3名によるパネルで、カッピング(最低6杯)と焙煎品質の確認も併せて行われる。当サイトが扱う産地(グアテマラ・エルサルバドル・コスタリカ・ホンジュラス・ニカラグア・ケニア・ブラジル・パナマ・コロンビア)は、いずれもこの契約の受渡し対象国(Growth)としてルールブック内に明記されている。
| 呼称 | スクリーンサイズ |
|---|---|
| Chato graúdo | 17・18・19 |
| Chato médio | 15・16 |
| Chato miúdo | 14以下 |
| Moca graúdo | 11・12・13 |
| Moca médio | 10 |
| Moca miúdo(moquinha) | 9以下 |
汎用的な商業基準(一般的な貿易慣行)
SOURCE: FAO「Annex 7」特定の国・団体に紐づかない、一般的な商業取引で使われる分類も存在する。豆の大きさによる5段階のグレード(スクリーン18/7mm保持のGrade 0〜スクリーン10/4mm保持のGrade IV)と、欠点の種類ごとの係数(例:大きな木片=2、割れ豆=1/5)を合計した「欠点係数」による4段階のカテゴリーがある。
- Extra prime
- 欠点係数15未満
- Prime
- 欠点係数15〜30
- Superior
- 欠点係数30〜60
- Regular
- 欠点係数60〜120(300gサンプルで120を超えることは想定されない)
主要生産国の公的な格付け制度
SOURCE: ICO「National Quality Standards」(ICC 122-12, 2018) — 各国政府・関連団体からICOへの報告に基づくICOは加盟国に対し定期的に自国の品質基準を報告するよう求めており、その結果を集約した公式資料がある。当サイトで扱う産地について、確認できた内容は以下の通り。
| 産地 | 制度・呼称 | 備考 |
|---|---|---|
| コロンビア | Premium(スクリーン18)/Supremo(17)/Extra(16)/Excelso(14、うち50%以上がスクリーン15)/Caracol(12、ピーベリー系) | Comité Nacional de Cafeteros(コロンビア政府+FNCで構成)Resolution No.5/2002。500gサンプルで欠点72個以内、うちグループ1欠点(黒豆等)は12個まで。水分12%以下 |
| ブラジル | Chato(平豆)/Moca(ピーベリー)系、上表参照 | 農務省(MAPA)Instrução Normativa No.8/2003 |
| コスタリカ | スクリーンサイズによる呼称なし。「SHB(Strictly Hard Bean)」等の標高に基づく通称は業界で広く使われるが、法令・規則の本文には数値基準が見当たらない | INTECO(技術標準機関)とICAFEが共同でISO準拠の技術規格群(INTE A75〜A83等)を策定(2018年時点で改定作業中と報告)。ICAFEの一般規則「Reglamento a la Ley N°2762」第247条cは、収穫期ごとの「受入区分(zonas de recibo)」の標高差をICAFE理事会が毎年決議で設定する運用と規定しており、固定の数値基準が法令本文に存在しない理由と考えられる |
| ホンジュラス | Café standard/Café de altura(High Grown)/Café de estricta altura(Strictly High Grown)/Café especial(SCAA80点以上)/Café inferior(欠点87個以上)の定性的な等級区分。スクリーンサイズや標高の数値基準はなし。別途OHN(標準化機関)がISO準拠の任意規格群(OHN 4/50/60/62等)を2015年から発行 | IHCAFE「Reglamento para la Comercialización de Café」定義条項。詳細は産地ページ参照。マルカラ原産地呼称(OHN 41)等、地理的表示に関する規格も別途あり |
| ニカラグア | Maragogipe(スクリーン19以上90%)/Segovia=SHB(スクリーン16未満10%以内)/SHG(18-17-16が65%)/Lavado Nicaragua=GW/Caracol(ピーベリー)の5等級+C-0〜C-4・Dの欠点等級 | NTON 03 025-03(2003年版、政府法令データベース経由で確認)。現行は03025-11(2011年改定)とICOは報告しており、ロブスタ向け姉妹規格NTON 03 104-17(2018年)が定義条項の出典として繰り返し明記していることからも現行版であることは裏付けられるが、等級表自体の原文はまだ未確認。詳細は産地ページ参照 |
| グアテマラ | 国内基準なし | ICOへの報告(2013年)で「品質基準を実施していない」と回答——COEやSHB等の慣行的な等級はあるが、政府による公式格付け制度は確認されなかった |
| エルサルバドル | CS(標高800m以下)/HG(801〜1,200m)/SHG(1,201m以上)の標高区分+Fino Lavado(欠点26個以内)/Inferior Lavadoの欠点区分 | OSARTEC「RTS 67.08.01:18」(Consejo Salvadoreño del Café策定、WTO SPS通報で確認)。詳細は産地ページ参照 |
| メキシコ | Estrictamente Altura/Altura(スクリーン15以上75%)、Extra Prima Lavado(スクリーン14以上75%)、Maragogype(大粒種専用、スクリーン19以上90%)等 | NMX-F-551-SCFI-2008。色の均一性(%)・欠点数も等級条件に含む |
| ケニア | AA(スクリーン18-21通過・7.2mm)/AB(スクリーン16-18通過・6.35mm)/PB(ピーベリー、スクリーン12-17通過・4.76mm)/C(スクリーン10-16通過・3.96mm)/E(エレファント、スクリーン21保持・8.3mm)/TT(比重選別の軽量豆)/T(最小粒・破砕豆)/MH・ML(ムブニ=ナチュラル精製の重量選別)。指定等級には最低95%の豆が該当することを法令で規定 | The Crops (Coffee) (General) Regulations, 2019(Legal Notice No.102)Fifth Schedule(Reg. 22(12))、Kenya Law公式サイトで本文確認。mm数値はケニア独自規格KSOS-174または150415-1980準拠——ICOの国際的な1/64インチスクリーン換算(例:スクリーン18=7.10mm)とはわずかに異なる、ケニア独自の対応関係である点に留意 |
エチオピアの「G1」「G2」— 何が分かっていて、何が分かっていないか
SOURCE: ICO ICC 122-12[2]/査読論文[12]/FAO[13]エチオピアのコーヒーは、産地名のうしろに G1(グレード1)・G2 といった表記がつくことが非常に多い。ところがこの等級の定義を、当サイトはまだ一次資料で確認できていない。分かっていることと分かっていないことを、混ぜずに書く。
| 評価 | 配点 | 内訳 |
|---|---|---|
| 生豆(raw) | 40% | 乾式(ナチュラル)=欠点30%(一次欠点15%+二次欠点15%)+におい10% 湿式・半湿式=欠点20%(一次10%+二次10%)+形と作り5%+色5%+におい10% |
| カップ(liquor) | 60% | クリーンカップ15%+酸味15%+ボディ15%+フレーバー15% |
なお同論文では、評価はQグレーダー4名により、スクリーン14通過率と水分値の測定も併せて行われ、カップは豆100gを8〜12分焙煎し、250mLのカップで3名がテイスティングする手順だったと記されている。
ECXの公式サイト(ecx.com.et)は、2026年9月2日時点で curl・ブラウザのいずれからも到達できなかった。入手経路が見つかり次第、この節を数値つきで書き換える。
⚠️ これは2000年時点の記述であり、ECXの設立(2008年)より前の姿である。現在の制度をそのまま表すものではない。
今後追加すべき項目
- ECX「Coffee Contracts」の原典 — エチオピアのG1〜G5の閾値が書かれている一次資料。ecx.com.et は2026年9月2日時点で到達不能。ECTA(エチオピア・コーヒー茶庁)側の公表資料、または同文書を全文引用した査読論文からの入手を試みる。
- ケニアAA/AB/PBの政府一次資料(法令レベル) — 解消済み。Kenya Law公式サイト(new.kenyalaw.org)からThe Crops (Coffee) (General) Regulations, 2019(Legal Notice No.102)本文を直接取得し、Fifth Schedule(Reg. 22(12))の等級表・95%純度基準を確認した(詳細はケニア産地ページ)。
- SCA-110の正式発行後の再確認 — SCAが現在策定中の正式番号付き規格「SCA-110」が発行され次第、現行の実務運用ベース(旧SCAA分類)の記述をSCA自身の一次資料に置き換える。
- コスタリカの等級名(SHB等)の一次資料 — ホンジュラス(IHCAFE商業化規則)・ニカラグア(NTON 03 025-03)は政府一次資料で等級呼称を確認できた(それぞれ産地ページ・産地ページ参照)。コスタリカについては、ICAFEの一般規則「Reglamento a la Ley N°2762」全141条を直接確認したが、「SHB」等の呼称・標高数値は本文に一切含まれていなかった——同規則第247条cが、標高差に基づく「受入区分」を収穫期ごとにICAFE理事会の決議で設定する(法令自体には数値を固定しない)運用を定めているため、SHB等の具体的な数値基準は年次のICAFE理事会決議という別の資料体系にあると考えられる。この理事会決議そのものの原文は今回も特定できておらず、今後の課題として残す。
- ニカラグアNTON 03025-11(2011年改定版)の原文確認 — 今回確認できたのは2003年版(NTON 03 025-03)。2011年改定版が現行版であること自体は姉妹規格(NTON 03 104-17)からの相互引用で裏付けたが、等級表自体の数値更新の有無は原文入手のうえ次回確認予定。
- 旧来の「タイプ番号/ポイント」表記の一次出典 — FAO Annex 7経由(coffeeresearch.org由来)でしか確認できておらず、この点数表自体はICEの現行ルールブックには見当たらなかった。NYBOT時代の慣行資料等、より正確な一次資料が見つかれば置き換える。
- FAO「Annex 7: Green Coffee Classification and Grading」(x6939e13.htm、原典としてcoffeeresearch.org経由の数値を含むと自ら明記)
- ICO(International Coffee Organization)「National Quality Standards」ICC 122-12(2018年8月、International Coffee Council第122回会合資料)——スクリーンサイズ換算表、コロンビア・ブラジル・コスタリカ・ホンジュラス・ニカラグア・グアテマラ・メキシコ・アメリカ各国の報告内容
- SCA公式サイト(sca.coffee/research/coffee-standards)——SCA-110策定状況の確認
- ICE(Intercontinental Exchange)Futures U.S. Rulebook, Chapter 8「Coffee "C" Futures and Options」(ice.com/publicdocs/rulebooks/futures_us/8_Coffee.pdf、2026年7月27日取得)
- Nairobi Coffee Exchange 公式サイト「Coffee Grades」ページ(nairobicoffeeexchange.co.ke/kenya-coffee-origin/coffee-grades、2026年7月27日取得)
- OSARTEC(エルサルバドル)「Reglamento Técnico Salvadoreño RTS 67.08.01:18」(WTO SPS通報経由、2026年7月27日取得)
- IHCAFE(ホンジュラス)「Reglamento para la Comercialización de Café」(ihcafe.hn、2026年7月27日取得)
- Norma Técnica Obligatoria Nicaragüense NTON 03 025-03「Café Verde」(nicaragua.justia.com経由、2026年7月27日取得)
- ICAFE(コスタリカ)「Reglamento a la Ley N°2762 y sus reformas」全141条(icafe.cr、2026年7月31日取得)
- Norma Técnica Obligatoria Nicaragüense NTON 03 104-17「Café Verde Robusta」(La Gaceta Diario Oficial, 2018年、faolex.fao.org経由、2026年7月31日取得)
- ケニア共和国「The Crops (Coffee) (General) Regulations, 2019」Legal Notice No.102(new.kenyalaw.org、2026年7月31日取得)Fifth Schedule(Reg. 22(12))
- Tassew AA, Yadessa GB, Bote AD, Obso TK「Influence of location, elevation gradients, processing methods, and soil quality on the physical and cup quality of coffee in the Kafa Biosphere Reserve of SW Ethiopia」Heliyon 7(8):e07790(2021年8月13日、オープンアクセス、DOI 10.1016/j.heliyon.2021.e07790、PMC8379458、2026年9月2日に全文取得)— ECXの予備品質評価の配点・手順。著者の一人はエチオピア・コーヒー茶庁(ECTA)所属。同論文が根拠として挙げる ECX(2015)「Coffee Contracts」の原典は当サイト未入手
- FAO「Post Harvest Handling and Processing of Coffee in African Countries」(Joackim Mutua、2000年12月、文書番号 x6939e)Annex 6「Coffee Growing in Ethiopia」。2000年時点の記述であり、ECX設立(2008年)より前の姿である