HACHIMARU COFFEE ROASTERY
品種ページ / Variety

SL34Scott Labs 34

当サイトに既にページのあるSL28と同じ、ケニアのScott Agricultural Laboratories(スコット農業研究所)が1930年代後半に選抜した品種。「SL」は1935〜1939年に同研究所が行った個体選抜につけられた接頭辞。長らくブルボン系の「フレンチミッション」由来と考えられてきたが、近年の遺伝子解析でティピカ系統に属することが示されているという、来歴に未解決の論点を抱えた品種でもある。

最適標高帯
中〜高(700m〜、緯度依存)
豆のサイズ
大きい
高標高での品質
卓越
さび病耐性
低い
01

基本情報

SOURCE: WCR VARIETY CATALOG
品種名
SL34Scott Labs 34
育成機関
Scott Agricultural Laboratories(ケニア、植民地時代の研究機関)
選抜時期
1930年代後半。「SL」の接頭辞は1935〜1939年に同研究所で行われた個体選抜につけられたもの
選抜元
ケニア・カベテKabeteのロレショ農園Loresho Estateの1本の木から選抜。当時その木には「フレンチミッションFrench Mission」というラベルが付いていた
研究の進め方
スコット研究所の研究は、地元の民間農園主との協力のもとで行われることが多かった
遺伝的系統区分
ブルボン・ティピカ群(ティピカ系)
系統Lineage
「ティピカ様の遺伝的背景Typica-like genetic background」とのみ記載
02

「フレンチミッション」の謎

SOURCE: WCR VARIETY CATALOG「SL34」History より

SL34の来歴には、一次資料の側にはっきりと書かれた未解決の矛盾がある。当サイトは推測で埋めない方針のため、WCRの記述をそのまま整理して示す。

1893年
スピリタン会Spiritansとして知られるフランス人宣教師が、ケニアのブラBura(タイタヒルズ)に伝道所を設立。レユニオン島由来のブルボン種の種子が植えられた
1899年
ブラで育った苗が、ナイロビ近郊のサンオースティンSaint Austinの別の伝道所へ運ばれる。そこからコーヒー栽培を望む入植者へ種子が配布された
この系統の通称
これがいわゆる「フレンチミッションFrench Mission」コーヒーの起源
従来の理解
レユニオン島からフランス人宣教師を経由して直接運ばれたという歴史的経緯から、フレンチミッション=ブルボンの別名と広く理解されてきた
近年の遺伝子解析
しかしSL34はティピカ系統に関連することが示された。WCRは「SL34がフレンチミッションの集団から選抜されたという元々の話が、誤りである可能性がある」と明記している
同じ研究所の姉妹品種でも、系統は別。 SL28は当サイトのページでも記載している通り、遺伝子解析でブルボン系の遺伝的背景が確認されている。一方SL34はティピカ系。名前が連番で、同じ時期に同じ研究所で選抜されたにもかかわらず、遺伝的な出自が異なるという点は、「品種名の見た目の近さと系統の近さは別物」という良い例になっている。
03

詳細スペック

SOURCE: WCR CATALOG, 2026-08-10 取得
評価の目安: 良好 標準 要注意 — WCRカタログ自身の区分(Low/Medium/High/Exceptional等)をそのまま可視化したもの

最適標高帯(WCRカタログの区分は「Medium-high」)は緯度により変動する — カタログ自身の目安を可視化:

2,000m1,500m1,000m500m0m
1,200m+北緯/南緯
5°以内
900m+5〜15°
700m+15°以上
樹形
高いTall
新芽の葉色
濃い銅色Dark Bronze
豆のサイズ
大きいLarge
収穫量ポテンシャル
中程度
高標高での品質
卓越Exceptional
さび病(CLR)耐性
低い・感受性あり
線虫耐性
感受性あり
コーヒーベリー病(CBD)耐性
感受性あり
初収穫までの年数
3年目
必要な栄養レベル
中程度
果実の成熟時期
不明Unknown(WCR未記載)
生豆歩留まり
高いHigh
推奨植栽密度
1,000〜2,000本/ha
遺伝的系統区分
ブルボン・ティピカ群(ティピカ系)
植栽密度の表記について、WCRカタログ自身の記述に食い違いがある。 SL34の推奨植栽密度としてカタログが表示する値は「1,000〜2,000本/ha(単幹剪定の場合)」だが、同じページの選択肢一覧では1,000〜2,000本/haは複数幹剪定の区分として定義されている。またWCRは同項目の説明文で「中米では通常1本の主幹に剪定するが、アフリカでは2〜3本の主幹に剪定するのが一般的で、そのため樹の植栽密度は大幅に低くなる」と述べており、ケニアの品種であるSL34の低い密度はこのアフリカ式の剪定を反映していると考えるのが自然である。当サイトでは数値のみを掲載し、剪定方式の断定は避けるSL28のページも同じ数値を掲載しているが、そちらはカタログの表示どおり「単幹剪定」と記載しているため、この点は今後統一を検討する)。
04

SL28との比較

SOURCE: WCR VARIETY CATALOG(両品種のエントリ)
WCR Variety Catalogの各項目を並べたもの。「—」は両者で差のない項目を省略した箇所ではなく、実際に同じ値であることを示す。
項目SL28SL34
遺伝的背景ブルボン系(遺伝子解析で確認済み)ティピカ系(遺伝子解析による)
選抜元「Tanganyika Drought Resistant」と呼ばれるブルボン系統ロレショ農園の1本の木(「フレンチミッション」)
カタログ化/選抜年1935年1930年代後半
新芽の葉色濃い銅色
収穫量ポテンシャル低い中程度
必要な栄養レベル低い中程度
樹形/豆のサイズ高い/大きい(同じ)
高標高での品質卓越 Exceptional(同じ)
さび病・線虫・CBD耐性いずれも感受性あり(同じ)
生豆歩留まり/初収穫高い/3年目(同じ)

カップ品質の評価(卓越)と病害への弱さは両者で共通しており、ケニアのコーヒーが「品質は高いが病害に弱い」と語られる背景がここにある。一方で収量と必要栄養はSL34の方が扱いやすい水準にある。

05

今後追加すべき項目

  1. World Coffee Research, Variety Catalog「SL34」(varieties.worldcoffeeresearch.org/varieties/sl34、2026年8月10日取得)
  2. World Coffee Research, Variety Catalog「SL28」(同日取得、比較表のSL28側の数値)