乾燥
ウォッシュド・ナチュラル・ハニー——精製方法の選択がどれであっても、豆(パーチメントまたはチェリーのまま)を乾燥させる工程は必ず通る共通ステップ。ITC「Coffee Processing Theory」教材(CQI Q Processing Level 2準備コース)は、この工程を「保管・輸送時の品質を左右する重要な局面」と位置づけている。
乾燥方法:天日乾燥と機械乾燥
SOURCE: ITC「Coffee Processing Theory」Step 6: Dryingコーヒー業界では天日乾燥(Solar drying)と機械乾燥(Mechanical drying)のいずれかが用いられる。天日乾燥にはさらに複数の方式があり、教材は次の3つの表面を挙げている。
乾燥中の温度管理
SOURCE: ITC「Coffee Processing Theory」Step 6: Drying乾燥中に豆の温度が上がりすぎると、胚(embryo)が損傷し品質が損なわれるリスクがあるとされる。教材が定める上限温度は精製方法によって異なる。
- ウォッシュド・ハニー(パーチメント)
- 豆表面温度40℃を超えないこと
- ナチュラル
- 豆表面温度45℃を超えないこと
日陰での「予備乾燥(Pre-drying under shade)」は、天日乾燥・機械乾燥のどちらの場合でも併用できる手法として挙げられている。乾燥時間は外気の気温・湿度によって左右されるため、これらの推移を監視することが重要だと教材は述べる。
攪拌と乾燥終了の判断
SOURCE: ITC「Coffee Processing Theory」Step 6: Drying乾燥初期の数日間は、均一に乾かしカビの発生を防ぐため、豆を絶えず攪拌することが重要とされる。ナチュラルは少なくとも1日12回の攪拌が推奨されている。
乾燥の管理に使う測定器具
SOURCE: ITC「Coffee Processing Theory」Chapter: Measuring Devices乾燥工程では複数の測定器具を組み合わせて、豆自体の温度と、乾燥場の環境条件の両方を監視する。
乾燥記録シートに残す項目
SOURCE: ITC「Coffee Processing Theory」Chapter 7: The importance of Data processing recording教材は「重量・温度・水分値・匂い・質感」の5つを、精製工程全体を通じて記録すべき主要パラメータとして挙げ、特に乾燥・発酵の工程での記録が重要だとしている。乾燥記録シートの例として、次の項目が挙げられている。
- 開始時に記録
- 日付・初期重量・開始時刻・精製方法・ロット番号
- 乾燥中、継続的に記録
- 日付・時刻・重量・豆温度(3箇所計測の平均)・外気温・相対湿度・水分値・備考
- 終了時に記録
- 乾燥終了の日付・時刻、最終重量、最終水分値
乾燥後の保管(Step 7: Storage)
SOURCE: ITC「Coffee Processing Theory」Step 7: Storage教材は乾燥(Step 6)に続く「保管(Step 7)」も、精製方法を問わず共通する重要な工程として扱っている。保管の目的は、乾燥豆(パーチメントまたはナチュラル)を脱穀工場(dry mill)へ輸送するまでの品質を保つこと。乾燥豆は麻袋(jute)またはポリプロピレン袋に詰められ、脱穀後の生豆は焙煎業者に届くまでの間、再び保管される。
- 相対湿度(RH)の目安
- 50〜70%が通常の範囲。80%を超えると真菌(カビ)発生リスクが著しく高まる
- 包装資材
- 伝統的には麻袋。高品質コーヒーではGrainPro・Ecotactなど、バリア性の高い密閉包装材の使用が推奨される
- その他の管理
- 気温は穏やかな水準を維持し、害虫(pest)の管理も重要とされる
保管しても、生豆は少しずつ古くなる
SOURCE: SCA「Coffee Decoded」上記の保管条件を守っても、生豆の品質が止まったままになるわけではない。SCA(スペシャルティコーヒー協会)は、輸出できる状態になったばかりの豆を「フレッシュクロップ(新豆)」、次の収穫期を迎えた前年の豆を「パストクロップ(古豆)」と呼び分け、そのあいだに起きる変化を説明している。
ウォッシュド精製の生豆の色は、鮮やかな灰緑色から淡いベージュへ移り、風味はくすみ、香りは生気を失う。SCAによれば、数か月で持ち味を失う豆もあれば、14〜16か月ものあいだ性格を保つ豆もあるという。
今後追加すべき項目
- 機械乾燥(Mechanical drying)の具体的な方式・温度カーブ — 教材は天日乾燥との対比で機械乾燥の存在に触れているが、乾燥機の種類や具体的な温度・時間設定までは本教材内に記載がなかった。今後、別の一次資料で確認でき次第追記。
- 産地別の乾燥方式の実例 — 当サイトの各産地ページ(エルサルバドル・ケニア等)における実際の乾燥方式(アフリカンベッド/パティオ等)の記載を、一次資料で確認でき次第、本ページと相互リンクする形で追加予定。
- ITC(International Trade Centre)「Coffee Processing theory: A preparatory course for CQI Q Processing Arabica Level 2」学生用ハンドブック(2024年)Step 6: Drying(乾燥方式・温度管理・攪拌・終了条件)
- 同上 Step 7: Storage(乾燥後の保管条件)
- 同上 測定器具の章(放射温度計・温湿度計・水分計の使い方)
- 同上 Chapter 7: The importance of Data processing recording(乾燥記録シートの項目)
- SCA「Coffee Decoded: What is "fresh crop" coffee?」(Peter Giuliano, SCA Senior Advisor for Scientific Communication)— フレッシュクロップとパストクロップ、生豆の老化、PPOによる褐変、低温・乾燥・深冷凍の効果