HACHIMARU COFFEE ROASTERY
乾燥 / Drying

乾燥

ウォッシュドナチュラルハニー——精製方法の選択がどれであっても、豆(パーチメントまたはチェリーのまま)を乾燥させる工程は必ず通る共通ステップ。ITC「Coffee Processing Theory」教材(CQI Q Processing Level 2準備コース)は、この工程を「保管・輸送時の品質を左右する重要な局面」と位置づけている。

01

乾燥方法:天日乾燥と機械乾燥

SOURCE: ITC「Coffee Processing Theory」Step 6: Drying

コーヒー業界では天日乾燥(Solar drying)と機械乾燥(Mechanical drying)のいずれかが用いられる。天日乾燥にはさらに複数の方式があり、教材は次の3つの表面を挙げている。

Raised beds
アフリカンベッド(高床式)
地面から離した網状の台の上に広げて乾燥させる方式。教材の著者が拠点とする地域では、この方式が優先的に採用されているという——理由として、汚染リスクの低減・動物のアクセス防止・良好な通気性の3点を挙げている。
Concrete (patio)
パティオ(コンクリート床)
コンクリートで舗装した地面に広げて乾燥させる、伝統的に広く使われる方式。
Tarpaulins
タープ(シート敷き)
防水シートの上に広げて乾燥させる、簡易な方式。
地域による優先方式の違いについて。 「アフリカンベッドが優先的に使われる」という記述は、教材内で「in our regions(私たちの地域では)」と明記されている——つまり著者が拠点とする特定地域での実務慣行であり、コーヒー業界全体の一般則として断定しているわけではない。この点は正直に区別して記載する。
02

乾燥中の温度管理

SOURCE: ITC「Coffee Processing Theory」Step 6: Drying

乾燥中に豆の温度が上がりすぎると、胚(embryo)が損傷し品質が損なわれるリスクがあるとされる。教材が定める上限温度は精製方法によって異なる。

ウォッシュド・ハニー(パーチメント)
豆表面温度40℃を超えないこと
ナチュラル
豆表面温度45℃を超えないこと

日陰での「予備乾燥(Pre-drying under shade)」は、天日乾燥・機械乾燥のどちらの場合でも併用できる手法として挙げられている。乾燥時間は外気の気温・湿度によって左右されるため、これらの推移を監視することが重要だと教材は述べる。

03

攪拌と乾燥終了の判断

SOURCE: ITC「Coffee Processing Theory」Step 6: Drying

乾燥初期の数日間は、均一に乾かしカビの発生を防ぐため、豆を絶えず攪拌することが重要とされる。ナチュラルは少なくとも1日12回の攪拌が推奨されている。

Primary source figure
水分値10〜12%で乾燥終了
湿度(水分値)が10〜12%の範囲に達した時点で乾燥を止めるのが基準。教材は、バイヤーが乾燥不十分な豆(例:12.5%)を受け取り拒否することもあると注意を促しており、乾燥不良はそのまま品質低下につながるとしている。
04

乾燥の管理に使う測定器具

SOURCE: ITC「Coffee Processing Theory」Chapter: Measuring Devices

乾燥工程では複数の測定器具を組み合わせて、豆自体の温度と、乾燥場の環境条件の両方を監視する。

Infra-red gun
放射温度計
乾燥台の豆から30〜50cm離した距離で照射し、表面温度を計測する。最低3箇所を計測し、その平均値を記録する。
Hygrometer-thermometer
温湿度計
コーヒーは吸湿性(hygroscopic)の高い産品であるため、乾燥・保管中の周囲環境の湿度・気温を計測する。外部プローブ付きのモデルは液体の温度も計測できる。
Moisture meter
水分計
豆自体の水分含有率を計測する。使用前にArabica/Robusta/Natural/Parchmentなど、計測対象の種類を正しく選択する必要がある——選択ミスがQP2試験でのよくある失敗点として挙げられている。校正には専門の検査機関の介入が必要。
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乾燥記録シートに残す項目

SOURCE: ITC「Coffee Processing Theory」Chapter 7: The importance of Data processing recording

教材は「重量・温度・水分値・匂い・質感」の5つを、精製工程全体を通じて記録すべき主要パラメータとして挙げ、特に乾燥・発酵の工程での記録が重要だとしている。乾燥記録シートの例として、次の項目が挙げられている。

開始時に記録
日付・初期重量・開始時刻・精製方法・ロット番号
乾燥中、継続的に記録
日付・時刻・重量・豆温度(3箇所計測の平均)・外気温・相対湿度・水分値・備考
終了時に記録
乾燥終了の日付・時刻、最終重量、最終水分値
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乾燥後の保管(Step 7: Storage)

SOURCE: ITC「Coffee Processing Theory」Step 7: Storage

教材は乾燥(Step 6)に続く「保管(Step 7)」も、精製方法を問わず共通する重要な工程として扱っている。保管の目的は、乾燥豆(パーチメントまたはナチュラル)を脱穀工場(dry mill)へ輸送するまでの品質を保つこと。乾燥豆は麻袋(jute)またはポリプロピレン袋に詰められ、脱穀後の生豆は焙煎業者に届くまでの間、再び保管される。

相対湿度(RH)の目安
50〜70%が通常の範囲。80%を超えると真菌(カビ)発生リスクが著しく高まる
包装資材
伝統的には麻袋。高品質コーヒーではGrainPro・Ecotactなど、バリア性の高い密閉包装材の使用が推奨される
その他の管理
気温は穏やかな水準を維持し、害虫(pest)の管理も重要とされる
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保管しても、生豆は少しずつ古くなる

SOURCE: SCA「Coffee Decoded」

上記の保管条件を守っても、生豆の品質が止まったままになるわけではない。SCA(スペシャルティコーヒー協会)は、輸出できる状態になったばかりの豆を「フレッシュクロップ(新豆)」、次の収穫期を迎えた前年の豆を「パストクロップ(古豆)」と呼び分け、そのあいだに起きる変化を説明している。

ウォッシュド精製の生豆の色は、鮮やかな灰緑色から淡いベージュへ移り、風味はくすみ、香りは生気を失う。SCAによれば、数か月で持ち味を失う豆もあれば、14〜16か月ものあいだ性格を保つ豆もあるという。

褐変の主因として酵素の名前まで挙げられている。 SCAは生豆の老化の主因を酸化とし、生豆の重量の約15%を占める脂質が酸素で劣化すること、そしてポリフェノールオキシダーゼ(PPO)という酵素が酸素とポリフェノールに作用して褐色の色素をつくることを挙げている。生豆が「生きた種子」としてわずかに代謝を続けている点も要因に挙げられているが、SCA自身が「影響はおそらくごく小さい」としている。
低温・乾燥はここでも効く。 SCAは「涼しく乾いた環境は生豆の鮮度を保つのに役立ち、深冷凍はその老化をほぼ停止させるほどである」と述べ、特殊なプラスチックやマイラーの袋も「おそらく酸素を排除することによって」役立つとしている(原文自体が推定形)。上記の相対湿度50〜70%やバリア包装の指定と方向は一致する。ただしこれは生豆の話で、焙煎豆を家庭で冷凍する話ではない——その区別は保存方法のページで扱っている。
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今後追加すべき項目

  1. ITC(International Trade Centre)「Coffee Processing theory: A preparatory course for CQI Q Processing Arabica Level 2」学生用ハンドブック(2024年)Step 6: Drying(乾燥方式・温度管理・攪拌・終了条件)
  2. 同上 Step 7: Storage(乾燥後の保管条件)
  3. 同上 測定器具の章(放射温度計・温湿度計・水分計の使い方)
  4. 同上 Chapter 7: The importance of Data processing recording(乾燥記録シートの項目)
  5. SCA「Coffee Decoded: What is "fresh crop" coffee?」(Peter Giuliano, SCA Senior Advisor for Scientific Communication)— フレッシュクロップとパストクロップ、生豆の老化、PPOによる褐変、低温・乾燥・深冷凍の効果