HACHIMARU COFFEE ROASTERY
精製方法ページ / Processing

ナチュラルNatural / Unwashed

果皮・ミューシレージともに除去せず、チェリーのまま乾燥させる手法。CQI教材によれば、機械化以前から存在する、歴史的に最も古い精製方法。

01

定義

SOURCE: ICO GLOSSARY OF TERMS

「Unwashed coffee(非水洗式コーヒー)= Green coffee prepared by dry processing of the fruit. The term "natural coffee" is also used for this product.(果実を乾式処理して作られた生豆。この製品には『ナチュラルコーヒー』という語も使われる)」

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工程・特徴

SOURCE: ITC「COFFEE PROCESSING THEORY」

ミューシレージ残存率のスペクトラム上の位置 — ナチュラルは果皮・ミューシレージをすべて残す

ウォッシュド
〜0%
ハニー
ナチュラル
100%
乾燥時の管理。 乾燥中は豆の表面温度が45℃を超えないよう管理し、カビの発生防止・乾燥の均一化のため1日最低12回は攪拌することが推奨されている。天日乾燥・機械乾燥の違いや測定器具の使い方など、精製方法共通の乾燥工程の詳細は乾燥ページ→を参照。
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いちばん古いやり方である

SOURCE: CQI Q PROCESSING 教材[2]

コーヒーの実は、そのまま干せば乾く。水も機械もいらない。だからナチュラルは、コーヒーがコーヒーとして飲まれ始めたころからあるやり方である。CQIの教材は、3つの精製方法が生まれた順番を次のように説明している。

① まずナチュラルがあった。 機械を使った精製の手段が現れる前に、最初に使われていたのがこの方法である。
② 次にウォッシュドが生まれた。 処理にかかる時間を短くするために、皮を取り除き、ミューシレージ(果肉のぬめり)を溶かして洗い流す方法が求められた。そうしてウォッシュドができた。
③ ところが、味が変わることに気づかれた。 教材の原文はこう書いている——「it was noticed that the coffee flavours changed, with more acidity, less body and a reduced aroma intensity」。つまりウォッシュドにすると、酸味が増え、ボディ(口に残る厚み)が減り、香りの強さが落ちた
④ そこでハニーが現れた。 ナチュラルとウォッシュドの中間の性質を持ちながら、乾燥にかかる時間も現実的な範囲におさまる方法として、ハニーが生まれた。
⭐ ここが、ナチュラルの味の話の出発点である。 「ナチュラルは甘い」「果実感がある」という言い方をよく聞くが、一次資料でたどれるのはこの逆向きの記述——果肉を外して洗うと、酸味が増えてボディと香りが減った——である。ナチュラルの特徴は、その「減らなかったほう」として説明されている。
ただし、これは工程の歴史としての記述であって、成分を測った比較データではない。当サイトはこの区別を残したまま掲載する。
04

工程を順番に見る

SOURCE: CQI Q PROCESSING 教材[2]/ITC 西アフリカ向けハンドブック[3]

ナチュラルは「干すだけ」と言われるが、実際に管理されている工程は次のようになる。果肉を外す工程がない代わりに、選別と乾燥にすべての負荷がかかる。

1 収穫・受け入れ
収穫したチェリーは理想としては8時間以内に精製施設へ入れる。早いほどよい。運搬中の打ち身も欠点の原因になる
2 選別(水に浮かべる)
チェリーを水に入れる。水は3つの役割を同時に果たす——実を洗う/温度を下げて微生物の動きを遅くする/浮くものと沈むものを分ける(密度による選別)。軽い豆=中身の詰まっていない豆はここで浮いて外れる
3 選別(色で分ける)
密度で分けきれなかったチェリーを、色で選り分ける。熟し具合をそろえる工程である
4 乾燥
チェリーのまま14〜21日。レイズドベッド(棚)またはパティオ(コンクリートの床)に広げ、掻き返しながら乾かす。機械乾燥もある。皮は黒くなる。最終的な水分は11〜12%
5 レスティング(寝かせ)
サイロなどで15〜60日。水分を均一にし、品質を整え、その後の熟成をよくする。ナチュラルは、パーチメントの状態のコーヒーより長く寝かせることがある
6 脱穀・選別・保管
乾いたチェリーの皮を取り除き、大きさ・密度・色で分けて生豆にする。保管は相対湿度50〜70%が目安で、80%を超えるとカビのリスクが大きく上がる
ウォッシュドと共通なのは4以降だけである。 3までがナチュラル固有の工程で、果肉を外さないと決めた時点で、そのあとの乾燥は全部むずかしくなる。工程全体の流れは精製方法とは、乾燥そのものの詳細は乾燥ページで扱っている。
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ウォッシュドとの違いは、乾燥の日数に出る

SOURCE: ITC 西アフリカ向けハンドブック[3]/CQI Q PROCESSING 教材[2]

同じ資料が、ナチュラルとウォッシュドの乾燥条件を別々に書いている。並べると差がはっきりする。

 ナチュラルウォッシュド
乾かすものチェリーまるごと(果皮も果肉もついたまま)パーチメント(内果皮に包まれた豆)
乾燥日数14〜21日8〜15日
豆の温度の上限45℃を超えないこと40℃を超えないこと
攪拌1日に最低12回定期的に返す
終了時の水分11〜12%11〜12%
見た目の変化皮が黒くなる
乾燥期間がほぼ倍になる。 乾かす相手が、豆だけではなく水分をたっぷり含んだ果肉ごとだからである。その分だけ、天気の悪い日にあたる確率も、途中で何かが起きる確率も上がる。
許容温度がナチュラルのほうが高い(45℃ vs 40℃)のは、豆が果肉に包まれていて直接熱にさらされないためと読めるが、教材はその理由までは書いていないので、当サイトは数値だけを掲載する。
06

何が失敗の原因になるのか

SOURCE: FAO「アフリカ諸国におけるコーヒーの収穫後処理」(2000年)[4]

FAOの資料は、乾式処理(ナチュラル)について「乾燥は精製のなかで重要かつ扱いのむずかしい段階であり、正しく行われなければ品質を損ないうる」としたうえで、悪条件を具体的に3つ挙げている。

層が厚すぎる
広げたコーヒーの層が厚いと、内側まで乾かない
均一化が足りない
掻き返しが不十分だと、乾いた部分と乾いていない部分ができる
再吸湿
一度乾いたものが、また湿気を吸ってしまう
この3つが起きると、カビや細菌の働きによって不快な味が出る。また黒くなった豆(特に未熟なもの)は、硬く酸っぱい液体になるとFAOは書いている。
⚠️ ナチュラルの「黒い皮」と、欠点としての「黒い豆」は別物である。 ナチュラルでは乾燥にともなって外側の皮が黒くなる(これは正常)。FAOが欠点として挙げているのは中の豆そのものが黒くなったものである。
同じ資料は「アフリカのコーヒー生産国の多くでは乾式処理が使われており、湿式処理のほうが高くつき、収穫から乾燥まで手間がかかる」とも書いている。ナチュラルが選ばれる理由は、味の設計であるとは限らない——水や設備の事情であることも多い。
⚠️ この資料は2000年のものである。 アフリカ諸国を対象とした当時の状況の記述であり、現在のスペシャルティコーヒーのナチュラルの管理水準をそのまま表すものではない。ここでは「乾燥で何が起きうるか」という物理的な理屈の部分だけを引いている。
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今後追加すべき項目

  • ナチュラルとウォッシュドの成分比較の実測データ — 当サイトが現在載せているのは工程と歴史の記述であって、「酸味が増える/ボディが減る」を成分や官能評価で測った数値ではない。査読論文での比較を探す。
  • 「アナエロビックナチュラル」との関係 — 近年のアナエロビックコールドアナエロビックは、ナチュラルの乾燥前に密閉発酵を挟むものが多い。どこまでが「ナチュラル」なのかの線引きは、業界団体の定義が存在しない。
  • レイズドベッドとパティオの違い — ITCの資料は西アフリカでは乾燥テーブル(棚)が好まれるとし、理由に汚染リスクの低下・動物の侵入防止・通気の良さを挙げているが、品質への効果を測った資料は未確認
  • エチオピアの「ドライステーション」 — ナチュラル専用の乾燥場を指す語として流通しているが、業界団体による定義は当サイト未確認
  • レスティング期間と味の関係 — 15〜60日という幅の根拠、ナチュラルで長くなる理由。
  1. International Coffee Organization「Glossary of Terms」(FAO転載版, Annex 8)
  2. ITC「Coffee Processing theory: A preparatory course for CQI Q Processing Arabica Level 2」学生用ハンドブック(2024年、全32ページ)— Chapter Five(精製方法の成り立ち・基本工程)、Step 6: Drying、Step 7: Storage
  3. International Trade Centre「Harvesting, Post-Harvest Management, and Processing of Coffee — A handbook on coffee processing for MSMEs in West Africa」(2023年6月、ジュネーブ/アクラ、全57ページ)Table 3「Three primary coffee processing methods」。ITCは世界貿易機関(WTO)と国連の合同機関。当サイトが軸とする7団体の枠外だが、上の[2]と同じ発行元であり、CQIの教材課程と同系の資料である旨を明記した上で掲載する
  4. FAO「Post Harvest Handling and Processing of Coffee in African Countries」(Joackim Mutua、2000年12月、文書番号 x6939e)5.6.2 Dry process3.3.3 Method of processing2000年時点のアフリカ諸国を対象とした記述である