抽出 / Nel Drip / Cloth Filter
ネルドリップNel Drip / Cloth Filter
紙ではなく起毛した布(フランネル)で漉す淹れ方である。全日本コーヒー協会は「コーヒーのおいしさを最大限に引き出す抽出法として、古くから普及している」と紹介する。洗って繰り返し使えるのが特徴で、そのぶん手入れの手順まで公式に決まっている——新品は20分以上煮沸し、使ったあとは水に浸して冷蔵庫で保管する。理由は布に残った脂肪分の酸化を防ぐためである。
- 粉と湯
- 12g/160mL
- 注ぎ方
- 5〜6回に分けて
- 抽出時間
- 2分半〜3分
- 保管
- 水に浸して冷蔵庫
01
ネルドリップとは
SOURCE: 全日本コーヒー協会
「ネル」は起毛した布フランネルのことである。紙の代わりに布のフィルターでコーヒーを漉す淹れ方で、AJCAは「コーヒーのおいしさを最大限に引き出す抽出法として、古くから普及している」と紹介している。
Primary source quote
起毛した布「フランネル」で作られたフィルターは、洗いながら繰り返し使うことができます。舌触りの滑らかなコクのある味わいが楽しめる抽出方法です。
全日本コーヒー協会「いろいろな器具」より。紙と違い、使い捨てではない——それがこの器具のいちばんの特徴である。
⭐ 布であることが、手入れの手間に直結する。 繰り返し使えるということは、毎回洗って保管しなければならないということでもある。
AJCAの手順は、淹れ方と同じくらいの分量を「使う前の準備」と「使ったあとの保管」に割いている(→
02・
04)。
これは他の器具のページには無い特徴である。
02
新品のネルは、20分以上煮沸してから使う
SOURCE: 全日本コーヒー協会「ネルドリップ式」
Primary source quote
ネルフィルターは新品の場合、少量のコーヒー粉を入れた湯で20分以上煮沸。煮沸後はキッチンペーパーなどで水気をよく取る。
全日本コーヒー協会「ネルドリップ式」の準備工程より。「少量のコーヒー粉を入れた湯で」煮るところまで指定されている。
⭐ 「なぜコーヒー粉を入れて煮るのか」は書かれていない。 AJCAの手順は工程だけを示していて、理由の説明は無い。当サイトは
そう指示されているという事実だけを記載する(→
05)。
ペーパードリップに「フィルターを湯通しする」工程があるのと似ているが、こちらは20分以上という桁の違う手間である。
03
AJCAの手順(1杯140mL分)
SOURCE: 全日本コーヒー協会「ネルドリップ式」
| 材料(1杯140mL分) | 分量 |
| コーヒー粉 | 12g(細挽き〜中細挽き) |
| 湯 | 160mL |
01
ネルにコーヒー粉を入れ、中心部を少しくぼませ、1湯目の際に湯が全体に行き渡りやすいようにする。
02
少量の湯を粉全体に行き渡るように、静かに注ぎ20秒ほど蒸らす。穴に向けて垂直に注ぐ。
03
ペーパードリップ時と同様に「の」の字を描きながら、ゆっくりと注湯していく。
04
表面にできた泡の山が沈む前に、次の湯を注ぐ。その際にネルに湯をかけないように。
05
2分半〜3分で終わらせるよう、5〜6回に分けて注ぐ。
⭐ ペーパードリップとの違いは「回数」である。 ペーパードリップは蒸らし+3回(20→80→40→20mL)なのに対し、
ネルドリップは5〜6回に分けて注ぐ(→
ペーパードリップ)。
そして「泡の山が沈む前に次を注ぐ」という、見た目でタイミングを取る指示が入る。
抽出時間は2分半〜3分——これは
SCAAのプアオーバー指針の「2分30秒〜3分」とちょうど同じである(→
抽出ページ 09章)。
粉の中心をくぼませる、という工程がある。 ペーパードリップでは「粉の表面を平らに整える」のに対し、ネルドリップは「中心部を少しくぼませる」。理由は「1湯目の際に湯が全体に行き渡りやすいように」とAJCAが明記している。
04
使ったあとは、水に浸して冷蔵庫へ
SOURCE: 全日本コーヒー協会「ネルドリップ式」
Primary source quote
抽出を終えたネル袋は、洗剤を使わずによく水洗いし、袋全体を水に浸して冷蔵庫で保管します。これは、布に付着しているコーヒーの脂肪分が空気に触れて酸化し嫌な臭いがネルに付くのを防ぐためです。
全日本コーヒー協会「ネルドリップ式」より。ここは珍しく、理由まで書かれている。
⭐ 保管方法の理由が「酸化を防ぐため」である点は、当サイトの他のページとつながる。 コーヒーの油分が空気に触れて酸化する——これは
コーヒー豆の保存方法で扱っている、
豆そのものの劣化の話とまったく同じ仕組みである。
豆でも、布に残った油分でも、酸化は同じように進むということになる。
洗剤を使わない、というのも明記されている。 「洗剤を使わずによく水洗いし」——布に洗剤が残ることを避ける趣旨と読めるが、AJCAはそこまでは書いていない。
05
今後追加すべき項目
- 新品を煮沸する理由 — 02節。「少量のコーヒー粉を入れた湯で20分以上」という指定の根拠が書かれていない。
- 挽き方の食い違い — 手順のページは「細挽き〜中細挽き」だが、器具×挽き方の対応表では中挽き・粗挽きに印がついている(→いろいろな抽出器具 02)。AJCA内で一致していない。
- 布フィルターが味に与える影響 — 「舌触りの滑らかなコクのある味わい」という表現の根拠になる測定データは未確認。紙・布・金属のフィルターの違いを扱った7団体の資料を探したい。
- ネルの寿命・交換の目安 — AJCAの資料に記述が無い。
- ネルドリップの歴史 — 「古くから普及している」とあるが、いつからかは書かれていない。
- 全日本コーヒー協会(AJCA)「ネルドリップ式」(coffee.ajca.or.jp/知る・楽しむ、2026年8月20日取得)— 材料・準備(20分以上の煮沸)・手順5工程・保管方法とその理由
- 全日本コーヒー協会(AJCA)「いろいろな器具」(同上)— フランネル、繰り返し使える、舌触りの滑らかなコクのある味わい
- 全日本コーヒー協会(AJCA)「挽き方と分量」(同上)— 器具×挽き方の対応表(05節の食い違い)