HACHIMARU COFFEE ROASTERY
用語集 / Sensory Lexicon

甘味Sweet

ショ糖に代表される基本的な味の要素。

カテゴリ:Taste Basics(基本の味)
01

属性データ

SOURCE: WCR SENSORY LEXICON v2.0
属性名
甘味Sweet
カテゴリ分類
Taste Basics(基本の味)
レファレンス(参照物質)
1.0%ショ糖溶液
強度スコア
フレーバー:1.0(0〜15点スケール)

WCRの0〜15点強度スケール上での位置(このレファレンスのフレーバー強度=1.0)

0
なし
4
識別できるが弱い
8
中度に強い
12
非常に強い
15
極端に強い
1.0
基本の味(Taste Basics)カテゴリについて。 Sweetは、Sour(酸味)・Bitter(苦味)・Salty(塩味)と並ぶ「Taste Basics」カテゴリの1つ。他のカテゴリ(Fruity、Floralなど)がアロマ(香り)を主とするのに対し、Taste Basicsは舌で感じる基本味そのものを扱う点が異なる。
翻訳についての注記。 この定義文はWCR Sensory Lexicon(英語原文、Version 2.0・2017年)から当サイトが翻訳したものであり、WCR公式の日本語訳ではありません。属性ごとの公式日本語訳は、現時点で入手できた資料の中には含まれていませんでした。
02

甘さは「嗅げる」のか

SOURCE: SCA「Coffee Decoded」コラム(Peter Giuliano)

レキシコン上の「甘味」はTaste Basics(基本の味)に分類される、舌で感じる味である。ところがコーヒーの世界では「甘い香り(sweet aromatics)」という言い方が古くから使われてきた。甘さは味なのか、においなのか——SCAはこれを長年の論争として紹介し、決着のついた研究を挙げている。

かつては「感覚の取り違え」とされていた。 五感はきれいに分かれていて混ざらない、というのが数十年にわたる正統的な見方だった。SCAはその立場を「甘さを『嗅ぐ』と言うのは、黄色を『聞く』とか音楽を『見る』と言うのと同じ種類の誤りだ」と表現している。
⭐ ところが感覚は混ざることが実験で示された。 オックスフォード大学のCharles Spenceらの研究を皮切りに、認知科学は感覚をまたぐ現象——ブーバ・キキ効果(とがった形は「キキ」、丸い形は「ブーバ」と結びつけられる)やマガーク効果——を記録していった。2013年、この分野に「クロスモーダリズム(Crossmodalism)」という名前が付いた。SCAは、やわらかい色や形は甘さを、とがった形は酸味の知覚を高めやすいという研究の広がりにも触れている。
Primary source quote
早い段階の結果は明確だった——コーヒーの甘さは実在し、それは味としても、においとしても知覚される。
SCA「Coffee Decoded: Can We Smell Sweetness?」より(当サイトによる訳)。2022年、Coffee Science Foundation(SCAの研究助成組織)がオハイオ州立大学の研究者と組んで設計した一連の実験の結果。SCAは研究が複雑で現在も継続中であるとしたうえで、この結論を示している。

理由についてSCAはこう説明する——キャラメル・バニラ・果実のにおいは、多くの食品で砂糖の甘さと結びついているため、脳がそれらの香りと「甘い」という感覚を強く結びつける。そしてそれらの香りはすべてコーヒーにも存在しうる。だから「甘い香りがする」と言うカッパーは正しかったことになる。同じ研究チームはその現象を生む化学物質の特定にも進んでいるとSCAは述べている。

⚠️ さらに意外な点:SCAは「コーヒーの甘さは豆の糖分に由来しない」という研究発表を紹介している。 SCAのページは、この研究の講演を「直感に反することに、コーヒーの甘さは豆の中の糖から来るのではないことを確認した研究。もし糖が甘さの原因でないなら、高品質なコーヒーの甘さの理由は何なのか——専門家と官能科学者のあいだで謎になっている」と紹介している。当サイトはこの講演そのものを視聴しておらず、SCAによる紹介文の範囲でのみ記載する。
当サイトの他ページとの関係。 CVAの記述的評価では、「Sweet」がFragrance/Aroma(香り)とFlavor(風味)の両方の欄に記述子として現れる——SCAはこの点を、甘さが味と香りの両方で扱われている実例として挙げている。レキシコン上の分類(Taste Basics=味)と、CVAでの扱い(香りの記述子でもある)が食い違って見えるのは、この論争がそのまま資料に残っているためと読める。
03

同じカテゴリ(Taste Basics)の用語

Taste Basics(基本の味)はこの4属性で全部である(2026-08-15、当サイトで全件そろった)。参照はいずれも単一の化学物質の水溶液で、甘味=ショ糖、酸味=クエン酸、苦味=カフェイン、塩味=塩化ナトリウム。うま味(Umami)はWCRのレキシコンには無くCVA(SCA-103)の基本味には含まれている——この違いも標準ごとの設計の違いである。

  1. SCA「Coffee Decoded: Can We Smell Sweetness?」(Peter Giuliano, SCA Senior Advisor for Scientific Communication)— 甘さは味か香りかの論争、クロスモーダリズム(2013年命名)、Coffee Science Foundation×オハイオ州立大学の2022年からの研究、CVAでのSweetの扱い、糖分由来ではないとする研究紹介
  2. World Coffee Research「Sensory Lexicon Unabridged Definition and References」Version 2.0(2017年)