焙煎 / Caffeine
カフェイン量は
焙煎で変わるかCaffeine
当サイト苦味のページで見たとおり、カフェインはコーヒー飲料の苦味に対する寄与は最大でも10〜30%にとどまる。では、そのカフェインの量自体は焙煎でどう変わるのか。答えは「比較的安定しているが、単純ではない」——2026年の系統的文献レビューとグエルフ大学の博士論文から、種による違いと焙煎の影響を整理する。
- アラビカ生豆
- 平均22.15±15.22 mg/g
- ロブスタ生豆
- 平均45.58±22.14 mg/g
- ロブスタ/アラビカ比
- 約2倍
- 焙煎中の安定性
- 比較的安定
01
カフェインは、焙煎の熱に対して「比較的安定」
SOURCE: Nurhaliza et al. 2026(Trends in Sciences)2026年に発表された系統的文献レビュー(タイ・ワライラック大学)は、クロロゲン酸・トリゴネリン・カフェインという3つの主要成分の焙煎・抽出過程での変化を横並びで比較している。その結論の1つが、カフェインの相対的な安定性である。
⭐ 「同じ熱を受けても、成分によって壊れ方がまったく違う」。 同レビューはカフェインが他の成分(クロロゲン酸・トリゴネリン)と比べて「より安定していた」と位置づけている。当サイトトリゴネリンのページで見た「焙煎でアラビカは80〜94%減少」という激しい分解に比べると、カフェインの変化は穏やかであるという対比になる。
02
ロブスタは、アラビカのおよそ2倍
SOURCE: Nurhaliza et al. 2026同レビューが示す生豆でのカフェイン含有量は、種によって明確な差がある。
| コーヒー種 | カフェイン含有量(生豆) |
|---|---|
| アラビカ | 平均 22.15 ± 15.22 mg/g |
| ロブスタ | 平均 45.58 ± 22.14 mg/g(アラビカの約2倍) |
この差は、焙煎の産物ではなく生豆の時点で既にある。 「ロブスタはカフェインが多い」という通説は、コーヒー業界でよく語られる話だが、当サイトはこれまで未確認としていた(→当サイトカフェインレスコーヒーのページの宿題)。この数値によって、通説が生豆の分析データで裏づけられたことになる。
03
ロブスタは「差が大きい」——アラビカはほぼ均一
SOURCE: Wang(2014)博士論文グエルフ大学の博士論文は、平均値だけでなく「ばらつき」の違いにも触れている。
Primary source quote
アラビカ種は高度に同型接合的(homozygotic)であり、ほとんどの栽培品種でカフェイン含有量が非常に類似していると報告されている一方、カネフォラ種(いわゆるロブスタ)のコーヒーは、より大きなカフェイン含有量のばらつきを持つ。
⭐ 02章の「±」の数値が、まさにこれを表している。 アラビカの22.15 ± 15.22とロブスタの45.58 ± 22.14を比べると、平均値の差以上に標準偏差(ばらつき)そのものもロブスタのほうが大きい——遺伝的な均一性の違いが、含有量のばらつきにそのまま表れている可能性がある。
04
カフェインは、クロロゲン酸と結びついて存在している
SOURCE: Wang(2014)博士論文当サイト苦味のページで紹介したGigl ほか(2026)の研究は、カフェインがコーヒー飲料の高分子画分(メラノイジンを含む)とπ–π相互作用で結びつき、苦味が半分に抑えられることを示していた。グエルフ大学の博士論文は、それより手前の段階——生豆の中での結合にも触れている。
Primary source quote
多くのコーヒー種において、カフェインとクロロゲン酸含有量のあいだに正の相関が存在することが研究者らによって示されており、これはカフェイン-クロロゲン酸複合体の存在に関係していると考えられる。カフェイン分子の平面がカフェオイルエステル基の芳香環の平面と平行になっていると提案されている。
⭐ 「生豆でも、焙煎後の飲料でも、カフェインは1人で存在していない」。 04章の生豆での複合体(カフェイン-クロロゲン酸)と、苦味ページで見た焙煎後の複合体(カフェイン-メラノイジン)は別の相手・別の段階の結合だが、「カフェインは常に他の分子と結びついた状態でコーヒーの中にある」という共通点がある。この対比は当サイトによる整理であり、いずれの原典も両者を同一の現象として扱ってはいない。
05
今後追加すべき項目
- 焙煎前後の重量あたりカフェイン量の具体的な変化率 — 01章は「比較的安定」という定性的な表現にとどまり、焙煎前後で重量比が何%変わるかという具体的な数値は今回確認できていない(豆全体の16%の重量減少との関係も未整理。→焙煎とはのページ08章)。
- 抽出後の1杯あたりカフェイン量との関係 — 生豆・焙煎豆での含有量の議論と、実際に飲用時に抽出される量の関係は未着手。
- カフェイン-クロロゲン酸複合体の詳細な化学 — 04章で紹介した複合体の存在は確認できたが、その結合力や、焙煎でクロロゲン酸が分解した後にこの複合体がどうなるかは未確認。
- 日本食品標準成分表との突き合わせ — 当サイトカフェインレスコーヒーのページの宿題にも記載のとおり、国内の公的データとの照合は未実施。
- Nurhaliza, N., Herawati, D., Andarwulan, N.「The Dynamic Changes of Chlorogenic Acids and Alkaloids in Coffee Processing and Brewing: A Systematic Literature Review」Trends in Sciences 23(9)(2026年、DOI: 10.48048/tis.2026.13444) — アラビカ・ロブスタのカフェイン含有量、焙煎・抽出でのカフェインの相対的安定性。オープンアクセス誌(Walailak University)。当サイトはWebFetch経由で本文内容を確認(2026年8月25日取得)
- Wang, X.「Understanding the Formation of CO2 and Its Degassing Behaviours in Coffee」University of Guelph 博士論文(2014年)Section 1.1.3 — アラビカ・ロブスタのカフェイン含有量のばらつきの違い、カフェイン-クロロゲン酸複合体。University of Guelph Atrium でオープンアクセス版の本文を確認(2026年8月25日取得)
- Gigl, M. ほか(2026)J Agric Food Chem 74(23) — カフェインとメラノイジンのπ–π相互作用(当サイト苦味ページで既出)