カフェインレスコーヒーDecaffeinated Coffee / デカフェ
日本で「カフェインレス」と表示できるのは、カフェインを90%以上除去したコーヒーだけ——これは公正取引委員会・消費者庁が認定した表示ルールで決まっている。ではどうやって抜くのか。抜くのは焙煎する前の「生豆」の段階で、水を使う方法、二酸化炭素を使う方法、そして法令が残留基準つきで認めている溶剤を使う方法がある。
- 「カフェインレス」の条件
- カフェインを90%以上除去
- 抜く段階
- 焙煎前の生豆
- コーヒーのカフェイン
- 60mg/100ml
- (参考)玉露
- 160mg/100ml
「カフェインレス」と名乗れる条件
SOURCE: 公正競争規約施行規則抜くのは、焙煎する前の生豆
SOURCE: 全日本コーヒー協会(AJCA)つまりコーヒーができるまでの流れのなかでは、脱穀で生豆になったあと、焙煎に入る前に行われる工程ということになる(→コーヒーができるまで)。AJCAが挙げている方法は2つ。
| 方法 | AJCAの説明 |
|---|---|
| 水抽出法 みずちゅうしゅつほう | 一般的な製法。コーヒーの生豆を水に浸し、溶け出たカフェインを特殊フィルターなどで除去する。ただし、香りや味成分も抜けがちになる。 |
| 超臨界二酸化炭素抽出法 | 二酸化炭素を使用してカフェインを除去する。豆に負担をかけずにカフェインだけを狙って取り除くため、おいしさはそのまま。香りや味の成分を逃しにくい。 |
⭐ EUの法令は、使ってよい溶剤を名指しで決めている
SOURCE: 欧州指令 2009/32/EC「抽出溶剤」に関するEUの指令(Directive 2009/32/EC)は、附属書Iで食品の製造に使ってよい溶剤を列挙し、そのうちいくつかについては用途と残留基準を個別に定めている。そこに「コーヒーと茶の脱カフェイン」という用途が名指しで出てくる。
| 区分 | 溶剤 | コーヒー脱カフェイン時の残留基準 |
|---|---|---|
| Part I 適正製造規範(GMP)に従えば全用途で使用可。数値基準の定めなし | 二酸化炭素(Carbon dioxide) | 数値の定めなし |
| 酢酸エチル(Ethyl acetate) | ||
| エタノール/プロパン/ブタン/アセトン/亜酸化窒素 | ||
| Part II 用途が指定され、残留基準が個別に定められている | ジクロロメタン(Dichloromethane) | 焙煎したコーヒーで2mg/kg(茶は5mg/kg) |
| 酢酸メチル(Methyl acetate) | コーヒーまたは茶で20mg/kg | |
| エチルメチルケトン(Ethylmethylketone=ブタノン) | コーヒーまたは茶で20mg/kg |
日本の食品衛生法では、どうなっているか
SOURCE: 食品衛生法[7]/食品添加物公定書「F 使用基準」[8]/指定添加物リスト[9]/既存添加物名簿[10]日本には、EUの指令のように「脱カフェインに使ってよい溶剤」を並べた規定は見当たらなかった。そのかわり、食品を作る途中で使う物はすべて「添加物」として扱う仕組みになっている。食品衛生法は、添加物を「食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によつて使用する物」と定め(第4条)、国が認めたもの以外は製造・輸入・使用などをしてはならないとしている(第12条)[7]。そこで、03節の溶剤を日本の一覧と照らし合わせた。
| 溶剤 | 日本の一覧での扱い |
|---|---|
| 二酸化炭素 | 指定添加物(294番「二酸化炭素(別名炭酸ガス)」)[9] |
| 酢酸エチル | 指定添加物だが、使用基準で「着香の目的以外に使用してはならない」。例外はアルコールの変性、酵母エキスの製造、酢酸ビニル樹脂の溶剤などで、脱カフェインは例外に入っていない[8] |
| アセトン | 指定添加物だが、使用基準で「ガラナ飲料を製造する際のガラナ豆の成分を抽出する目的及び油脂の成分を分別する目的以外に使用してはならない」。使ったアセトンは最終食品の完成前に除去する[8] |
| ジクロロメタン | 指定添加物リストにも既存添加物名簿にも載っていない[9][10] |
そもそも、どれくらい入っているのか
SOURCE: 内閣府 食品安全委員会 ファクトシート「食品中のカフェイン」日本の食品安全委員会が公表しているファクトシートに、飲み物ごとのカフェイン濃度の一覧がある。浸出方法(何gを何mlで淹れたか)まで併記されているのが、この資料の要点である。
いずれも100mlあたり。浸出方法:コーヒー=粉末10g/熱湯150ml、インスタント=2g/熱湯140ml、玉露=茶葉10g/60℃の湯60ml・2.5分、紅茶=茶5g/熱湯360ml・1.5〜4分、せん茶=茶10g/90℃430ml・1分、ウーロン茶=茶15g/90℃の湯650ml・0.5分(食品安全委員会)。デカフェの「6mg未満」はAJCAの記述で、これは01の「90%以上除去」から導かれる数字である。
当サイトが書かないこと
SOURCE: 同ファクトシートデカフェを選ぶ理由は健康や体質にかかわることが多いが、当サイトはコーヒーの資料集であって、健康に関する助言をする立場にない。ここでは公的な資料の所在と、その資料が「何を決めていないか」だけを記す。
今後追加すべき項目
- 日本での溶剤の扱い — 一部解消(2026年9月23日)。日本の添加物の一覧での扱いは04節で確認した。輸入されたデカフェ豆に海外で使われた溶剤が、日本の規定でどう扱われるかを示した行政の資料は未確認。
- 各方法の具体的な条件 — 温度・圧力・時間・繰り返し回数など。超臨界二酸化炭素法の「超臨界」がどの条件を指すのかも、AJCAの資料には書かれていない。
- 「スイスウォータープロセス」等の名称 — 店頭でよく見る呼び名だが、AJCAの資料にも規約にも出てこない。特定企業の商標である可能性を含め、一次資料での確認が必要。カーボニックマセレーションのページと同じく、「業界で通用しているが公的な定義がない言葉」として扱うべきかを判断する。
- カフェイン量の実測 — 05節はファクトシートの表による。2026年8月25日追記:「ロブスタはアラビカのおよそ2倍」という通説は、2026年の系統的文献レビュー(アラビカ平均22.15±15.22 mg/g・ロブスタ平均45.58±22.14 mg/g)で裏づけが取れた。→カフェイン量は焙煎で変わるかのページ。ただし焙煎度による変化率の具体的な数値は引き続き未確認(→コーヒーの「種」とは)。
- 抜いたカフェインの行方 — 食品安全委員会のファクトシートは「コーヒーや茶葉から抽出されたカフェイン(抽出物)については、清涼飲料水(コーラ等)などに苦味料等の用途で食品添加物として使用されています」と記している。脱カフェインで取り除かれたカフェインがどう流通しているかは、別に調べる価値がある。 2026年9月23日追記:既存添加物名簿の58番「カフェイン(抽出物)」が「コーヒーの種子又はチャの葉から得られた」ものと定義されていることを確認した(04節)。脱カフェインで出たカフェインが実際にこの原料になっているかは未確認。
- デカフェの輸入量の推移 — AJCAは「近年、国内におけるデカフェコーヒーの輸入量は増加傾向」とし、統計資料のページのグラフを示している。数値そのものは当サイトで未取得(→市場・統計コンテキスト)。
- 全日本コーヒー公正取引協議会「レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約 及び 同施行規則」(平成30年5月21日 公正取引委員会・消費者庁認定、告示第6号)— カフェインレスコーヒーの表示。原文PDF(ajcft.org)を2026年8月16日に取得して確認
- 全日本コーヒー協会(AJCA)「カフェインレスコーヒーを知る」(coffee.ajca.or.jp、2026年8月16日取得)— 生豆段階での除去、水抽出法、超臨界二酸化炭素抽出法
- 全日本コーヒー協会(AJCA)「デカフェコーヒーの輸入推移から見える、新たなコーヒー習慣」(coffee.ajca.or.jp、2026年8月16日取得)— 「デカフェ」の語義、公正取引協議会の90%基準、コーヒー約60mg/100ml・デカフェ6mg未満、輸入量の増加傾向。同記事のカフェインの作用・疾病予防に関する記述は引用していない
- 全日本コーヒー協会(日本インスタントコーヒー協会)「インスタントコーヒーQ&A」(instant-coffee.ajca.or.jp、2026年8月16日取得)— 水に浸してから樹脂層・活性炭で吸着する方法、炭酸ガスを用いる方法、溶剤等を一切使用しない方法が確立しているという記述。同Q&Aの健康に関する項目は引用していない
- 欧州連合「Directive 2009/32/EC of the European Parliament and of the Council of 23 April 2009 on the approximation of the laws of the Member States on extraction solvents used in the production of foodstuffs and food ingredients」附属書I Part I・Part II、第2条3項(EUR-Lex CELEX:32009L0032、2026年8月16日取得)
- 内閣府 食品安全委員会「ファクトシート 食品中のカフェイン」(作成 平成23年3月31日、最終更新 平成30年2月23日、fsc.go.jp)— 飲料別カフェイン濃度と浸出方法、ADIが設定されていないこと、抽出カフェインの食品添加物としての用途
- 「食品衛生法」(昭和22年法律第233号)第4条第2項・第12条(e-Gov法令検索、2026年9月23日取得)
- 消費者庁「第10版食品添加物公定書」のうち「F 使用基準」(2026年9月23日取得)— 酢酸エチル・アセトンの項
- 「指定添加物リスト(規則別表第1)」令和6年3月1日改正版(消費者庁の事業者向けページからリンクされている日本食品化学研究振興財団の掲載版、2026年9月23日取得)
- 「既存添加物名簿」(平成8年厚生省告示第120号、令和7年8月25日消費者庁告示第9号による改正まで。日本食品化学研究振興財団の掲載版、2026年9月23日取得)— 58番 カフェイン(抽出物)