01
基本情報
SOURCE: WCR VARIETY CATALOG
- 品種名
- IAPAR 59
- 育成機関
- Instituto Agronômico do Paraná(IAPAR)、ブラジル・パラナ州。品種名の「IAPAR」はこの機関名に由来する
- 選抜方法
- 血統選抜Pedigree selection
- 発表年
- WCRカタログに記載なし。 マルセジェサには「2009年release」の記載があるのに対し、IAPAR 59のエントリには年の記載がない
- 遺伝的系統区分
- 導入系・サルチモール関連Introgressed (Sarchimor related)
- WCRによる要約
- 「中程度の標高に適応した高収量品種。さび病と一部の線虫に耐性がある」
WCRの要約と個別項目の評価に、ずれがある。 上記の通りWCRの要約文はIAPAR 59を「High yielding plant(高収量品種)」と書き出しているが、同じエントリの「収穫量ポテンシャル」欄の評価は
Medium(中程度)である。同じ書き出しを持つ
マルセジェサのほうは収量欄が High で、要約と一致している。
当サイトでは、要約文と個別項目のどちらか一方を採用して辻褄を合わせることはせず、両方をそのまま併記する(出典が自分自身と食い違っている場合は、それ自体を記載するという当サイトの方針による)。
02
詳細スペック
SOURCE: WCR CATALOG, 2026-08-11 取得
評価の目安:
▲ 良好
● 標準
▼ 要注意
— WCRカタログ自身の区分(Low/Medium/High/Exceptional等)をそのまま可視化したもの
- 樹形
- 矮性・コンパクトDwarf/Compact
- 新芽の葉色
- 薄いブロンズLight Bronze
- 豆のサイズ
- 平均的Average●
- 収穫量ポテンシャル
- 中程度Medium●
- 高標高での品質
- 低いLow▼
- 最適標高帯
- 低〜中Low, Medium(北緯5°〜南緯5°:1,000〜1,600m/5〜15°:700〜1,300m/15°超:400〜1,000m)
- さび病(CLR)耐性
- 中程度の耐性Intermediate resistance●
- 線虫耐性
- 耐性ありResistant▲(ただし下記の但し書きあり)
- コーヒーベリー病(CBD)耐性
- 感受性ありSusceptible▼
- 初収穫までの年数
- 3年目
- 必要な栄養レベル
- 高いHigh▼
- 果実の成熟時期
- 平均的Average●
- 生豆歩留まり
- 高いHigh▲
- 推奨植栽密度
- 5,000〜6,000本/ha(単幹剪定の場合)
「線虫に耐性あり」は、線虫の種を選ぶ。 WCRは補足欄で
「Pratylenchus spp.には耐性がない。Meloidogyne exiguaには耐性がある」と明記している。上の表の「耐性あり」は
ネマトーダ全般への耐性ではない。
T5296のほうは線虫欄が「不明」で、補足に「
Pratylenchus spp.には耐性なし、
Meloidogyne exiguaには耐性の程度にばらつきがある可能性」とある——
ばらつきのあった集団から、IAPARがM. exigua耐性の系統を固定したという読み方ができるが、その選抜過程自体はWCRカタログには書かれていないため、当サイトとしては推測の域を出ないことを明記しておく。
03
同じ交配、違う結果——マルセジェサとの比較
SOURCE: WCR VARIETY CATALOG(両品種のエントリ)
IAPAR 59とマルセジェサは、WCRのLineage欄に記されている交配がどちらも「ティモール・ハイブリッド 832/2 × ビジャサルチ」である。同じ交配から出発しながら、育種した国も機関も違い、評価も一致しない。T5296のページで扱った「サルチモールは品種名ではなく群の名前」という注意が、具体的な数字として現れている箇所である。
サルチモール系3エントリの比較。いずれもWCR Variety Catalogの各エントリ(2026年8月11日取得)より。
| 項目 | IAPAR 59 | マルセジェサ | T5296 |
| 育成機関 | IAPAR(ブラジル) | CIRAD-ECOM | —(記載なし) |
| 選抜地 | ブラジル | ニカラグア | コスタリカ(CATIE) |
| 新芽の葉色 | 薄いブロンズ | 緑 | 緑 |
| 豆のサイズ | 平均的 | 平均的 | 大きい |
| 収穫量ポテンシャル | 中程度 | 高い | 中程度 |
| 高標高での品質 | 低い | 良い | 良い |
| さび病耐性 | 中程度 | 中程度 | 中程度 |
| 線虫耐性 | 耐性あり(種による) | 感受性あり | 不明 |
| CBD耐性 | 感受性あり | 耐性あり | 耐性あり |
樹形・最適標高帯・初収穫年・必要栄養レベル・成熟時期・生豆歩留まり・植栽密度は3つとも同一の評価である。IAPAR 59に固有なのは「線虫耐性を得た代わりに、CBD耐性と高標高での品質を失っている」という組み合わせで、ブラジルという産地——線虫被害が問題になり、かつCBDが存在せず、標高もそれほど高くない——に合わせた選抜として筋が通っている。ただしこの解釈自体はWCRカタログに書かれているものではない。
04
今後追加すべき項目
- IAPAR自身の一次資料 — 本ページの内容はすべてWCRカタログ経由。IAPAR(現・パラナ州農業研究所IDR-Paraná)自身の品種公表資料は未取得。発表年もそこで確認できる可能性がある。
- ブラジルでの作付け実績 — ブラジルのページにIAPAR 59の作付け面積・比率のデータはまだない。
- オバタ(赤)・トゥピとの関係 — T5296のページの通り、ブラジルでは同じT5296からオバタ(赤)・トゥピも選抜されている。3品種の使い分けは未調査。
- カップ品質の実測 — 「高標高での品質:低い」はWCRの区分によるもので、具体的なスコアや評価方法の記載はない。
- World Coffee Research, Variety Catalog「IAPAR 59」(varieties.worldcoffeeresearch.org/varieties/iapar-59、2026年8月11日取得)
- World Coffee Research, Variety Catalog「Marsellesa」「T5296」(同日取得、03章の比較表)