01
基本情報
SOURCE: WCR VARIETY CATALOG
- 品種名
- マルセジェサMarsellesa
- 系統・成り立ち
- ティモール・ハイブリッド 832/2 × ビジャサルチ CIFC 971/10Timor Hybrid 832/2 x Villa Sarchi CIFC 971/10
- 育成機関
- CIRAD-ECOM(フランスの国際農業研究機関CIRADと、コーヒー商社ECOMの共同)
- 選抜地
- ニカラグア。さび病耐性という形質を目的に血統選抜が行われたとWCRが明記
- 発表年
- 2009年
- 遺伝的系統区分
- 導入系・サルチモール関連Introgressed (Sarchimor related)
- WCRによる要約
- 「中程度の標高に適応した高収量品種。カップの酸が際立って高い」
民間企業が関与した耐病性品種。 当サイトのサルチモール系のうち、
T5296は各国の公的育種プログラムに配られた集団、
IAPAR 59はブラジルの州立研究機関IAPARの選抜である。これに対しマルセジェサは、公的研究機関CIRADと
コーヒー商社ECOMの共同という成り立ちを持つ。ロブスタ側では
Roubi 6(Nestlé Research育成)が同様に民間育種の例にあたる。
02
詳細スペック
SOURCE: WCR CATALOG, 2026-08-11 取得
評価の目安:
▲ 良好
● 標準
▼ 要注意
— WCRカタログ自身の区分(Low/Medium/High/Exceptional等)をそのまま可視化したもの
- 樹形
- 矮性・コンパクトDwarf/Compact
- 新芽の葉色
- 緑Green
- 豆のサイズ
- 平均的Average●
- 収穫量ポテンシャル
- 高いHigh▲
- 高標高での品質
- 良いGood●
- 最適標高帯
- 低〜中Low, Medium(北緯5°〜南緯5°:1,000〜1,600m/5〜15°:700〜1,300m/15°超:400〜1,000m)
- さび病(CLR)耐性
- 中程度の耐性Intermediate resistance●
- 線虫耐性
- 感受性ありSusceptible▼
- コーヒーベリー病(CBD)耐性
- 耐性ありTolerant●
- 初収穫までの年数
- 3年目
- 必要な栄養レベル
- 高いHigh▼
- 果実の成熟時期
- 平均的Average●
- 生豆歩留まり
- 高いHigh▲
- 推奨植栽密度
- 5,000〜6,000本/ha(単幹剪定の場合)
WCRの国際多地点品種試験(IMLVT)で評価された品種である。 WCRはマルセジェサの補足欄に「この品種の収量とさび病耐性は、WCRのInternational Multilocation Variety Trialの一環として
15か国23地点で世界的に評価された」と記している。同時に「
さび病のどのレース(系統)が存在する環境かによって、現地での実際の性能は変わりうる」という注意も添えられている。当サイトの
ルワンダのページで触れているIMLVTと同じ試験である。
03
同じ交配、違う結果——IAPAR 59との比較
SOURCE: WCR VARIETY CATALOG(両品種のエントリ)
マルセジェサとIAPAR 59は、WCRのLineage欄に記されている交配がどちらも「ティモール・ハイブリッド 832/2 × ビジャサルチ」である。にもかかわらず、育種した国も機関も違い、WCRのスペック評価も一致しない。T5296のページで扱った「サルチモールは品種名ではなく群の名前」という注意が、具体的な数字として現れている箇所である。
サルチモール系3エントリの比較。いずれもWCR Variety Catalogの各エントリ(2026年8月11日取得)より。
| 項目 | マルセジェサ | IAPAR 59 | T5296 |
| 育成機関 | CIRAD-ECOM | IAPAR(ブラジル) | —(記載なし) |
| 選抜地 | ニカラグア | ブラジル | コスタリカ(CATIE) |
| 新芽の葉色 | 緑 | 薄いブロンズ | 緑 |
| 豆のサイズ | 平均的 | 平均的 | 大きい |
| 収穫量ポテンシャル | 高い | 中程度 | 中程度 |
| 高標高での品質 | 良い | 低い | 良い |
| さび病耐性 | 中程度 | 中程度 | 中程度 |
| 線虫耐性 | 感受性あり | 耐性あり(種による) | 不明 |
| CBD耐性 | 耐性あり | 感受性あり | 耐性あり |
樹形・最適標高帯・初収穫年・必要栄養レベル・成熟時期・生豆歩留まり・植栽密度は3つとも同一の評価である。違いが出ているのは葉色・収量・高標高での品質・線虫・CBDの5項目で、とくに高標高での品質はマルセジェサ「良い」に対しIAPAR 59「低い」と、2段階の差がついている。同じ交配から出発しても、どの国のどの環境で、何を基準に世代選抜したかで到達点が変わることを示している。
04
今後追加すべき項目
- 「カップの酸が際立って高い」の裏づけ — WCRの要約文にある記述だが、カタログ内に官能評価の数値・方法の記載はない。第三者による評価は未確認。
- ニカラグアでの作付け実績 — ニカラグアのページには現時点でマルセジェサの作付け比率・COE入賞実例のデータがない。
- CIRAD-ECOM側の一次資料 — 本ページの経緯はすべてWCRカタログ経由。CIRADまたはECOM自身の公表資料は未取得。
- ビジャサルチ CIFC 971/10 という系統番号 — IAPAR 59のLineage欄は単に「Villa Sarchi」で、番号の記載がない。同じ系統かどうかはWCRカタログからは判断できない。
- World Coffee Research, Variety Catalog「Marsellesa」(varieties.worldcoffeeresearch.org/varieties/marsellesa、2026年8月11日取得)
- World Coffee Research, Variety Catalog「IAPAR 59」「T5296」(同日取得、03章の比較表)