01
公的な定義は「2つの州から、ある地区を引いたもの」
SOURCE: 公正競争規約施行規則 別表2
Primary source quote
マンデリン:インドネシアの北スマトラ州及びアチェ州(タケンゴン周辺のガヨマウンテン生産地区を除く)にて生産されたアラビカコーヒー豆をいう。
「レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約」施行規則 別表2「産地、品種、銘柄の区分及び範囲の例示」13) より。同じ別表2の12) は「ガヨマウンテン:インドネシアのスマトラ島タケンゴン地区にて生産されたアラビカコーヒー豆をいう」と定めている。
⭐ 除外は「重ならないようにするため」である。 別表2でマンデリンから外されている
タケンゴン周辺のガヨマウンテン生産地区は、
その直前の12) でガヨマウンテンとして別の銘柄名になっている場所である。つまり
狭いほうの銘柄が先にあり、広いほうの銘柄がその残りを指すという構造で、
キリマンジャロ(ブコバ地区を除く)や
ジャマイカ(ブルーマウンテン・ハイマウンテン以外)と同じ書き方である。
別表2の14銘柄のうち、除外規定を持つのはこの3つだけ。
州の単位で定義された唯一の銘柄名である。 別表2の他の銘柄は
地区(ブルーマウンテン、グアテマラアンテイグア、モカハラー、ハワイコナ等)か
国(モカマタリ、キリマンジャロ、ジャマイカ)か
輸出規格(クリスタルマウンテン、コロンビアスプレモ)で定義されている。
「州」という行政単位を使っているのはマンデリンだけである(→
銘柄名ページ 03の粒度の表)。
02
インドネシアだけが4つの銘柄名を持っている
SOURCE: 公正競争規約施行規則 別表2 / WCR国別ページ
別表2の14銘柄を国別に見ると、インドネシアから4つ(マンデリン・ガヨマウンテン・トラジャ・カロシ)が挙がっている。1か国から4銘柄が定義されているのはインドネシアだけで、次に多いジャマイカでも3つ(ブルーマウンテン・ハイマウンテン・ジャマイカ)である。
| 銘柄名 | 別表2の範囲 | 島 |
| マンデリン | 北スマトラ州及びアチェ州(タケンゴン周辺のガヨマウンテン生産地区を除く) | スマトラ島 |
| ガヨマウンテン | スマトラ島タケンゴン地区 | スマトラ島 |
| トラジャ | スラウェシ島トラジャ地区 | スラウェシ島 |
| カロシ | スラウェシ島カロシ地区 | スラウェシ島 |
⭐ ガヨはインドネシア側でも地理的表示(GI)で守られている。 WCRのインドネシア国別ページは、アラビカ種の主要産地として
地理的表示(GI)保護を受ける「スマトラ」「ガヨ(Gayo、アチェ州の高地)」を挙げている(→
インドネシア産地ページ)。
日本の別表2がガヨマウンテンを独立した銘柄名として切り出していることと、方向は一致している——ただし
両者が制度として関係しているという記述は、どちらの資料にもない。当サイトは並べて示すにとどめる。
インドネシアのアラビカは全体の2割にすぎない。 WCRによればロブスタ種が国内生産量の80%を占め、残りのアラビカ種は多くがスペシャルティ品質として高値で取引される。別表2に並ぶ4銘柄はいずれもアラビカ限定なので、インドネシアのコーヒーの大部分は、これらの銘柄名では流通していないことになる。
03
「マンデリンらしさ」と精製方法の関係(未確認)
当サイトが確認できた範囲
マンデリンの風味を語るとき、スマトラ特有の精製方法ギリンバサ(Giling Basah、湿式挽き)と結びつけて説明されることが多い。当サイトのインドネシア産地ページでもこの方法を紹介しているが、重要な留保がついている。
ギリンバサは一次資料での裏づけが取れていない。 当サイトが基準とする
7団体(WCR/SCA/CQI/ACE/ICO/AJCA/SCAJ)のいずれからも、ギリンバサに関する一次資料をまだ見つけられていない。
通常のウォッシュドが水分値10%程度まで乾燥させてから脱穀するのに対し、ギリンバサは水分値30〜40%の段階で脱穀し、その後生豆の状態で仕上げ乾燥を行う——という説明は業界内で広く一致しているが、当サイトは
業界内の慣用知識として扱っている。
したがって「マンデリン=ギリンバサ由来の風味」という説明も、当サイトでは裏づけのある記述として書けない。
そもそも別表2は風味に一切触れていない。 定義は
産地の範囲だけである。
「マンデリンは深煎り向き」「重厚なコク」といった説明は、規約の定義とは無関係であり、個々のコーヒーの評価は
CVAのようなロット単位の仕組みで行われる(→
銘柄名は「品質の順位」ではない)。
04
「マンデリン」と名乗れる条件
SOURCE: 公正競争規約施行規則 第3条(1)
| 表示 | 条件 |
| 「マンデリン」 | その銘柄100%。他の生豆を使ってはならない。 |
| 「マンデリンブレンド」 | マンデリンが30パーセント以上。残りの構成は原材料名欄の生豆生産国名(ブレンド比率の多い順)で確認できる。 |
なおマンデリンとガヨマウンテンは別表2上で明確に分けられているため、タケンゴン周辺のガヨマウンテン生産地区の豆を「マンデリン」として表示することはできない。逆もまた同じである。
05
今後追加すべき項目
- 「マンデリン」という名前の由来 — スマトラ島の民族名に由来するという説明が広く知られているが、7団体の資料でもインドネシアの公的資料でも確認できていない。
- ギリンバサの一次資料 — 03節のとおり未確認。ICOやCQIの精製方法教材での裏づけを引き続き探す。
- ガヨGIの登録詳細 — 2026年8月27日、DGIP登録簿でKopi Arabika Gayo(IG.00.2009.000003)の登録自体は確認できたが、個別の登録証明書本文(詳細な境界等)は未確認。→トラジャ・カロシ・ガヨマウンテンのページで開示。
- 全日本コーヒー公正取引協議会「レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約 及び 同施行規則」(平成30年5月21日 公正取引委員会・消費者庁認定、告示第6号)— 別表2 12) ガヨマウンテン・13) マンデリンほか、施行規則 第3条(1)
- World Coffee Research「Indonesia」国別ページ — 種の構成(ロブスタ80%)、地理的表示保護を受けるスマトラ・ガヨ。当サイトのインドネシア産地ページで確認済み
- 全日本コーヒー協会(AJCA)「情報ラベル(一括表示)の見方」— 原材料名欄の生豆生産国名がブレンド比率の多い順に並ぶこと