01
基本情報
SOURCE: WCR VARIETY CATALOG
- 品種名
- ムンド・マヤMundo Maya(カタログ上の識別記号:EC16)
- 系統・成り立ち
- T5296 × 野生のエチオピア収集系統「ET01」(CATIEコレクション)T5296 x wild Ethiopian accession "ET01" (CATIE collection)
- エチオピア側の親の由来
- コスタリカのCATIE(熱帯農業研究高等教育センター)のコーヒー収集品にある在来種で、もとはORSTOM/IRDの収集ミッションがエチオピアで採集したものとWCRは記す
- 育成機関
- CIRAD-ECOM(フランスの国際農業研究機関CIRADと、コーヒー商社ECOMの共同)
- 選抜地
- ニカラグア。「ムンド・マヤの選抜はECOM-CIRADがニカラグアで行った」とWCRが明記
- 遺伝的系統区分
- F1ハイブリッド(導入系)F1 hybrid (introgressed)
- WCRによる要約
- 「健全な土壌に植えれば非常に高収量で、標高1,300m超では非常に良い品質。アグロフォレストリー(樹陰栽培)条件によく適応する」
ニカラグアで選抜されたCIRAD-ECOMの品種は、当サイトにもう1つある。 サルチモール系の
マルセジェサである。育成機関の組み合わせも選抜地も同じだが、
マルセジェサは世代を重ねて形質を固定した血統選抜品種、ムンド・マヤは交配第一世代(F1)そのものを植える品種という決定的な違いがある。増やし方も、生産者が買うもの(種子か苗か)も変わる。
02
詳細スペック
SOURCE: WCR CATALOG, 2026-08-12 取得
評価の目安:
▲ 良好
● 標準
▼ 要注意
— WCRカタログ自身の区分(Low/Medium/High/Exceptional等)をそのまま可視化したもの
- 樹形
- 矮性・コンパクトDwarf/Compact
- 新芽の葉色
- ブロンズBronze
- 豆のサイズ
- 大きいLarge▲
- 収穫量ポテンシャル
- 非常に高いVery High▲
- 高標高での品質
- 非常に良いVery Good▲
- 最適標高帯
- 中〜高Medium, High(北緯5°〜南緯5°:1,200m超/5〜15°:900m超/15°超:700m超)
- さび病(CLR)耐性
- 高い耐性Highly resistant▲
- 線虫耐性
- 耐性ありResistant▲(ただし下記の限定あり)
- コーヒーベリー病(CBD)耐性
- 耐性ありTolerant●
- 初収穫までの年数
- 2年目▲
- 必要な栄養レベル
- 高いHigh▼
- 果実の成熟時期
- 平均的Average●
- 生豆歩留まり
- 非常に高いVery High▲
- 推奨植栽密度
- 4,000〜5,000本/ha(単幹剪定の場合)
※最適標高帯は緯度によって読み替える必要がある(赤道に近いほど高い標高が最適になる)。WCRカタログの表記をそのまま記載した。
「線虫耐性あり」には条件がある。 WCRは補足欄で「
この品種はPratylenchus属には耐性がない。一部のMeloidogyne属には耐性がある」と明記している。線虫は
属や種によって加害の仕方が違うため、「耐性あり」の一語で自分の畑の線虫害に効くと判断することはできない。同じ論点は
IAPAR 59のページでも扱っている。
F1ハイブリッド共通の注意:種子で増やしてはいけない。 ハイブリッドの樹から採った種子は親と同じ性質を持たず(
分離/segregation)、収量・耐病性・品質を失う可能性がある。増殖は
接ぎ木などのクローン繁殖に限られる。詳しくは
セントロアメリカーノのページ02章で扱っている。
03
3品種の比較——エチオピア側の親が違うということ
SOURCE: WCR VARIETY CATALOG(3品種の各エントリ)
F1ハイブリッドの設計は「耐病性を持つT5296側 × 遺伝的多様性とカップ品質を持つエチオピア在来種側」という組み合わせで共通している。違いはエチオピア側にどの系統を使ったかと、誰がどこで選抜したかである。
F1ハイブリッド3品種の比較。いずれもWCR Variety Catalogの各エントリ(2026年8月12日取得)より。
| 項目 | セントロアメリカーノ | ミレニオ | ムンド・マヤ |
| カタログ記号 | H1 | H10 | EC16 |
| 交配 | T5296 × ルメ・スーダン | T5296 × ルメ・スーダン | T5296 × ET01(エチオピア在来) |
| 育成機関 | CIRAD-CATIE-ICAFE-IHCAFE-PROCAFE-ANACAFE | 同左 | CIRAD-ECOM |
| 新芽の葉色 | 緑 | 緑 | ブロンズ |
| 最適標高帯 | 低〜中〜高(赤道付近1,000m超) | 中〜高(同1,200m超) | 中〜高(同1,200m超) |
| 線虫耐性 | 感受性あり | 感受性あり | 耐性あり(種による) |
| 必要な栄養レベル | 非常に高い | 不明(記載なし) | 高い |
| 推奨植栽密度 | 3,000〜4,000本/ha | 4,000〜5,000本/ha | 4,000〜5,000本/ha |
| 均一性についての記載 | — | 「品種は均一ではない」と明記 | — |
樹形・豆のサイズ・収量・高標高での品質・さび病耐性・CBD耐性・初収穫年・成熟時期・生豆歩留まりは3品種とも同一評価である。ムンド・マヤに固有なのはブロンズの新芽色と線虫耐性の2点で、いずれもエチオピア側の親がET01であることと無関係ではないと考えられる——ただしWCRカタログにその因果を示す記述はなく、これは当サイトの推測にとどまる。
04
今後追加すべき項目
- ET01という収集系統の素性 — 採集地・採集年・ORSTOM/IRDミッションの詳細はWCRカタログに記載がない。CATIEまたはIRD自身の記録が必要。
- 発表年 — カタログに記載なし。セントロアメリカーノの2010年に相当する情報が得られていない。
- ブロンズの新芽色と線虫耐性がET01由来かどうか — 本ページ03章の推測部分。WCRカタログには因果の記述がない。
- ニカラグアでの作付け実績 — ニカラグアのページに、F1ハイブリッドの作付け比率やCOE入賞実例のデータはまだない。
- ECOM/CIRAD側の一次資料 — 本ページの経緯はすべてWCRカタログ経由。育成機関自身の公表資料は未取得。
- World Coffee Research, Variety Catalog「Mundo Maya」(varieties.worldcoffeeresearch.org/varieties/mundo-maya、2026年8月12日取得)
- World Coffee Research, Variety Catalog「Centroamericano」「Milenio」(同日取得、03章の比較表)