銘柄・表示ルール / Kona
ハワイコナKona
日本の別表2は「アメリカのハワイ州南コナ地区及び北コナ地区」 と定義する。ハワイ州の法律も、まったく同じ2地区で定義している ——しかも「州の税務地図(Tax Map)で指定された」地区 として。そして2027年7月1日、「コナ」と名乗るための下限が10%から51%へ引き上げられる 。今まさに変わりつつある制度 である。
範囲 北コナ・南コナの2地区(州税務地図)
名乗れる下限(現行) 10%(2027年6月30日まで)
名乗れる下限(以後) 51% (2027年7月1日から)
虚偽表示 クラスC重罪・最低7,500ドル
このページの日付に注意。 内容は
2026年8月16日時点で有効な条文 にもとづく。
ハワイ州の表示規制は2023年・2024年・2025年と連続して改正されており、2027年7月1日にも大きな変更が予定されている (→
03 )。
買う前・売る前には必ず最新の条文を確認すること。
01
日本側の定義
SOURCE: 公正競争規約施行規則 別表2
Primary source quote
ハワイコナ:アメリカのハワイ州南コナ地区及び北コナ地区にて生産されたアラビカコーヒー豆をいう。
⭐ 別表2の14銘柄のなかで、これは珍しい書き方をしている。 他の地区限定の銘柄は
「〇〇地区」と1つだけ を挙げるのに対し、
ハワイコナは「南コナ地区及び北コナ地区」と2つの地区を並べている 。そして
この2地区という切り方は、ハワイ州の法律の定義とぴったり一致する (→
02 )。
ブルーマウンテン のように
日本側とジャマイカ側で用語がずれている例 とは対照的に、
ハワイコナは日本側が現地の制度をそのまま写している と読める。
02
ハワイ州側の定義:線を引いているのは税務地図
SOURCE: Hawaii Administrative Rules §4-143-3 / HRS §708-871.5
ハワイ州はコーヒーの「地理的呼称(geographic region/geographic origin)」を法令で列挙している 。コナはその一つである。
Primary source quote
"Kona is the North Kona and South Kona districts on the island of Hawaii, as designated by the State of Hawaii Tax Map;"
Hawaii Administrative Rules(ハワイ州行政規則)§4-143-3「Definitions」より。「コナとは、ハワイ州の税務地図によって指定された 、ハワイ島の北コナ地区および南コナ地区である」。同じ定義は刑法である HRS §708-871.5 にも、ほぼ同文で置かれている。
⭐ 3つの産地が、まったく違う方法で線を引いている。 当サイトで一次資料を確認できた3例を並べると、「産地の範囲を決める」という同じ目的に、これほど違う道具が使われている ことがわかる。
産地 範囲の決め方
ハワイ・コナ 行政区画 ——「州の税務地図で指定された北コナ・南コナ地区」。すでにある行政の線をそのまま使う
ジャマイカ・ブルーマウンテン 境界線の記述 ——スキボを起点に16の地名を順にたどる閉じた線。コーヒーのために引かれた専用の線
タンザニア・キリマンジャロ (日本側の定義)国全体から除外 ——「タンザニア産アラビカ。ただしブコバ地区を除く」
ハワイ州が定めている地理的呼称は、コナだけではない。 行政規則 §4-143-3 は
ハマクア/ハワイ(州全体)/ハワイ島/カウ/カウアイ/コナ/マウイ/モロカイ/オアフ の
9つ を定義している。
ハマクアとカウはハワイ島の「地区」 、
カウアイ・マウイ・モロカイ・オアフは「島」 、
ハワイは「州」 ——
粒度がそろっていない のが特徴で、これは
別表2の14銘柄 が地区・国・輸出規格と粒度をまぜているのと同じ構造である。
細かいが、資料によって数が違う。 上記の行政規則は9つ を挙げるが、刑法 HRS §708-871.5 の同じ定義規定は「ハワイ島(Hawaii Island)」を含まない8つ である。どちらの条文も、この違いについて説明していない 。当サイトは両方をそのまま記載し、理由の推測はしない。
03
⭐ 2027年7月1日、10%が51%になる
SOURCE: Hawaii Revised Statutes §486-120.6
ハワイ州法は、「コナ」のような地理的呼称をラベルや広告に使うために必要な最低含有率 を定めている。その数字が、来年変わる。
〜 2027年6月30日
10%
重量比で10%未満 しかその地理的呼称のコーヒーを含まない場合、ラベル・広告にその名前を使うことは違反 となる。裏を返せば10%入っていれば「コナ」の語を使える 。
→
2027年7月1日 〜
51%
下限が51% に引き上げられる。半分以上がコナでなければ「コナ」の語を使えなくなる 。
Primary source quote
(2) Use a geographic origin in labeling or advertising … if the … coffee … contains less than: (A) Until June 30, 2027, ten per cent coffee by weight from that geographic origin; and (B) On or after July 1, 2027, fifty-one per cent coffee by weight from that geographic origin;
Hawaii Revised Statutes §486-120.6(d)(2) より。同条は違反行為を10項目列挙しており、これはその2番目にあたる。条文末尾の改正履歴は L 1991, c 289 → 1995 → 2002 → 2011 → 2023 c 211 → 2024 c 198 となっており、直近3年で2回改正されている 。
⭐ 「10%ブレンド」は、この条文があるからこそ成立していた。 「Kona Blend」の名でコナ豆が1割しか入っていない 商品が売られている、という話を聞くことがある。ハワイ州法上、それは(重量比10%以上あり、かつ04節の表示要件を満たす限り)違反ではない 。2027年7月1日以降は、その商品は「コナ」の語を使えなくなる ということになる。
日本で売られているものには、この州法は及ばない。 ハワイ州法はハワイ州の管轄であり、
日本国内の表示は公正競争規約 と景品表示法による 。日本では「ハワイコナブレンド」は
30%以上 で名乗れる(→
07 )。
同じ商品名でも、どちらの国の売り場かによって適用される下限が違う ——当サイトはこの点について、どちらの規制が優れているという評価はしない。
04
パーセントを袋に書かせる法律
SOURCE: HRS §486-120.6(a)(b)
ハワイ州法のもう一つの特徴は、含有率そのものを名前の一部として表示させる ことである。
中身 法律が求める「識別表示(identity statement)」
1つの産地の豆100% 産地名+“Coffee” (例:Kona Coffee)。産地名の直前に“100%” を付けてもよい
ハワイ産の複数産地のみ 重量%+その産地名+“Coffee”+“All Hawaiian”
ハワイ産+ハワイ以外の豆のブレンド 重量%+その産地名+“Coffee Blend”
「Contains:」の一覧 ラベルには“Contains:” に続けて、重量%の多い順にカンマ区切りで各産地を列挙 する。各産地名の前に「数字+%」を置く 。ハワイ以外の豆は個別に書く代わりに“Foreign-grown Coffee” とまとめてもよい(その場合も重量%を前置)。この一覧は識別表示の下、表面パネルに、識別表示の半分以上の文字サイズで
文字の大きさ 識別表示の最小文字は、連邦法が内容量表示に求める文字サイズの1.5倍以上 (16オンス以下の包装では「1.5倍」と「3/16インチ」のいずれか小さいほう)。内容量表示の上に、間に何も挟まずに目立つように置く
“All Hawaiian” ハワイで栽培・加工された生豆だけ から作られていなければ使えない
商標の制限 地理的呼称で始まる商標 は、その産地の豆100%でなければ使えない(末尾が事業体を示す語である場合を除く)。商標を2つ以上使う のも100%の場合のみ
等級との連動 生豆が第147章に基づく規則の等級基準を満たしていない場合、地理的呼称を使うこと自体が違反 (→05 )
記録の保存 焙煎業者・製造業者等は、購入・販売・使用したコーヒーの数量と産地の記録を2年間保存 。州当局は営業時間中にこれを閲覧できる
小売店の免責 自らパッケージしない小売業者は、違反ラベルの商品を売っても責任を負わない
⭐ 日本の規約との一番大きな違いは、ここにある。 日本の
公正競争規約 は
「30%以上ならブレンドを名乗れる」 と下限を決めるが、
実際に何%入っているかを書かせる規定はない (原材料名欄に生豆生産国名を多い順に書く、という形で間接的に示される)。
ハワイ州法は「◯% Kona Coffee Blend」と、数字そのものを商品名の一部にさせる 。
下限を決めるだけの制度と、数字を開示させる制度 ——同じ「ブレンド表示」でも設計思想が違う。
2023年の改正がこの開示ルールを入れた。 ハワイ州議会は
「ハワイの地理的表示を掲げるすべてのコーヒー製品に、栽培地の開示と、州産コーヒーおよび他所産コーヒーの重量比の表示を義務づけた」 ものとして2023年法律第211号を位置づけている(→
06 の立法解説より)。
05
等級:コナの中にも6段階ある
SOURCE: Hawaii Administrative Rules §4-143-6
「コナ」は品質の等級ではなく産地の呼び名 である。品質のほうは別に等級制度がある ——そして等級名の頭に産地名を付けられるかどうかも、等級ごとに決まっている 。
等級 欠点の許容 最小サイズ(タイプI/タイプII) 「Kona」を冠せるか
Extra Fancy 300gあたりフル欠点8個以内 19/13 可 (Kona Extra Fancy)
Fancy 300gあたり12個以内 18/12 可
No. 1 300gあたり18個以内 16/10 可
Select 欠点豆が重量比5%以内 (うちサワー・スティンカー・ブラック・カビ豆は2%以内) 任意指定 可
Prime 欠点豆が重量比15%以内 (うち上記4種は5%以内) 任意指定 可
No. 3 欠点豆が重量比35%以内 (うち上記4種は5%以内) — 禁止
Offgrade 等級ではない 。No. 3より低い品質を指す記述語— 禁止
全等級に共通する条件が2つある。 ①
水分は9%以上12%以下 (→
乾燥のページ で扱う12%という数字と同じ上限)。②
Extra Fancy・Fancy・No. 1は「1つのタイプの豆」で構成され、他タイプの豆の混入は重量比3%以内 。Extra Fancy〜No. 1には
「均一に良好な緑色、良好な焙煎適性、抽出したときの良好な香りと風味」 という官能の条件も付く。
⭐ 「Prime」の数字は2020年に厳しくなっている。 条文は「重量比20%の欠点豆という許容は2020年6月30日まで有効とする。2020年7月1日以降、許容は重量比15%とする」 と書いている。本ページの表には現行の15%を記載した 。同じ条文には、虫害によるピンホール2個以下の豆の扱いも2020年7月1日から1/10欠点→1/5欠点 へ変更する規定がある。
サイズは「64分の1インチ」である。 タイプIの豆は
丸穴 、タイプIIの豆は
細長い穴(slotted hole) を使い、
サイズ19=19/64インチの穴を通り抜けない豆 という定義。
格付けページ で扱ったケニアのスクリーンサイズと同じ考え方だが、
ミリではなく64分の1インチ である点に注意(この単位の取り違えは当サイトが過去に一度やっている)。ロットあたり
重量比10%までは規定サイズより小さい豆が混じってよい 。
「フル欠点」の数え方まで条文が決めている。 表面の50%超が黒いか黴びた豆=1、サワー/スティンカー臭が「かすか」を超える豆=1、4mm超の石=1、4〜10mmの小枝=1、10mm超の小枝=2 。クエーカー・貝殻豆・虫害豆・割れ豆などは1/5 。欠点の判定は個々の豆ではなくロット全体に対して行い、ロットからの混合サンプルで等級を決める とも定められている。
06
産地の偽装は「重罪」である
SOURCE: HRS §708-871.5
ハワイでは、産地を偽ったコーヒーの表示は刑法典に置かれた犯罪 である。
Primary source quote
ハワイ産コーヒーの虚偽表示はクラスC重罪である。第706-605条により科される刑罰に加えて、裁判所は、ハワイ産コーヒーの虚偽表示で有罪となった被告に対し、各違反行為につき7,500ドルの必要的最低罰金 を科さなければならない。虚偽表示の各行為は、それぞれ別個の犯罪を構成する。 科された必要的最低罰金は、執行猶予も免除もできない。
Hawaii Revised Statutes §708-871.5(3) より要約。「知りながら、産地について虚偽に表示されたハワイ産の生豆・チェリー・パーチメント・焙煎豆を、輸送・流通・広告・販売し、または販売の意図をもって所持した者」が対象(同条(1))。
⭐ 2025年に「焙煎豆」が付け加えられた。 州議会の解説によれば、この罪は2012年法律第328号 で新設されたが、従来の法律は生豆(未焙煎)を対象としていたため、本物のハワイ産豆をほとんど、あるいはまったく含まない焙煎コーヒーの誤表示を許す抜け穴があった 。そして「コーヒーの詐欺・誤表示・不実表示のほとんどは、ほぼ焙煎コーヒー製品で起きている」 と認定し、2025年法律第126号 でこの抜け穴を塞いだ、と説明されている。
州議会が「なぜ守るのか」を明記している。 同じ解説は、ハワイ産コーヒーを「州で最も価値が高く、よく知られた農産物の一つであり、直接販売・雇用・土地の保全・観光を通じて経済に大きく寄与している」 と位置づけ、「より安価で低品質なコーヒーがハワイ産と偽って表示されるコーヒー偽装(counterfeiting)」を継続的な脅威 としている。名前を守る制度が、なぜ厳しくなり続けているのかが条文の外側に書かれている 珍しい例である。
行政規則の側にも執行の手当てがある。 §4-143-8 は、州の検査官が営業時間中に車両を含む敷地に立ち入って品質・状態・産地を検査 でき、違反を認めたときは販売停止通知(stop sale notice) を貼れると定めている。通知が出ている間、そのコーヒーは販売・移動・処分ができない 。また §4-143-1 は、タグは開封するとタグが変化する不正開封防止型で、2インチ×4インチ以上、色は明るく、破れにくい素材 と細部まで決めている。
07
3つの制度の「ブレンド下限」を並べる
SOURCE: 日本 公正競争規約 / ジャマイカ 2018年規則 / ハワイ HRS §486-120.6
当サイトが原文を確認できた3つの制度を並べると、「その名前を名乗るのに何%必要か」という同じ問いへの答えが、これだけ違う 。
制度 下限 %の表示義務
日本(公正競争規約) 30%以上 で「○○ブレンド」なし (原材料名欄に生豆生産国名を多い順に記載)
ジャマイカ (2018年規則)30%以上 で “Blue Mountain Blend”(1953年規則では20%)今回参照した条文には規定なし
ハワイ(HRS §486-120.6) 10%以上 (2027年6月30日まで)/51%以上 (2027年7月1日から)あり ——重量%を商品名の一部として表示させ、さらに「Contains:」で全産地の%を列挙させる
この表は優劣をつけるためのものではない。 3つは制定した主体も、守ろうとしているものも、罰則の重さも違う ——日本の規約は業界の自主ルールを公正取引委員会・消費者庁が認定したもの、ジャマイカの規則は政府機関JACRAが制定した規則、ハワイのものは州議会の制定法(+刑法)である。同じ「30%」でも、日本とジャマイカで根拠も執行の仕組みも別 である。並べて読めるのは「名前をどう守るか」の設計が国ごとに違う ということまでで、それ以上ではない。
そして、どれも「おいしさ」を保証してはいない。 3つとも定めているのは
名前を名乗れる範囲 であって、品質の評価ではない。品質はロットごとの
カッピング で確かめるほかない——
モカ ・
ブルーマウンテン の各ページと同じ結論になる。
08
今後追加すべき項目
ハワイの産地ページ — 当サイトの産地一覧 は国単位で作っているため、一つの州であるハワイをどう置くかは構成上の判断が要る 。本ページは銘柄ページとして 作成し、産地ページ化は保留した。品種・栽培・生産量などの農業側の情報は本ページには含まれていない。
2027年7月1日の施行後の確認 — 51%への引き上げが予定どおり施行されたか、施行日までにさらに改正されないかを、施行後に条文で確認する必要がある。
ハワイでのさび病 — さび病のページ のとおり、WCRは2020年のハワイでの発生 を挙げている。ハワイ州の公的資料での確認は未着手。
ハワイ州の Natural coffee/Mixed natural coffee の等級 — §4-143-11・§4-143-12 に別の等級体系がある(ナチュラル精製 に対応するとみられる)。本ページは §4-143-6 の green coffee のみを扱っている。
ハマクア・カウ・カウアイ等、コナ以外のハワイの地理的呼称 — 別表2に載っているのはハワイコナだけなので、当サイトでは扱っていない。
「コナ」の語源・栽培の歴史 — 今回参照した法令には記載がない。
銘柄名 コーヒーの銘柄名とは
銘柄名 ブルーマウンテン
銘柄名 モカ
銘柄・表示ルール パッケージの表示ルール
品質評価 格付け・グレーディングとは
品質評価 スペシャルティコーヒーとは
収穫・精製 乾燥(水分12%)
全日本コーヒー公正取引協議会「レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約 及び 同施行規則」(平成30年5月21日 公正取引委員会・消費者庁認定)— 別表2 ハワイコナ
Hawaii Revised Statutes §486-120.6「Hawaii-grown and Hawaii-processed coffee; labeling or advertising requirements」(ハワイ州議会 capitol.hawaii.gov、2026年8月16日取得。改正履歴:L 1991 c289/1995 c103/2002 c258/2011 c49/2023 c211/2024 c198)
Hawaii Revised Statutes §708-871.5「False labeling of Hawaii-grown coffee」および同条のCOMMENTARY(ハワイ州議会 capitol.hawaii.gov、2026年8月16日取得。L 2012 c328/am L 2025 c126)
Hawaii Administrative Rules(Haw. Code R.)tit. 4, subtit. 7, ch. 143「STANDARDS FOR COFFEE」— §4-143-1(表示・書類)、§4-143-3(定義)、§4-143-6(生豆の等級基準)、§4-143-8(執行・罰則)。Cornell Law School Legal Information Institute 収録版(2026年8月16日取得。Eff 10/8/01; am and comp 5/24/2014; Am and Comp 5/27/2017)
The Jamaica Agricultural Commodities Regulatory Authority Regulations, 2018 — 07節の比較に使用。詳細はブルーマウンテンのページ