HACHIMARU COFFEE ROASTERY
品種ページ / Variety

エチオサルEthiosar

ニカラグアで栽培されている交配種。World Coffee Research(WCR)の品種カタログには収録されていないため、当サイトの他の品種ページのような詳細スペック表は掲載できない。本ページはACE(Alliance for Coffee Excellence)が公表している記述と、オークションの実例に限って構成する。

WCRカタログ
収録なし
主な栽培国
ニカラグア
ACEの評価記述
収量・耐病性・カップ品質
標高
低めの標高でもよく育つ
01

まず、出典の状況

SOURCE: 当サイトによる直接確認(2026年8月15日)
WCR品種カタログにエチオサルのエントリは存在しない。 当サイトはカタログの検索(varieties.worldcoffeeresearch.org/search)と個別ページのURL(/varieties/ethiosar=404)の両方で確認した。したがって、当サイトの他の品種ページで掲載している樹形・豆サイズ・さび病耐性・最適標高帯といったWCR準拠のスペック値は、この品種については書けない
一方でACEが2021年の発表でこの品種に触れており、系統と評価が記述されている。ACEは当サイトが参照する7団体のひとつであるため、その範囲を出典として掲載する。
02

系統・成り立ち

SOURCE: ACE 2021年4月16日付発表[1]

ACEはエチオサルを次のように記述している。「エチオピアの品種ルメ・スーダンとサルチモールの交配種で、その子をさらにビジャサルチに戻し交配したもの」(原文:a hybrid of the Ethiopian varietal Rume Sudan and Sarchimor, whose offspring is then re-crossed with a Villa Sarchi)。あわせて「収量、耐病性、カップ品質が評価されており、低めの標高で育てても良い結果を出す」としている。

PARENT A
ルメ・スーダン Rume Sudan
エチオピア在来種。当サイトのセントロアメリカーノミレニオのF1ハイブリッド側の親でもある。WCRカタログに単独のエントリは存在しない(当サイトで404を確認済み)
PARENT B
サルチモール Sarchimor
これは1つの品種名ではなく品種群の呼称(次の注記)。群の出発点はT5296ティモール・ハイブリッド CIFC 832/2 × ビジャサルチ
BACKCROSS
ビジャサルチ Villa Sarchi
上の子にさらに掛け合わせた。ブルボンの矮性変異種で、コスタリカ・アラフエラ州で発見された
RESULT
エチオサル Ethiosar
ニカラグアで栽培。ACEは収量・耐病性・カップ品質を評価し、低標高適性にも言及している
⚠️ 「サルチモールとの交配」という書き方は、厳密には品種を特定していない。 WCRはT5296のエントリの末尾に「一般に信じられているのとは異なり、"Sarchimor" はそれ自体が独立した1つの品種ではない。似た親を持つ多くの異なる品種の"群"である」とわざわざ注記している(T5296のページで扱っている)。そのためACEの記述からは、群のどの品種が使われたのかまでは特定できない。当サイトはこの点を埋めずに、分からないままにしておく。
ビジャサルチへの戻し交配は、系図の上では「戻る」動きになっている。 サルチモール群の出発点であるT5296は、そもそもティモール・ハイブリッドビジャサルチの交配種である。つまりエチオサルは、いったんエチオピア在来種の血を入れたあと、もともとの親のひとつであるビジャサルチ側にもう一度寄せていることになる。ACEが挙げる耐病性(ティモール・ハイブリッド由来のさび病耐性がサルチモール経路で入る)と、樹形・カップ品質の両立をねらった構成と読めるが、育種の意図についてACEは記述していないため、ここでは系図上の位置関係を示すにとどめる。
出典の限界

育種を行った機関・人物・年次について、ACEの発表には記載がない。当サイトはこれらを未確認のままとする。また「エチオピアの品種ルメ・スーダン」というACEの表現はWCRがセントロアメリカーノのHistory欄で用いる「エチオピア在来種(Ethiopian landrace variety)」と一致するが、名称に「スーダン」が含まれる由来はいずれの資料からも確認できていない。

03

実例:Los Favoritos 2021(ACE)

SOURCE: ACE LOS FAVORITOS 2021 公式結果[1]

ACEがニカラグアのFincas Mierischを対象に開催したプライベート・コレクション・オークション「Los Favoritos 2021」で、エチオサルが1位を獲得している。入賞15ロット中、90点台に乗ったのはこの1ロットだけだった。

1位 / Los Favoritos 2021
Los Placeres 農園 / エチオサル
90.30
精製方法:Natural Anaerobic Low Temperature(低温嫌気性発酵) / 風味の記述(ACE審査員):赤ぶどう、ブラックベリー、チョコレート、ラム。クリーミーなボディとジューシーな後味
順位スコア農園精製方法
1位90.30Los PlaceresNatural Anaerobic Low Temperature
6位88.59El LimoncilloHoney

ACEはこの大会について「この品種をこの種のオークションに出したのは今回が初めてで、こうした場で見かけること自体が非常に珍しい品種」という生産者側のコメントを掲載している。また1位のロットが最高標高の農園ではないところから出たことにも触れており、低標高でも高品質が作れることの証左だとする生産者の見方を紹介している。

04

栽培されている標高

SOURCE: 生産者公表の農園情報(7団体の枠外)[2]

ACEが「低めの標高でもよく育つ」と記す点について、エチオサルの実例が出ている農園の標高を、生産者自身が公表している農園情報から補足する。この出典は当サイトが軸とする7団体の枠外であり、生産者自身の公表値である旨を明記した上で掲載する(当サイトがパナマのSCAP・ブラジルのCONAB等を代替出典として扱っているのと同じ整理)。

Los Placeres
ニカラグア・マタガルパ県Matagalpa 840〜970m(Los Favoritos 2021で1位のエチオサルを産出)
El Limoncillo
ニカラグア・マタガルパ県Matagalpa 850〜1,110m(同大会6位のエチオサルを産出)
中米の一般的な高評価ロットの標高帯より低い。 当サイトのニカラグアグアテマラのページで扱っているカップ・オブ・エクセレンス入賞ロットは1,200〜1,700m級の農園が多い。エチオサルの実例が800m台後半から1,100m台で出ているのは、ACEの「低めの標高でもよく育つ」という記述と符合する。ただしこれは2農園・1大会の事例であって、品種の性能を示す試験データではない。
05

今後追加すべき項目

  1. Alliance for Coffee Excellence「Los Favoritos Winner Shines Light on Lesser-Known Variety」(2021年4月16日付発表)および Los Favoritos 2021 公式結果表
  2. Fincas Mierisch 公表の農園情報(農園名・地域・標高)。当サイトが軸とする7団体の枠外であり、生産者自身による公表値
  3. World Coffee Research Variety Catalog(エチオサル・ルメ・スーダンとも収録なし。2026年8月15日確認)、および同カタログ「T5296」History 欄の注記