01
規約は「コーヒー」を2つに分けている
SOURCE: 公正競争規約 第2条
当サイトのパッケージの表示ルールで扱っている公正競争規約は、そもそもの冒頭で「コーヒー」という言葉の意味を定めている。
| 用語 | 規約 第2条の定義(原文) |
| コーヒー | レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーであって、容器又は包装に密封されたものをいう。ただし、コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約の適用を受けるものは除く。 |
| レギュラーコーヒー | コーヒーノキの種実を精製したコーヒー生豆を焙煎したもの(煎り豆)及び煎り豆にコーヒー生豆を加えたもの並びにこれらを挽いたものをいう。 |
| インスタントコーヒー | 煎り豆又は煎り豆にコーヒー生豆を加えたものから得られる抽出液を乾燥した水溶性の粉状、顆粒状その他の固形状のものをいう。 |
⭐ 「密封されたもの」だけが規約の対象である。 定義の条件に「容器又は包装に密封されたもの」が入っている。喫茶店で出される一杯や、缶コーヒー・ペットボトル入りのコーヒー飲料は、この規約ではなく別の規約(コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約)の側にあると条文自身が書いている。袋・瓶に入って売られているものの表示ルール——というのが、この規約の守備範囲である。
⭐ レギュラーコーヒーの定義に「生豆を加えたもの」が入っている。 条文は「煎り豆及び煎り豆にコーヒー生豆を加えたもの」とわざわざ書いている。焙煎した豆に生豆を混ぜたものも、規約上はレギュラーコーヒーである。規約はその理由や割合の上限を書いていないので、当サイトは条文がそう定めているという事実だけを記載する。同じ言い回しはインスタントコーヒーの定義(「煎り豆又は煎り豆にコーヒー生豆を加えたものから得られる抽出液」)にもそのまま出てくる。
混ぜたものは、多いほうの名前になる。 第2条4項は、
レギュラーとインスタントを混合したもの、および
インスタントの製造工程における抽出液にレギュラーコーヒー粉末を混合して乾燥させたものについて、
最終製品の重量百分比率でレギュラーの割合が多ければ「レギュラーコーヒー」、インスタントの割合が多ければ「インスタントコーヒー」と定めている。
ここでも判断の基準は重量比である——
銘柄名の「30%以上でブレンドを名乗れる」と同じ、重量で線を引く考え方が使われている。
02
製法の呼び名にも定義がある
SOURCE: 公正競争規約施行規則 別表3 Ⅰ
瓶のラベルに「フリーズドライ製法」などと書かれていることがある。これも規則の別表3が「製法上の特性表示」として定義している言葉である(同じ別表には炭焼き・炭火焼の冠表示ルールも並んでいる)。
| 製法 | 別表3 Ⅰ の定義(原文) |
| スプレードライ法 | 抽出されたコーヒー液の水分を瞬間的に蒸発乾燥させ、粉状のコーヒーを製造する方法をいう。 |
| フリーズドライ法 | コーヒー抽出液を凍結し、真空状態で水分を昇華させ顆粒状のコーヒーを製造する方法をいう。 |
| アグロメレーション | スプレードライで製造されたコーヒーを顆粒状に造粒する方法をいう。 |
⭐ 顆粒だからフリーズドライ、とは限らない。 定義を読むと、スプレードライは粉状、フリーズドライは顆粒状だが、アグロメレーションは「スプレードライで作った粉を顆粒に固める」方法である。つまり顆粒状のインスタントコーヒーには、フリーズドライで作られたものと、スプレードライ+アグロメレーションで作られたものの両方がありうる。見た目だけでは製法は決まらないということになる。
AJCAはこの2つの製法を、もう少し具体的に説明している。 フリーズドライは「濃縮されたコーヒー液を零下40度前後の低温で凍結させ、真空状態で昇華させます。すると氷の結晶があった部分はそのまま空間として残り、大粒の粒子ができます。この製法は低熱処理の為、コーヒーのアロマがより良く保存されます」。スプレードライは「高温の乾燥塔の中で濃縮されたコーヒー液を噴霧すると、瞬間的に水分が蒸発し、乾燥した細かい粉末状のコーヒーが出来上がります」。粒に穴が空いているのは、氷があった場所がそのまま空洞として残るから——という説明である。
03
できるまでの7工程
SOURCE: 全日本コーヒー協会(日本インスタントコーヒー協会)
AJCAは製造工程を7段階で示している。前半は当サイトのコーヒーができるまでと同じ流れで、違ってくるのは6番目からである。
03
配合(ブレンド)
異なったタイプのコーヒー豆を組み合わせる
04
粉砕(グラインド)
豆を挽く(挽き方の5段階の公的基準は→
表示ルール)
06
噴霧乾燥/凍結乾燥
ここがインスタントコーヒー固有の工程。スプレードライかフリーズドライか(→
02)
07
包装(パッケージ)
瓶詰めからラベル貼りまで、機械で衛生的に行う
⭐ 「淹れてから乾かしている」というのが要点である。 AJCAは
「インスタントコーヒーは、コーヒー抽出液から水分を除去したものです。したがって水分を加えれば元に戻ります」と書いている。
05までは、家庭でコーヒーを淹れるのと同じことをしている——規模と設備が違うだけである。
インスタントコーヒーを「コーヒーではない別の飲み物」と考える必要はない、というのが規約の定義(→
01)とも整合する読み方になる。
原材料はコーヒー豆だけ、とAJCAは書いている。 Q&Aは
「『国際コーヒー協定』の定義によれば、コーヒー豆から可溶性固形分を抽出し、乾燥したものがインスタントコーヒーであり、原材料はコーヒー豆だけです」としている。
ただし当サイトは、国際コーヒー協定(ICA)の条文でこの定義を直接確認できていない——AJCA経由の引用である(→
08)。
04
数字:使用量・水分・カフェイン
SOURCE: AJCA Q&A / 内閣府 食品安全委員会
- 標準使用量
- コーヒーカップの場合、ティースプーン1杯(約2g)に湯140mlが適量(AJCA)。ただし製品ごとに推奨量が異なる場合があるのでラベル表記を読むこととも書かれている
- 水分
- 約2〜4%。AJCAは「水分が極めて少ないため、虫がつきにくく、経時的に風味の変化はあっても腐敗することはありません」と説明している(→保存のページ)
- 成分の一例
- 水分3.8%/たんぱく質14.7%/脂質0.3%/炭水化物56.5%/灰分8.7%/タンニン12%/カフェイン4.0%、無機質・ビタミンは微量(AJCAが「五訂日本食品標準成分表」から引く一例)。使用するコーヒー豆の種類によって最終成分は若干異なるとも記されている
- 豆に含まれる油分
- 10〜12%。レギュラーコーヒーにもインスタントコーヒーにも含まれ、液面に少し浮くが品質に問題はないとAJCAは説明している
⭐ 別々の資料の数字が、計算でぴたりと合う。 AJCAの
「カフェイン4.0%」と
「約2g/湯140ml」を掛け合わせると、
2g×4.0%=80mg、140mlあたり80mg=100mlあたり約57mg。
内閣府 食品安全委員会のファクトシートがインスタントコーヒーについて挙げている値は「57mg/100ml(浸出方法:インスタントコーヒー2g/熱湯140ml)」——
完全に一致する。
2つの資料は別々に作られているが、同じ前提の上に立っていることが確かめられる(→
カフェインレスコーヒー 04)。
成分表の版に注意。 AJCAが引いているのは
「五訂日本食品標準成分表」である。
日本食品標準成分表はその後も改訂されており、当サイトは最新版の数値を確認していない。
ここに載せているのはAJCAが示している一例であって、現行の公式値ではない可能性がある(→
08)。
05
⭐ 瓶の中の「白い糸のようなもの」は何か
SOURCE: 全日本コーヒー協会 Q&A
Primary source quote
それは、「カフェインの析出」といわれる現象と思われます。カフェインがコーヒー粒子の表面に白い針状の結晶となって現れる現象で、カビあるいはクモの糸のように見えたり、またコーヒーパウダーがつらなったりします。
全日本コーヒー協会「インスタントコーヒーQ&A」より。同じ回答は「この現象は、開封、未開封を問わず、保存場所の湿度や高温などの影響を受けたり、開封後、長期間静止状態で置かれたりした場合に起こります」と、起こる条件も説明している。
元に戻ることもある。 AJCAは
「軽度の場合は瓶ごと振っていただくと元に戻ることがありますが、それでも戻らないような場合は、本来の味・香りをお楽しみいただくことができません」と書いている。
カフェインはコーヒーに本来含まれている成分であるとも明記されている(→
カフェインレスコーヒー)。
賞味期限と開封後について。 AJCAは
「インスタントコーヒーは乾燥しているものですから、賞味期限を過ぎているからといってすぐに品質が劣化し飲めなくなってしまうということはありません。振ってみて粉がサラサラした状態でしたら、お召し上がりいただいても差し支えないでしょう」とし、
開封後は「高温、湿気を避けて保管し、使用毎に蓋をしっかり閉めて」約1ヶ月で使い切ることを勧めている。
内蓋シールは「ふちの部分を残しながら、ナイフ等で完全に切り取る」のがよい——
瓶とキャップに隙間ができず、蓋がぴったり閉まるからだという。
賞味期限そのものの定義(「開封前の状態で……」)は保存のページで扱っている。
06
はじまりは、日本人が発表したソリュブルコーヒー
SOURCE: 全日本コーヒー協会 Q&A
Primary source quote
1889年、アメリカでソリュブルティー(可溶性茶)を発表した日本人、加藤サトリ博士が1901年パンアメリカン博覧会でソリュブルコーヒーを発表したことが今日のインスタントコーヒーのきっかけであるといわれております。
全日本コーヒー協会「インスタントコーヒーQ&A」より。AJCA自身が「といわれております」という書き方をしている点は、そのまま伝えておく。
当サイトはここを深追いしない。 AJCAの表現が伝聞の形になっている以上、当サイトが断定するわけにはいかない。
「7団体の一つであるAJCAがこう記している」という以上のことは書かない——
モカのページでモカ港とエチオピアの関係を未確認としたのと同じ扱いである。
当サイトの年表との関係。 コーヒーの「種」とはのページでは、AJCAの歴史年表やSCAの解説にもとづいて
1867年のさび病や
1870年のロブスタ発見を扱っている。
1901年という年は、その少しあとにあたる。
コーヒーが世界商品になっていく時期と、可溶性コーヒーが現れた時期は重なっている——ただし
両者の関係を述べた資料は今回確認していない。
07
当サイトが引用しなかった部分
AJCAのQ&Aには健康に関する項目もあるが、引用していない。 「カフェインはどんな働きをもつか」「一日に何杯まで」「胃に良くないのは本当か」「子どもは何歳から」「妊娠中・授乳中は」といった項目が並んでいるが、
当サイトは健康に関する助言を行わないため、これらは掲載しない。
出典が当サイトの7団体のものであっても、方針は変えない——
カフェインレスコーヒー 05と同じ扱いである。
カフェインの摂取量については、内閣府 食品安全委員会のファクトシートなど公的機関の資料を直接参照されたい。
脱カフェインについてのAJCAの記述は、別ページで扱う。 同じQ&Aには
「コーヒー生豆を水に浸して水溶性のカフェインを取り出しやすくした後、最終的にカフェインだけを取り除いていきます」とし、
特殊な樹脂層や活性炭に吸着させる方法、炭酸ガスを用いる方法など、溶剤等を一切使用せずカフェインを除去する方法が確立しているという説明がある。これは
カフェインレスコーヒーのページに反映した。
08
今後追加すべき項目
- 国際コーヒー協定(ICA)の定義 — 03節のとおり、AJCA経由の引用にとどまっている。ICOが公開しているICAの条文で「soluble coffee」の定義を直接確認したい(→出典としている団体)。
- 日本食品標準成分表の最新版 — 04節の成分値は「五訂」による。現行版での数値と、レギュラーコーヒー(浸出液)との比較を確認する。
- 濃縮の工程 — AJCAの説明には「濃縮されたコーヒー液」という言葉が出てくるが、抽出のあと乾燥の前に行われる濃縮そのものについては、規約にもAJCAの資料にも説明がない。
- アグロメレーションの実際 — 別表3は「顆粒状に造粒する方法」とだけ定める。どうやって造粒するのかは書かれていない。
- 日本のインスタントコーヒー消費量・輸入量 — 市場・統計コンテキストにインスタントの項目がない。AJCAの統計資料ページに数値がある可能性がある。
- 「レギュラーソリュブルコーヒー」 — 第2条4項が定めている「インスタントの製造工程における抽出液にレギュラーコーヒー粉末を混合して乾燥させたもの」に相当する製品が実際にどう呼ばれ売られているかは未確認。
- このページの置き場所 — 当サイトのカテゴリのうち「抽出」に置いた(抽出液を乾燥させたものだから)が、製品の種類という軸のカテゴリが当サイトには無い。今後インスタント関連のページが増えた場合は置き方を見直す。
- 全日本コーヒー公正取引協議会「レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約 及び 同施行規則」(平成30年5月21日 公正取引委員会・消費者庁認定、告示第6号)— 規約 第2条(コーヒー/レギュラーコーヒー/インスタントコーヒーの定義、混合品の呼称)、施行規則 別表3 Ⅰ(スプレードライ法・アグロメレーション・フリーズドライ法)。原文PDF(ajcft.org)を2026年8月16日に取得して確認
- 全日本コーヒー協会(日本インスタントコーヒー協会)「インスタントコーヒーができるまで」(instant-coffee.ajca.or.jp、2026年8月16日取得)— 7工程、フリーズドライ/スプレードライの具体的説明
- 同「インスタントコーヒーQ&A」(instant-coffee.ajca.or.jp、2026年8月16日取得)— 加藤サトリ博士、国際コーヒー協定の定義、成分の一例、標準使用量、賞味期限と開封後、カフェインの析出、水分と保存性、油分。健康に関する項目は引用していない
- 内閣府 食品安全委員会「ファクトシート 食品中のカフェイン」(最終更新 平成30年2月23日)— インスタントコーヒー57mg/100ml(浸出方法:2g/熱湯140ml)。当サイトのカフェインレスコーヒーのページで確認したもの