品種ページ / Variety
Ruiru 11ルイル・イレブン
1985年にケニアでリリースされた、背の低い(矮性)高収量の品種。1968年のコーヒーベリー病(CBD)の大流行で、ケニアの生産の50%が失われたことが出発点になっている。さび病に高い耐性、CBDに耐性を持ち、密植による集約栽培に向く。単一の系統ではなく、複数の兄弟系統を混ぜた「複合品種」である点が、この品種を理解する鍵になる。
- 最適標高帯
- 低〜高(緯度依存、400m以上)
- 樹形
- 矮性・コンパクト
- さび病耐性
- 高い耐性▲
- 収穫量
- 非常に高い▲
01
基本情報
SOURCE: WCR VARIETY CATALOG- 品種名
- Ruiru 11Ruiru 11
- 系統・成り立ち
- 多数の品種からなる複合品種。カティモール(母方)× K7・SL28・N39・ルメ・スーダンなどを含む多重交配系統(父方)
- 育種機関
- Coffee Research Foundation(現 Kenya Agricultural and Livestock Research Organization, KALRO)
- リリース年
- 1985年(ケニア)
- 名前の由来
- 育種を行ったケニア・ルイル(Ruiru)のコーヒー研究所
- 遺伝的系統区分
- F1ハイブリッド(導入交雑あり)F1 hybrid (introgressed)
02
詳細スペック
SOURCE: WCR CATALOG, 2026-09-02 取得
評価の目安:
▲ 良好
● 標準
▼ 要注意
— WCRカタログ自身の区分(Low/Medium/High/Exceptional等)をそのまま可視化したもの
最適標高帯は緯度により変動する — WCRカタログの区分を可視化:
2,000m1,500m1,000m500m0m
1,000m以上北緯/南緯
5°以内
5°以内
700m以上5〜15°
400m以上15°以上
- 樹形
- 矮性・コンパクトDwarf/Compact
- 新芽の葉色
- 緑または銅色Green or Bronze
- 豆のサイズ
- 大きいLarge
- 収穫量ポテンシャル
- 非常に高いVery High▲
- 高標高での品質ポテンシャル
- 良好Good●
- さび病(CLR)耐性
- 高い耐性Highly resistant▲
- 線虫耐性
- 感受性あり▼
- コーヒーベリー病(CBD)耐性
- 耐性ありResistant▲
- 初収穫までの年数
- 2年目
- 必要な栄養レベル
- 高いHigh▼
- 果実の成熟時期
- 標準Average
- 生豆歩留まり
- 標準Average●
- 推奨植栽密度
- 2,000〜3,000本/ha(多幹剪定の場合)
03
この品種の成り立ちと、読み取れること
SOURCE: WCR VARIETY CATALOG(History/Additional agronomic information 欄)
⭐ 1968年の病害が、この品種を生んだ。 WCRの記述によれば、1968年のコーヒーベリー病(CBD)の流行でケニアの生産の50%が失われた。これを受けて1970年代、ルイルのコーヒー研究所がCBDに免疫を持つ品種の集中的な育種プログラムを開始し、その成果が1985年リリースのRuiru 11である。品種の名前が地名になっているのは、そこが危機に応答した場所だからである。
⭐⭐ 父方と母方で、担っている役割がはっきり分かれている。 WCRは交配の設計をかなり具体的に書いている。
父方(複合ハイブリッド)=耐病性と品質を持ち込む側。CBD耐性はルメ・スーダン・ティモール・ハイブリッド系統・K7から、カップ品質はN39・SL28・SL34・ブルボンから来ている。
母方(カティモール)=樹形の小ささと、さらに一段のさび病・CBD耐性を持ち込む側。少数のカティモール系統(カトゥーラ×ティモール・ハイブリッド)が選ばれ、Catimor 129 もそこに含まれる。
父方(複合ハイブリッド)=耐病性と品質を持ち込む側。CBD耐性はルメ・スーダン・ティモール・ハイブリッド系統・K7から、カップ品質はN39・SL28・SL34・ブルボンから来ている。
母方(カティモール)=樹形の小ささと、さらに一段のさび病・CBD耐性を持ち込む側。少数のカティモール系統(カトゥーラ×ティモール・ハイブリッド)が選ばれ、Catimor 129 もそこに含まれる。
⚠️ 種を作るのに、人の手で受粉させる必要がある。 最終的な交配は母樹に父方系統の花粉を人手で授粉させてF1(第一代)のハイブリッド種子を作るという手順で行われる。この交配によって雑種強勢(ハイブリッド・ヴィガー)が生じ、高い収量につながっている。できた種子は兄弟系統をまとめて混ぜた形で農家に配られる——これが複合品種と呼ばれる理由である。
その代償として、WCRは「人手による授粉に頼るため、農家の需要を満たす量の種子を生産するのが難しい」と明記している。品種の性能とは別に、タネの供給が制約になっているという話である。
その代償として、WCRは「人手による授粉に頼るため、農家の需要を満たす量の種子を生産するのが難しい」と明記している。品種の性能とは別に、タネの供給が制約になっているという話である。
WCRの多地点試験の対象になっている。 この品種の収量とさび病耐性は、WCRの国際多地点品種試験(International Multilocation Variety Trial)として15か国23か所で評価されている。ただしWCR自身が「さび病のどのレースが存在するかによって、現地での成績は変わりうる」と注記している。
04
今後追加すべき項目
- N39・ルメ・スーダン・SL4 の素性 — いずれもWCRカタログに単独エントリがない。ルメ・スーダンについてはセントロアメリカーノ・エチオサルのページから引き継いでいる積年の課題。
- Catimor 129 — WCRカタログには収録があるが、当サイトにはまだページがない。
- カップ品質の実測 — 「背の高い品種の高いカップ品質を、コンパクトな樹形で実現する」という育種目標に対して、実際にどう評価されているかを示す資料は当サイト未取得。
- ケニア国内での普及率 — ケニア産地ページに「2019年時点で約30万世帯が耐病性品種を導入」とあるが、Ruiru 11とBatianの内訳は未確認。
- World Coffee Research, Variety Catalog「Ruiru 11」(varieties.worldcoffeeresearch.org/varieties/ruiru-11、2026年9月2日取得)— 樹形・豆サイズ・耐病性・最適標高帯・系統・育種者・History および Additional agronomic information の各欄