銘柄・表示ルール / Colombia Supremo
コロンビアスプレモColombia Supremo
「スプレモ」は地名ではない。コロンビアの公的な等級区分にある豆の大きさの呼び名で、スクリーン17を指す。ところが日本の別表2の定義文には「スプレモ」という語が一度も出てこない——書かれているのは「コロンビアにて生産された同国輸出規格に基づくアラビカコーヒー豆」という一文だけである。
- 定義の粒度
- 輸出規格(地区でも国でもない)
- スプレモ
- スクリーン17
- エクセルソ
- スクリーン14
- 別表2の定義文
- 等級名の記載なし
01
⭐ 定義文に「スプレモ」が出てこない
SOURCE: 公正競争規約施行規則 別表2Primary source quote
6) コロンビアスプレモ : コロンビアにて生産された同国輸出規格に基づくアラビカコーヒー豆をいう。
⭐ 読み方をそのまま追うと、こうなる。 定義文が求めているのは①コロンビアで生産されたことと②同国の輸出規格に基づくアラビカ豆であることの2つだけで、「スプレモ等級であること」は書かれていない。コロンビアの輸出等級には、スプレモのほかにプレミアム・エクストラ・エクセルソ・カラコルがある(→02)——定義文を文字どおり読むかぎり、そのどれであっても①②は満たしてしまう。規約はこの点について何も説明していないので、当サイトは「銘柄名は『コロンビアスプレモ』だが、定義文は等級を特定していない」という事実だけを記載し、意図の推測はしない。
この書き方をされている銘柄は、14のうち2つだけである。 もう一つは4) クリスタルマウンテン——「キューバにて生産された同国輸出規格に基づくアラビカコーヒー豆をいう」。どちらも「同国輸出規格に基づく」とだけ書き、等級名を挙げていない。→04
| 定義のしかた | 別表2の銘柄 |
|---|---|
| 地区 | ブルーマウンテン・ハイマウンテン・グアテマラアンテイグア・モカハラー・トラジャ・カロシ・ガヨマウンテン・ハワイコナ(8件) |
| 国 | モカマタリ(1件) |
| 国(除外つき) | ジャマイカ・キリマンジャロ(2件) |
| 州(除外つき) | マンデリン(1件) |
| 輸出規格 | コロンビアスプレモ・クリスタルマウンテン(2件) |
粒度がそろっていないことは、別表2全体の特徴である。 地区・国・州・輸出規格が同じ表に並んでいる。「銘柄名」という一語でまとめられているが、実際には何を根拠にした名前かがばらばら——この点は銘柄名のページで扱っている。そのなかで「輸出規格」だけは、産地の範囲ではなく豆そのものの規格を根拠にしているので、性質がひときわ違う。
02
コロンビアの公的な等級:スプレモはスクリーン17
SOURCE: ICO「National Quality Standards」ICC 122-12(2018)では「同国輸出規格」とは何か。国際コーヒー機関(ICO)が加盟国からの報告を集約した公式資料によれば、コロンビアの等級はComité Nacional de Cafeteros(コロンビア政府とFNC=全国コーヒー栽培者連盟で構成)の Resolution No.5/2002 が定めており、スクリーンサイズ(豆の大きさ)で区切られている。
18
PREMIUM
プレミアム
17
SUPREMO
スプレモ
16
EXTRA
エクストラ
14
EXCELSO
エクセルソ
(うち50%以上がスクリーン15)
(うち50%以上がスクリーン15)
12
CARACOL
カラコル
(ピーベリー系)
(ピーベリー系)
スクリーンの数字は「64分の1インチ」である。 スクリーン17なら17/64インチの丸穴を通り抜けない大きさという意味。数字が大きいほど豆が大きい。仕組みそのものは格付け・グレーディングのページで扱っている。ハワイの等級(→ハワイコナ 05)も、ケニアのAA/AB/PBも、同じスクリーンという道具を使っている。
大きさ以外の条件もある。 同じResolution No.5/2002は、500gのサンプルで欠点72個以内、うちグループ1欠点(黒豆等)は12個まで、水分12%以下という条件も定めている(ICO報告より)。「スプレモ=スクリーン17」だけで決まるわけではない。
「エクセルソ」は等級名であって、格下という意味ではない。 上の並びのとおりエクセルソはスクリーン14で、そのうち50%以上がスクリーン15であることが条件になっている。スプレモより粒が小さい区分ではあるが、それは大きさの話であって、味の優劣ではない(→03)。
出典の経路を明示しておく。 このスクリーン区分はICOの公式資料(ICC 122-12)が「コロンビアからの報告」として掲載しているもので、当サイトはそれを引用している。Resolution No.5/2002 の原文PDFは、FNCのサイトで2026年8月16日時点で404となっており直接確認できていない(→05)。
03
スクリーンは味を測っていない
SOURCE: 当サイト 品質評価ページ当サイトの品質評価のページで整理しているとおり、コーヒーの「良さ」を測る体系はいくつもあり、それぞれ測っているものが違う。
| 体系 | 何を測るか | コロンビアスプレモとの関係 |
|---|---|---|
| 商取引の等級 (グレーディング) | 豆の大きさ(スクリーン)と欠点の数。味は測らない | 「スプレモ」はここに属する言葉。→格付け |
| カッピング/CVA | 味と香りを人が評価する | スプレモかどうかとは別の軸。→カッピング/CVA |
| 品評会(COE等) | その年・その農園・そのロットを審査員が採点 | 同上。→COEとは |
| 銘柄名(別表2) | 名前を名乗れる範囲 | 「コロンビアスプレモ」はここに属する名前——ただし中身は等級を根拠にしている(→01) |
⭐ だから「スプレモ=上等」とは、資料からは言えない。 当サイトの品質評価ページは「『AA』は大粒であることを示す等級名であり、上位の味を保証する記号ではない」と書いている。スプレモも同じ構造である——大粒であることは確かだが、それは味の評価ではない。逆に、品評会で高得点を取ったロットが、等級表記の上では平凡な区分に入ることもありうる。
大きさが取引で意味を持つ理由は、別にある。 スクリーンで揃えることは焙煎の均一性に関わる——大きさがばらばらだと火の通りに差が出る。当サイトの焙煎のページで扱っている論点である。「大粒だからおいしい」ではなく「揃っているほうが扱いやすい」という説明のほうが、資料と整合する。
コロンビアには、別の評価軸も蓄積されている。 コロンビアの産地ページのとおり、FNCと1938年設立のCenicafé(国家コーヒー研究センター)が長い品種改良の歴史を持ち、さび病耐性品種の比率は2024年時点で87%(2010年は35%)に達している(→さび病)。「スプレモ」という一語では、こうした中身は何も伝わらない。
04
もう一つの「輸出規格」銘柄:クリスタルマウンテン
SOURCE: 公正競争規約施行規則 別表2Primary source quote
4) クリスタルマウンテン : キューバにて生産された同国輸出規格に基づくアラビカコーヒー豆をいう。
キューバ側の輸出規格は、当サイトではまだ確認できていない。 当サイトにキューバの産地ページはなく、格付けページのICO報告一覧にもキューバの項目はない。したがって「クリスタルマウンテン」がキューバのどの等級に対応するのかを、当サイトは一次資料で示せない。分からないことは分からないと書くのが当サイトの方針なので、ここで止める(→05)。
2つ並べると、別表2の構造がよく見える。 「地区」で定義された銘柄は、その地区の外で穫れたものを排除する。「輸出規格」で定義された銘柄は、その国の規格の枠内かどうかで決まる——場所ではなく、豆の状態で線を引いているということになる。同じ表の中に、性質の違う2種類の線引きが混ざっている。
05
今後追加すべき項目
- Resolution No.5/2002 の原文 — FNC公式サイトの
federaciondecafeteros.org/static/files/RESOL5-2002.pdfは2026年8月16日時点で404。当サイトはICOのICC 122-12(2018)経由の記載を使っている。原文が取得できれば、スクリーン区分以外の条件(欠点の分類、水分、香味に関する条項の有無)も確認したい。 - 「同国輸出規格に基づく」の解釈 — 01節のとおり、別表2の定義文はスプレモ等級を特定していない。全日本コーヒー公正取引協議会側に運用上の解説があるか要調査。モカのページで扱った「『モカ』単独の範囲が別表2にない」問題と同じ性質の論点である。
- キューバの産地ページと輸出規格 — 04節のとおり未着手。別表2に登場する国のうち、産地ページがないのはキューバとアメリカ(ハワイ)だけになった(イエメン・ジャマイカは2026年8月16日に公開)。
- 「Café de Colombia」原産地呼称 — コロンビアには「Café de Colombia」という原産地呼称(DO)・EUの地理的表示があるとされるが、その規約原文は今回確認していない。別表2の銘柄名との関係も未確認。
- グアテマラアンテイグアの個別ページ — 別表2で「地区」定義の銘柄のうち、まだ個別ページのないもの。グアテマラには政府による公式格付け制度がない(格付けページ)ため、ANACAFEの地域区分が根拠になるかを要調査。
- 全日本コーヒー公正取引協議会「レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約 及び 同施行規則」(平成30年5月21日 公正取引委員会・消費者庁認定、告示第6号)— 別表2「産地、品種、銘柄の区分及び範囲の例示」4)クリスタルマウンテン・6)コロンビアスプレモ。原文PDF(ajcft.org)を2026年8月16日に取得して全14銘柄の定義文を確認
- International Coffee Organization「National Quality Standards」ICC 122-12(2018年8月、第122回国際コーヒー理事会資料)— コロンビアの等級区分(Premium/Supremo/Extra/Excelso/Caracol)、Comité Nacional de Cafeteros Resolution No.5/2002 の内容、欠点数・水分の条件。当サイトの格付けページで確認したもの
- 03節の品質評価の体系の整理は、当サイトの品質評価ページおよび格付けページからの引用。個別の出典は各ページ末尾に記載