01
基本情報
SOURCE: WCR VARIETY CATALOG
- 育成機関
- Instituto del Café de Costa Rica(ICAFE/コスタリカコーヒー研究所)
- 選抜方式
- 血統選抜Pedigree selection(優れた個体を世代ごとに選び続ける方式)
- リリース
- ICAFEから正式にリリースされたことはないとWCRが明記
- 遺伝的系統区分
- 導入系・カティモール関連Introgressed (Catimor related)
- WCRによる要約
- 「高収量でもっとも低い標高帯に適応する。高い施肥を必要とする。品種は均一ではない」
「均一ではない」集団である。 WCRは補足欄で「
T5175は均質ではなく、植物は世代から世代へ安定しない」と明記している。同じことは
T5296(サルチモール群の母体)にも書かれており、
群の母体にあたる集団は、そのままでは農家向けの品種にならないという共通の性格が見える。ホンジュラスでの追加選抜が必要だった理由もここにある。
02
詳細スペック
SOURCE: WCR CATALOG, 2026-08-12 取得
評価の目安:
▲ 良好
● 標準
▼ 要注意
— WCRカタログ自身の区分(Low/Medium/High/Exceptional等)をそのまま可視化したもの
- 樹形
- 矮性・コンパクトDwarf/Compact
- 新芽の葉色
- 濃いブロンズDark Bronze
- 豆のサイズ
- 平均的Average●
- 収穫量ポテンシャル
- 高いHigh▲
- 高標高での品質
- 非常に低いVery Low▼
- 最適標高帯
- 低〜中Low, Medium(北緯5°〜南緯5°:1,000〜1,600m/5〜15°:700〜1,300m/15°超:400〜1,000m)
- さび病(CLR)耐性
- 中程度の耐性Intermediate resistance●
- 線虫耐性
- 感受性ありSusceptible▼
- コーヒーベリー病(CBD)耐性
- 感受性ありSusceptible▼
- 初収穫までの年数
- 2年目▲
- 必要な栄養レベル
- 非常に高いVery High▼
- 果実の成熟時期
- 平均的Average●
- 生豆歩留まり
- 低いLow▼
- 推奨植栽密度
- 4,000〜5,000本/ha(単幹剪定の場合)
オホ・デ・ガジョ(Ojo de Gallo)に非常に感受性が高いとWCRが明記している。カティモール群に共通して指摘される病害で、
T8667・
コスタリカ95・
レンピラ・
IHCAFE 90のいずれにも同様の記載がある。当サイトにこの病害の解説ページはまだない。
03
耐病性は永久ではない——カティモール群とさび病
SOURCE: WCR VARIETY CATALOG(各エントリの補足欄)
WCRはカタログのさび病耐性の項目に、あらかじめ次の注意書きを置いている。「植物の病気は絶えず進化している。今日ある病気に耐性を持つ品種が、明日も耐性を持つとは限らない」。カティモール群は、この注意書きが実際に現実になった群である。
カティモール群のさび病耐性評価と、WCRが補足欄に記した「感受性が確認された」旨の記載。WCR Variety Catalog(2026年8月12日取得)より。
| 品種 | WCRのさび病耐性評価 | 補足欄の記載 |
| T8667(群の母体) | 中程度の耐性 | — |
| T5175 | 中程度の耐性 | — |
| コスタリカ95 | 低い/感受性 | コスタリカでさび病感受性が科学的評価により確認された。中米の他地域でも感受性の可能性 |
| レンピラ | 中程度の耐性 | ホンジュラスでさび病感受性が科学的評価により確認された。中米の他地域でも感受性の可能性 |
| IHCAFE 90 | 低い/感受性 | ホンジュラスでさび病感受性が科学的評価により確認された。中米の他地域でも感受性の可能性 |
| カティシック | 中程度の耐性 | —(オホ・デ・ガジョ感受性の記載のみ) |
さび病に勝つために作られた品種が、数十年後にはそのさび病に負けている。 ティモール・ハイブリッド由来の耐性が破られうることは、WCRがマルセジェサやパライネマの補足欄で繰り返す注意——「どのレース(系統)のさび病が存在する環境かによって現地での性能は変わりうる」——とも一致する。「耐病性品種」というラベルは、その時点・その地域での評価にすぎない。
この論点は当サイトの他ページにもつながっている。 コロンビアの
カスティージョが
複数系統を混ぜた複合品種として設計されているのも、単一の系統に頼ると突破されやすいという同じ問題への対処である。
T8667のページで扱った集団選抜・血統選抜の違いも、この文脈で読むと意味が変わってくる。
04
今後追加すべき項目
- IHCAFE 90・レンピラとの正確な系譜 — 本ページの出典はT5175からの選抜と記すが、T8667のエントリはレンピラをT-8667由来と記しており、WCRカタログ内で一致していない。
- ICAFEがリリースしなかった理由 — 「正式にリリースされていない」とのみ記載。均一性の問題によるのかは不明。
- ヴィソーザ連邦大学による初期選抜の内容 — F3で中米に渡るまでの選抜基準・世代数は不明。
- オホ・デ・ガジョの解説ページ — 当サイト未着手。
- World Coffee Research, Variety Catalog「T5175」(varieties.worldcoffeeresearch.org/varieties/t5175、2026年8月12日取得)
- World Coffee Research, Variety Catalog「T8667」「T5175」「Costa Rica 95」「Lempira」「IHCAFE 90」(同日取得、03章の一覧表)