HACHIMARU COFFEE ROASTERY
焙煎 / Grinding

挽き方と粒度Grind

焙煎した豆は、そのままでは飲めない。挽いて粉にする——この工程をグラインド(粉砕)という。そして「粗挽き」「中挽き」といった言葉には、日本では公的な定義がある。しかもその基準は砂糖である。粗挽きはザラメ糖、極細挽きは上白糖——器具を持っていない人でも判断できるように書かれているのが面白いところである。

段階の数
5段階
基準にしているもの
砂糖の粒
定めているもの
公正競争規約 別表1
表示義務
粉製品のみ(豆は不要)
01

挽き目の5段階は、砂糖で定義されている

SOURCE: 公正競争規約 別表1 / AJCA

日本には挽き方の公的な定義がある。公正取引委員会・消費者庁の認定を受けた公正競争規約の「別表1」である。そして全日本コーヒー協会(AJCA)も、独立に5段階の説明を公開している以下は両方を並べたものである。

粗(荒)挽きCOARSE
▸ ザラメ糖くらい

規約 別表1:「挽いた粉粒はザラメ状又はそれ以上の粗さ」/英語表記はドリップグラインド、コースグラインド
AJCA:「粒の大きさは『ザラメ糖』くらい。器具:パーコレーターなど」

中挽きMEDIUM
▸ グラニュー糖とザラメの中間

規約 別表1:「グラニュー糖程度の粗さ」/英語表記はミディアムグラインド、レギュラーファイングラインド
AJCA:「粒の大きさは『グラニュー糖とザラメ糖の中間』くらい。器具:サイフォン、布ドリップ(ネルドリップ)など」

中細挽きMEDIUM FINE
▸ グラニュー糖くらい

規約 別表1:「中挽き、細挽きの中間の粗さ」/英語表記はミディアムファイングラインド
AJCA:「粒の大きさは『グラニュー糖』くらい。器具:ペーパードリップ、家庭用のコーヒーメーカーなど」

細挽きFINE
▸ 上白糖とグラニュー糖の中間

規約 別表1:「グラニュー糖と白砂糖の中間の粗さ」/英語表記はファイングラインド
AJCA:「粒の大きさは『上白糖とグラニュー糖の中間』くらい。器具:ウォータードリップ(水出しコーヒー)など」

極細挽きEXTRA FINE
▸ 上白糖くらい

規約 別表1:「細挽き以下の粗さ」/英語表記はエキストラファイングラインド
AJCA:「粒の大きさは『上白糖』くらい。器具:エスプレッソマシン、イブリック(ターキッシュ)コーヒー用)など」

※ 左の点は粒の細かさの方向を示す図解であり、実寸ではない(当サイト作成)。

⭐ 「砂糖で説明する」という発想。 挽き目は、本来ならふるいの目の大きさ(メッシュ)粒径分布で定義するのが厳密である。ところがこの規約は、あえて台所にあるもので説明している。——買う人が判断できることを優先した書き方だと読める。この読み方は当サイトによる整理である。
⚠️ 規約とAJCAで、表現が少しずれている。 中挽きを、規約は「グラニュー糖程度」、AJCAは「グラニュー糖とザラメ糖の中間」としている。中細挽きは、規約が「中挽きと細挽きの中間」、AJCAが「グラニュー糖」である。つまりAJCAのほうが、全体に1段階ぶん粗いほうへずれている。当サイトの方針どおり、どちらが正しいかを判断せず、両方を示す。
⚠️ 「白砂糖」と「上白糖」。 規約の別表1は細挽きを「グラニュー糖と白砂糖の中間」と書き、AJCAは「上白糖とグラニュー糖の中間」と書いている。「白砂糖」と「上白糖」が同じものを指しているのかどうかは、両資料とも明示していない。当サイトはこれを未確認として扱う(→05)。
02

挽くときの5つのポイント

SOURCE: 全日本コーヒー協会(AJCA)

AJCAは、挽き方のポイントを5つ挙げている。以下はその見出しと理由を、原文どおりに示したものである。

POINT 1

淹れる直前に、必要な分量だけを挽く

「豆は粉状になると表面積が増えるため、湿気を吸いやすく酸化が進んで劣化します」
POINT 2

摩擦熱を最小限に抑える

「コーヒーを挽く際に発熱すると、コーヒーが変色し、抽出後の香りが減少します」
POINT 3

粒の大きさを均一にする

「挽きムラがあると、コーヒー粉に湯が平均的に入り込まず、抽出濃度にムラが出ます」
POINT 4

抽出器具に合った粒度にする

「器具によってろ過方法が異なるため、最適な粒度で挽きます」
POINT 5

微粉末を最小限にする

「微粉末によって、過剰抽出の原因になりがちです」
⭐ 規約の別表1にも、同じ趣旨の一文がある。 別表1の表の前には「挽き方で最も注意しなければならないことは、一定の粒度分布を守ること、熱の発生を極力抑えることが重要とされている」と書かれている。AJCAのポイント2(摩擦熱)とポイント3(均一さ)が、そのまま規約にも書かれている——2つの独立した資料が、同じ2点を最重要としている。
ポイント1は、香りの話でもある。 AJCAは同じページで「焙煎されたてのコーヒーが香気成分が最も多く、次第に劣化していきます」とも書いている。豆のままなら守られていた香りが、挽いた瞬間から逃げ始める。香りの成分 05保存方法のページ
グラインドは、なぜ重要な工程なのか。 AJCAは「コーヒーを淹れた時の香りや風味をより楽しむためにとても重要なプロセスです」と位置づけている。挽くという行為は、豆の中に閉じ込められていた成分を、湯が届く場所に出す作業である。抽出のページ
03

器具との対応は、資料によって食い違う

SOURCE: AJCA(2種類の資料)/ 規約 別表1

ここは当サイトが繰り返し確認してきた論点である。「この器具にはこの挽き目」という対応づけは、資料によって一致していない

器具AJCA「焙煎・配合・粉砕」
(このページ 01)
AJCA 器具別ページ・対応表
ペーパードリップ中細挽き中細挽き〜中挽き(→ペーパードリップ
ネルドリップ中挽き手順ページは「細挽き〜中細挽き」、対応表は「中挽き・粗挽き」——同じAJCAの中で食い違う(→ネルドリップ
サイフォン中挽き手順ページは「中細挽き」、対応表では粗挽きの行——こちらも食い違う(→サイフォン
エスプレッソ極細挽き極細挽き(→エスプレッソ
水出し(ウォータードリップ)細挽き—(→アイスコーヒーと水出し
パーコレーター粗挽き
⚠️ 規約の英語表記も、これと合わない。 別表1は粗挽きの英語名を「ドリップグラインド」としている。ところがAJCAはペーパードリップに中細挽き〜中挽きを挙げている「ドリップ用=粗挽き」と読める規約の表記と、AJCAの実務的な説明が一致していない。
⚠️ 対応表の「細挽き」の行には、どの器具にも印がない。 AJCAの器具×挽き方の対応表を当サイトが読んだところ、細挽きの行だけ、対応する器具の印が付いていなかったただし同じAJCAの「焙煎・配合・粉砕」のページは、細挽きの器具としてウォータードリップを挙げている。
⭐ 当サイトの方針。 こうした食い違いについて、当サイトはどちらが正しいかを判断せず、両方を示す一次資料が一致していないという事実そのものが、読者にとって重要な情報だと考えるためである。「正解が一つある」と思って探すと、かえって混乱する領域である。
04

挽き目は「表示しなければならない」

SOURCE: 公正競争規約 第3条

挽き方は、袋に書かなければならない10項目のひとつである。ただし条件がある。

商品挽き方の表示
粉の製品必要。別表1の基準に基づき「粗(荒)挽き」「細挽き」等と表示する
豆のままの製品不要
インスタントコーヒー不要
⭐ 「挽き方が公的に定義されているのに、焙煎度は定義されていない」。 同じ規約の同じ10項目に、焙煎度は含まれていない挽き目には別表1という数値ならぬ「基準」があるのに、焙煎度にはそれがない——日本の表示ルールは、挽き方のほうを厳しく扱っている。焙煎度合いの8段階 03
粉と豆は外見で見分けにくい。 AJCAは、名称の書き分けについて挽いてあるかどうかは外見で判別できないことがあるため、粉なら「レギュラーコーヒー(粉)」と書き分けると解説している。→パッケージの表示ルール 01
缶コーヒーの規約には、挽き方の規定がない。 缶コーヒーの表示ルールで扱っている規約は、すでに液体になったものを対象にしているため、挽き方の表示を求めていないそのかわり、原料を「生豆換算」で数える仕組みがある。
05

今後追加すべき項目

  1. 全日本コーヒー協会(AJCA)「焙煎・配合・粉砕」(coffee.ajca.or.jp/column/4472/、2026年8月21日取得)— 粒度5段階と砂糖のたとえ、器具の対応、挽き方の5つのポイントとその理由、グラインドの位置づけ、焙煎したてが香気成分が最も多いこと
  2. 全日本コーヒー公正取引協議会「レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約 及び 同施行規則」(平成30年5月21日認定)— 別表1(挽き方の基準)の5段階の定義と英語表記、表の前の「一定の粒度分布を守ること、熱の発生を極力抑えること」、規約第3条(7)の挽き方の表示義務。当サイトパッケージの表示ルールで原文を確認済み
  3. 全日本コーヒー協会(AJCA)「おいしいコーヒーの基本原則」(coffee.ajca.or.jp/column/4452/)および各器具の解説ページ — 03の器具×挽き方の対応表と手順ページ。当サイトいろいろな抽出器具ほかで扱っている
  4. 01の粒を表す点の図、および2資料のずれの指摘(0103)は、当サイトが原文を突き合わせて作成したものである。いずれの資料も、他方との食い違いに言及してはいない。