コーヒー豆の
よくある質問
豆を買うとき、保存するとき、淹れるときに、よく聞かれる質問をまとめた。答えはこの辞典のほかのページに書いてあることだけを短くしたもので、それぞれの答えの下に、根拠と詳しい説明がある節へのリンクを付けている。一次資料で確かめられていないことは、「分からない」とそのまま書いた。
買うとき
豆と粉、どちらで買えばいいですか?
長く置くなら豆のほうが傷みにくい。全日本コーヒー協会は、豆は粉にすると表面積が増えて、湿気を吸いやすく酸化が進むと説明し、淹れる直前に必要な分だけ挽くことを勧めている。スペシャルティコーヒー協会(SCA)は、豆のままなら数週間かけて抜けるガスが、挽くと数分で抜けるとしている。ただし粉で買ってはいけないという話ではなく、ミルが無ければ粉で買って早めに飲みきればよい。
→ コーヒー豆の保存方法 03 / 04
浅煎りと深煎りは、何が違いますか?
「モカ」「キリマンジャロ」は、品質の等級ですか?
いいえ。どこで採れたかを表す呼び名(銘柄名)で、品質の順位ではない。日本の表示ルール(公正競争規約)は、こうした呼び名の範囲の例を示しており、客観的な根拠なしに「最高級」などと書くことを禁じている。おいしいかどうかは、銘柄名ではなく、その豆を実際に評価した結果で決まる。
→ コーヒーの銘柄名とは 01 / 02
ブレンドは、なぜ混ぜるのですか?
全日本コーヒー協会は目的を4つ挙げている。好みの風味を出す、新しい風味をつくる、品質を安定させる、価格を安定させる。コーヒーは農産物なので年ごとに味が変わり、同じ味を出し続けるために配合を調整する、という役割が大きい。また表示ルールでは、産地名を付けたブレンドは、その産地の豆が30%以上入っていれば名乗れる。
スペシャルティコーヒーとは何ですか?
産地や銘柄の名前ではなく、品質の評価にかかわる言葉である。SCAは「際立った属性によって認識され、その属性ゆえに市場で大きな付加価値を持つ、コーヒーまたはコーヒー体験」と定義し、その属性には風味のようにカップの中にあるものと、産地や生産者のようにカップの外にある情報の両方があるとしている。日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)も独自の定義を公開している。
アラビカとカネフォラ(いわゆるロブスタ)は、何が違いますか?
植物としての種が違う。アラビカ種(Coffea arabica)とカネフォラ種(Coffea canephora)である。よく聞く「ロブスタ」は種の名前ではなく、カネフォラ種の中の栽培グループの名前で、同じカネフォラ種には「コニロン」というグループもある。生豆のカフェインは、ロブスタがアラビカの約2倍という文献レビューがある。脂質はアラビカのほうが多い(約15%と約10%)。
→ コーヒーの「種」とは 01 / カフェイン量 02 / 脂質 01
袋にある「ウォッシュド」「ナチュラル」とは?
「有機(オーガニック)」のコーヒーとは?
日本では、有機JASマークが付いたものだけが「有機」「オーガニック」と表示できる。マークが無いのにそう書くことは法律で禁止されていて、英語で「Organic」とだけ書いた輸入品も同じ扱いになる。コーヒーの木の場合、最初の収穫の3年以上前から、化学的に合成された肥料や農薬を避ける基準どおりに育てていることが求められる。
→ 有機とフェアトレード 01 / 02
フェアトレードのコーヒーとは?
国の制度ではなく、国際的な認証団体(Fairtrade International)が決めた取引の条件を満たしたコーヒーである。生産者の組合に、1ポンドあたり1.80ドル(2026年12月からは2.00ドル)の最低価格を保証し、さらに0.20ドルのプレミアムを上乗せする。プレミアムの使い道は、生産者の組合が自分たちで決める。有機JASもフェアトレードも、味を評価するしくみではない。
→ 有機とフェアトレード 05 / 06
「ゲイシャ」とは何ですか?
アラビカ種の品種の名前である。1930年代にエチオピアで集められた在来種で、コスタリカを経て1960年代にパナマへ入った。2005年にパナマの品評会で記録的な値が付いたことから、広く知られるようになった。
→ ゲイシャ
保存するとき
どこに置いておけばいいですか?
直射日光と高温多湿を避ける。袋に書いてあるこの一文は、表示ルールで決められた文言である。開けたあとは、全日本コーヒー協会の言うとおりきっちり閉めて冷暗所に置く。開けると香りが逃げ、湿気を吸い、酸化が進むためである。
→ コーヒー豆の保存方法 01 / 02
開けたら、どれくらいで飲みきればいいですか?
何日と決めた公的な目安は無い。袋に書かれる言葉は「できるだけ早めに」である。SCAの解説によると、豆からガス(香りの運び手)が抜けるのは焙煎後およそ20日のあいだが速く、その後はゆっくりになる。ガスが抜けると、そこから酸化が始まる。
冷蔵庫や冷凍庫に入れてもいいですか?
一次資料では確かめられていない。表示ルールや全日本コーヒー協会が言う「冷暗所」は、暗くて温度が上がりにくい場所のことで、冷蔵庫を指してはいない。SCAは生豆について「深く冷凍すると老化がほぼ止まる」と書いているが、これは焙煎前の豆の話で、焙煎した豆にそのまま当てはめることはできない。「冷蔵庫は結露するからだめ」という説明にも、裏づけは見つかっていない。
賞味期限を過ぎたら、飲めませんか?
賞味期限は、開ける前に、決められた方法で保存した場合に品質が保たれる期限である。表示ルール自身が「期限を過ぎても品質が保たれていることがある」と書いており、安全の期限(消費期限)ではなく、おいしさの目安である。開けたあとは、この期限とは別に考える。
焙煎したてがいちばんおいしいのですか?
全日本コーヒー協会は「焙煎されたてのコーヒーが香気成分が最も多く、次第に劣化していきます」と書いている。一方で、焙煎したての豆は中に閉じ込められたガスを出し続けていて、焙煎の深さによって残っているガスの量も違う。
淹れるとき
粉は何グラム使えばいいですか?
ペーパードリップなら、全日本コーヒー協会の手順は粉12gに湯160mL(できあがり1杯140mL)である。SCAの家庭用コーヒーメーカーの規格は、水1リットルに粉55gを標準の比率としている。ふたつは比率がはっきり違うので、好みで調整すればよい。
→ ペーパードリップ 02 / 抽出 02
お湯は何℃がいいですか?
全日本コーヒー協会のペーパードリップの手順は95℃前後。SCAの家庭用コーヒーメーカーの規格は90〜96℃を求めている。87℃・90℃・93℃で淹れ比べた研究では、濃さと抽出の度合いをそろえれば、31項目中30項目で味の差が出なかった。温度が変えるのは、主に抽出の速さである。
→ 抽出 08 / ペーパードリップ 02
挽き方は、どう選べばいいですか?
日本の表示ルールは挽き方を5段階に分け、砂糖の粒の大きさで説明している。全日本コーヒー協会の説明では、ペーパードリップや家庭用コーヒーメーカーは中細挽き(グラニュー糖くらい)、サイフォンやネルは中挽き、エスプレッソは極細挽き(上白糖くらい)である。
水道水で淹れてもいいですか?
スペシャルティコーヒー協会(SCA)は、試験やカッピングに使う水をカルシウム硬度50〜175ppm、塩素を含まないものと定めている。日本の水道水は硬度300mg/L以下(おいしさの目標値は10〜100mg/L)で、衛生のために蛇口で塩素が残るよう消毒することが法律で決まっている。いちばん違うのは塩素だが、家庭で塩素をどう扱えば味がどう変わるかを示した一次資料は、この辞典ではまだ確認していない。
コーヒーミルは、何を見て選べばいいですか?
全日本コーヒー協会は、挽くときのポイントとして摩擦熱を抑える、粒の大きさをそろえる、微粉を少なくするなどを挙げている。日本の表示ルールも「一定の粒度分布を守ること、熱の発生を極力抑えること」が重要だとしている。ミルを選ぶときは、この点を満たせるかを見ればよい。刃で砕く式と臼で挽く式などを直接比べた一次資料は、この辞典ではまだ確認していない。
ドリップバッグの中身は、ふつうのコーヒー粉と同じですか?
全日本コーヒー公正取引協議会は、ドリップバッグを「レギュラーコーヒーを1杯取タイプにしたもので、レギュラーコーヒーである」と答えている。挽いた粉を1杯分ずつ袋に入れたもの、ということになる。淹れ方の目安を示した一次資料は、この辞典ではまだ確認していないので、袋に書かれた淹れ方に従うのがよい。
お湯を注いでも粉がふくらまないのは、なぜですか?
蒸らしで粉がふくらむのは、焙煎した豆に閉じ込められていた炭酸ガスが出るからである。SCAは、新しいコーヒーほどペーパードリップで強くふくらむとしている。ガスは時間とともに抜け、挽くと特に早く抜けるので、焙煎から日がたった豆や、挽いてから時間がたった粉はふくらみにくい。
アイスコーヒーと水出しは、同じものですか?
作り方が違う。アイスコーヒー(急冷式)は熱いお湯で淹れて氷で冷やすもの、水出しは冷たい水に何時間も漬けて出すものである。ただし日本では、水出しで作ったものも店では「アイスコーヒー」として出されることが多い。
水出しは、酸味やカフェインが少ないのですか?
研究の結果は、よく言われることと一部違う。pHは水出しと熱湯で同じくらいだったが、酸の総量は熱湯のほうが多かった。カフェインは、同じ豆・同じ比率で比べると、粗挽きの水出しのほうが多かったという研究がある。
→ アイスコーヒーと水出し 06 / 07
味とカフェイン
コーヒーが苦いのは、カフェインのせいですか?
深煎りのほうがカフェインは多いですか?
カフェインは、焙煎の熱に対して比較的こわれにくい成分である。クロロゲン酸やトリゴネリンのように焙煎で大きく減ることはない。カフェインの量の差は、焙煎よりも、アラビカ種かカネフォラ種(いわゆるロブスタ)かという種の違いのほうが大きい。
エスプレッソは、カフェインが多いですか?
公的な数値が無いので、この辞典では答えられない。日本食品標準成分表に「エスプレッソ」の項目が無いためである。ドリップのコーヒー(粉10g・熱湯150mL)は100mLあたり60mgなので、1杯150mLで約90mgになる。エスプレッソは濃いが、1杯の量は約30mLと少ない。
カフェインレスは、カフェインがゼロですか?
ゼロではない。日本の表示ルールでは、カフェインを90%以上取り除いたものを「カフェインレス」と表示できる。全日本コーヒー協会は、ふつうのコーヒーが100mLあたり約60mgなのに対し、デカフェは6mg未満と説明している。カフェインは、焙煎する前の生豆の段階で取り除く。
→ カフェインレスコーヒー 01 / 02
コーヒーは体にいいですか? 1日に何杯までですか?
この辞典は、健康についての助言をしていない。カフェインのとり方の目安などは、内閣府の食品安全委員会や農林水産省の資料を直接見てほしい。
そのほか
インスタントコーヒーは、ふつうのコーヒーと何が違いますか?
表示ルールは、インスタントコーヒーを煎った豆から得た抽出液を乾燥させた、水に溶ける粉や顆粒と定義している。コーヒーを淹れてから水分を飛ばしたもの、と考えればよい。お湯を注げば元に戻る。
コーヒーかすを畑や植木鉢にまいてもいいですか?
そのまままくと、作物は育たなくなることが複数の研究で報告されている。全日本コーヒー協会も「そのままの状態でまかずに発酵させてください」と書いている。堆肥にすると、生育をじゃましていた物質が大きく減ることも測られている。
→ コーヒーかすの再利用 03 / 05
今後追加すべき項目
- ドリップバッグの淹れ方 — 淹れ方の目安を示した一次資料が見つかっていない(表示のルールは表示ルールのページにある)。
- コーヒーミルの方式ごとの違い — 刃で砕く式・臼で挽く式などを比べた一次資料が見つかっていない。
- 焙煎した豆の冷凍保存 — 一次資料が見つかりしだい、答えを書き換える。
- このページは、この辞典のほかのページの内容を短くまとめたものである。それぞれの答えの根拠は、リンク先のページの出典欄に載せている。このページだけに書かれている事実は無い。